組合の者人足追々被参、同十九日より御場所小屋懸始る。
是は小屋掛は善七(註、車善七)鑓付の者致ス。組合当番
小頭手伝致ス。杉丸太五十本の義は廻りめ郷山ニて御役元
ニて貰ひ伐る。本は唐松ニて致す。御罪場入用の品々、莚は
大谷沢ニて買取る。尤組合人足ニテ引取る。篝火の木は
槙ニて稲田良作様ニて才蔵買取るる。山刀の儀は同稲田嘉兵
衛様より買とる。鋸は天狗平伝次郎様よりかひとる。右の
品は才蔵方ニて買求める。尤小頭下知ニていたす。
是は小屋人足ニて御罪場へ参り、材木、鋤、鍬、銃把(註、熊手)
竹九拾本、是は三ノ倉ニて出来いたす。十九日組合人足ニて参る。
十九日晩御地方より四ッ時御役元様より浅草出役様へ、酒剣菱五升、
雉子二羽、同善七出役の方へも剣菱五升、雉子二羽くださる。
刑場工事の経過を説明しているのがこのくだりであるが、
諸材料を近くで集めたことが詳しく記されている。十二月十九日
より小屋掛けが始まり、唐松の丸太、ムシロ、カガリ火の槇(まき)、
山刀、鋸、竹というように品々を集めてつくった。刑場のことに
当る弥左衛門と車善七の処刑役へは、十九日の夜に名酒剣菱五升と、
キジニ羽、が村役人から贈られた。
続く