投稿者:ゆうこ
ユミコさんは、息子の幼稚園で知り合ったママ友だち。
鷲尾いさ子似の、スラリとした美人である。美人とくればお高くとまってそうだが、ユミコさんはそんなところがひとつもない。気さくで愉快なお人柄だ。
初めて我が家を訪れたときのことである。
部屋をぐるりと見渡して、彼女は言った。「スッキリしてるね。なにかコツがあるの?」。うちはモノが極端に少ないから、片づいて見える。「“3の法則”というのがありまして、3年着なかった服は処分。3年使わなかった食器、3週間読まなかった本や雑誌も、スパッと捨てる。『オレも3年経てばサヨウナラか!』ってダンナは焦ってるけどね」。
アハハと笑って聞いていたユミコさんだが、翌週お宅に遊びに行って驚いた。玄関先に、サンタさんが担ぐような大きな袋がいくつも並んでいる。
「それ、ぜんぶ不用品。うちにも、捨てられるものがいっぱいあった。おかげでずいぶんスッキリしたよ。ありがとう」。なんと素直なお人。フットワークの軽さも素晴らしい。
次に訪れたときは、奥の和室に積まれていた洗濯物が消え、真新しいハンガーラックに家族全員分のシャツやブラウスが、お行儀よく吊るされていた。「西松屋はね、服をたたんで並べるのやめて、ぜんぶハンガー吊りにしたら、莫大な人件費が浮いたんだって」。
3人の子を抱えるユミコさんちは、洗濯物の量もハンパない。
テレビ番組をヒントに、家事の省力化と“お部屋スッキリ作戦”の両方を手に入れた彼女は、またしてもアッパレだ。
こうやってこの人は、見聞きしたことをどんどん栄養にしていく。
あるとき私が、子どもを叱りすぎて、「本当にいけない事も深刻に受け止めてくれなくなってしまった」とボヤいたら、「私はユキさんの叱り方を参考にしたよ」と教えてくれた。「キレたときこそ、『○○しなさい!』じゃなくて、『○○してください』と丁寧語を使うの。一応敬意を払われたと感じるのか、子どもは素直にハイっていうよ。試してみて」。
マイケルの『This is it』を観たというので、「どうだった?」と尋ねたときは、「よかったよ~❤」とウットリしながら、一方で、高校の英語教諭を育休中の彼女は、「それにね、生徒をやる気にさせるひと言を学んだ。マイケルの言動には一貫して“愛”があるからグッとくるんだよね!」と興奮していた。
やっぱりタダでは済まさない。
職場復帰したら、さっそく“愛あるゲキ”を生徒たちに飛ばすのだろう。
20代や30代のころ私は、常に憧れの女性像を自分の中でもっていた。
あるときは職場の先輩だったり、あるときはトレンディドラマの深津絵里だったりもして、幼稚な発想と笑われるかもしれない。
しかし、おかげで「こうありたい」とか「こういうときはこうしよう」という、明確な行動指針が定まっていたし、それが、なんとなくでも「なりたい自分」を形づくっていたように思う。
ところが今、母はこうあるべき、妻としてはこうありたい、社会と関わっていたいし、仕事で稼いで自分の世界も持ちたい……と欲張っていくと、求める女性像が沸いてこない。
「こんなとき、あの人だったらこうするだろう」と発想を転換する代わりに、自分のイヤな部分に落ち込むばかりだ。
そこから脱却できるかできないかの差は、いったいなんだろう。
ユミコさんを見ていると、「しなやかさ」にそのカギがありそうな気がした。
虚心坦懐に物事を受け止め、とりあえずやってみる。今日やれることは今日すぐに。人はいつだって変われる、そんな勇気も沸いてくる。
ある日、5歳の娘さんを英語教室に通わせているお母さんが、ユミコさんに相談をもちかけた。
「私は英語が大の苦手。親がきちんと発音できないのだから、一切ノータッチで、先生に任せたほうがいいよね?」。
すると彼女は、こんなエピソードを披露してくれた。
ある晩「寝る時間だよ~。読みたい本、持っといで!」と声をかけたら、4歳の長男クンが、その日行った動物園のパンフレットを手に、布団に駆けてきたそうだ。
「あんまり嬉しそうに持ってくるから、読むとこないけどとりあえず開いてさ、『これはアライグマだねぇ』とか『Zooっていうのは動物園っていう意味の英語なんだよ』って適当にやりすごしてみた。そしたらこないだ “zoo”を指差しながら英語の絵本を出してきて、『これはなんて読むの?』って、動物の名前をどんどん聞いてくる。
“ママの膝で聞いた、あれ”っていう“いい思い出”が、結局子どもの興味を広げるのかもね」。彼女のお人柄あふれる話だが、私が感動したのは、ユミコさんのしなやかさだ。
子どもがパンフレット持ってきた時点で、私なら間違いなく「それは本じゃないでしょ。絵本もってきて」って追い返したはずだもの。
育児サークル「わはは」
