投稿者:ゆうこ
子どもが幼稚園でケンカしたと聞けば、心中穏やかではない。先日、息子がまぶたの上にいくつもの引っかき傷をつけて帰ってきた。
ぶつけたというより、明らかに誰かにやられた、という感じ。
「なにここ? どしたの?」。
はやる心臓を押さえて、さりげなく聞いてみた。
「引っかかれたの」
「誰に?」
「Kくん。あ、でも、気がつかないうちにちょっと引っかいちゃったって感じ」。
どの世の中に、「気づかないうちに」引っかく人間がいるというのか。どうしてそんなことになったのか問いただしたかったが、グッと我慢して言葉を飲み込んだ。
相手をかばう様子は「友だちを悪く言わないで」と訴えているふうでもあるし、これ以上の詮索はやめてという感じがありありである。
連絡ノートを確かめたが、担任からの報告は見当たらない。
どうやら親の出る幕ではなさそうだ。
年少の夏休みに引っ越して来て以来ずっと、息子は親友と呼べる友だちができずにいた。そのことについては、母親の私に責任がある。
私自身、初めての土地での友だちづくりには、相応の時間が必要だったのだ。
いきなり東京からやってきて、幼稚園ママたちの輪に入ろうといったって、共通の話題も見つからなければ、ありきたりの挨拶で終わってしまう。
だから、毎日帰りのバスを降りた途端、「今日ね、KくんたちはAちゃんちに集まるんだって」と息子が口にするたびに、ギュッと胸が締め付けられる思いがした。
これではいけないと、年長に上がった今年は思い切ってクラス役員を引き受けてみた。
よく名前が上がるお友だちのお母さんたちに、積極的に近寄って公園に誘ったりもし、運よく親交を深めることができた。
すると、それに伴い子どもたちの仲もぐっと近くなった。
今では習い事の日以外、誘い合って集まる仲間が数人いる。
Kくんはその中のひとりである。
息子が毎日どんなふうに友だちと遊んでいるのか、目の前でその光景を目にするのは、正直、久しぶりだった。
先日、我が家にいつもの仲間たちを招いた際のひと幕である。
「忍者ごっこ」と称し、10㎝四方の発泡スチロール製パズルを持ち出して、Kくんと手裏剣遊びを始めた。最初はよかったものの、そのうちにかなりの至近距離から、顔を目掛けてぶつけ合うようになった。よくみると、悔しさで二人のこめかみの血管は浮き出し、ケンカと紙一重の様相を呈している。
これはマズい。
シビレを切らして声をかけた。
「ねえ。物を投げて遊んだら危ないよ。ケンカになる前にやめたらどうかな?」
すると驚いたことに、Kくんと息子はキョトンとして手をとめ、逆に切り返してきた。
「こんなやわらかいものをぶつけたって、ケガなんかしないよねぇ」
「うん。それに、なんでこんなことでケンカになるの?」
6歳にもなれば、危なくないものを選んで遊んでいるわけだ。
ヒートアップしたあとの引き際も、お互い十分に心得ているらしい。
ついこの間まで、「貸してって言ってから借りようね」「わざとじゃないけどゴメンって言えるかな?」なんて手助けしてやっていたような気がしていたのに、これには恐れ入った。
それから数日後の週末。
夕飯の支度をしていると、庭で2歳の娘が大きな声を上げた。
「たいへんだよ~。クワガタがゼリー食べないでケンカしてるよ~!」
すぐそばで飼育箱の手入れをしていた夫が
「ケンカはダメだよねえ。仲よくしなさいって教えてあげて」
というと、すかさず息子が、口をはさんだ。
「そうとは限らないよ。『ケンカするほど仲がいい』って言葉、おとうさん知らないの?」。
夫もあっけにとられている。
いつの間にか、息子は手の中から一歩遠くに踏み出していった。
育児サークル「わはは」
投稿者:ゆうこ
子どもが幼稚園でケンカしたと聞けば、心中穏やかではない。先日、息子がまぶたの上にいくつもの引っかき傷をつけて帰ってきた。
ぶつけたというより、明らかに誰かにやられた、という感じ。
「なにここ? どしたの?」。
はやる心臓を押さえて、さりげなく聞いてみた。
「引っかかれたの」
「誰に?」
「Kくん。あ、でも、気がつかないうちにちょっと引っかいちゃったって感じ」。
どの世の中に、「気づかないうちに」引っかく人間がいるというのか。どうしてそんなことになったのか問いただしたかったが、グッと我慢して言葉を飲み込んだ。
相手をかばう様子は「友だちを悪く言わないで」と訴えているふうでもあるし、これ以上の詮索はやめてという感じがありありである。
連絡ノートを確かめたが、担任からの報告は見当たらない。
どうやら親の出る幕ではなさそうだ。
年少の夏休みに引っ越して来て以来ずっと、息子は