投稿者:ゆうこ
ユミコさんは、息子の幼稚園で知り合ったママ友だち。
鷲尾いさ子似の、スラリとした美人である。美人とくればお高くとまってそうだが、ユミコさんはそんなところがひとつもない。気さくで愉快なお人柄だ。
初めて我が家を訪れたときのことである。
部屋をぐるりと見渡して、彼女は言った。「スッキリしてるね。なにかコツがあるの?」。うちはモノが極端に少ないから、片づいて見える。「“3の法則”というのがありまして、3年着なかった服は処分。3年使わなかった食器、3週間読まなかった本や雑誌も、スパッと捨てる。『オレも3年経てばサヨウナラか!』ってダンナは焦ってるけどね」。
アハハと笑って聞いていたユミコさんだが、翌週お宅に遊びに行って驚いた。玄関先に、サンタさんが担ぐような大きな袋がいくつも並んでいる。
「それ、ぜんぶ不用品。うちにも、捨てられるものがいっぱいあった。おかげでずいぶんスッキリしたよ。ありがとう」。なんと素直なお人。フットワークの軽さも素晴らしい。
次に訪れたときは、奥の和室に積まれていた洗濯物が消え、真新しいハンガーラックに家族全員分のシャツやブラウスが、お行儀よく吊るされていた。「西松屋はね、服をたたんで並べるのやめて、ぜんぶハンガー吊りにしたら、莫大な人件費が浮いたんだって」。
3人の子を抱えるユミコさんちは、洗濯物の量もハンパない。
テレビ番組をヒントに、家事の省力化と“お部屋スッキリ作戦”の両方を手に入れた彼女は、またしてもアッパレだ。
こうやってこの人は、見聞きしたことをどんどん栄養にしていく。
あるとき私が、子どもを叱りすぎて、「本当にいけない事も深刻に受け止めてくれなくなってしまった」とボヤいたら、「私はユキさんの叱り方を参考にしたよ」と教えてくれた。「キレたときこそ、『○○しなさい!』じゃなくて、『○○してください』と丁寧語を使うの。一応敬意を払われたと感じるのか、子どもは素直にハイっていうよ。試してみて」。
マイケルの『This is it』を観たというので、「どうだった?」と尋ねたときは、「よかったよ~❤」とウットリしながら、一方で、高校の英語教諭を育休中の彼女は、「それにね、生徒をやる気にさせるひと言を学んだ。マイケルの言動には一貫して“愛”があるからグッとくるんだよね!」と興奮していた。
やっぱりタダでは済まさない。
職場復帰したら、さっそく“愛あるゲキ”を生徒たちに飛ばすのだろう。
20代や30代のころ私は、常に憧れの女性像を自分の中でもっていた。
あるときは職場の先輩だったり、あるときはトレンディドラマの深津絵里だったりもして、幼稚な発想と笑われるかもしれない。
しかし、おかげで「こうありたい」とか「こういうときはこうしよう」という、明確な行動指針が定まっていたし、それが、なんとなくでも「なりたい自分」を形づくっていたように思う。
ところが今、母はこうあるべき、妻としてはこうありたい、社会と関わっていたいし、仕事で稼いで自分の世界も持ちたい……と欲張っていくと、求める女性像が沸いてこない。
「こんなとき、あの人だったらこうするだろう」と発想を転換する代わりに、自分のイヤな部分に落ち込むばかりだ。
そこから脱却できるかできないかの差は、いったいなんだろう。
ユミコさんを見ていると、「しなやかさ」にそのカギがありそうな気がした。
虚心坦懐に物事を受け止め、とりあえずやってみる。今日やれることは今日すぐに。人はいつだって変われる、そんな勇気も沸いてくる。
ある日、5歳の娘さんを英語教室に通わせているお母さんが、ユミコさんに相談をもちかけた。
「私は英語が大の苦手。親がきちんと発音できないのだから、一切ノータッチで、先生に任せたほうがいいよね?」。
すると彼女は、こんなエピソードを披露してくれた。
ある晩「寝る時間だよ~。読みたい本、持っといで!」と声をかけたら、4歳の長男クンが、その日行った動物園のパンフレットを手に、布団に駆けてきたそうだ。
「あんまり嬉しそうに持ってくるから、読むとこないけどとりあえず開いてさ、『これはアライグマだねぇ』とか『Zooっていうのは動物園っていう意味の英語なんだよ』って適当にやりすごしてみた。そしたらこないだ “zoo”を指差しながら英語の絵本を出してきて、『これはなんて読むの?』って、動物の名前をどんどん聞いてくる。
“ママの膝で聞いた、あれ”っていう“いい思い出”が、結局子どもの興味を広げるのかもね」。彼女のお人柄あふれる話だが、私が感動したのは、ユミコさんのしなやかさだ。
子どもがパンフレット持ってきた時点で、私なら間違いなく「それは本じゃないでしょ。絵本もってきて」って追い返したはずだもの。
育児サークル「わはは」
投稿者:ゆうこ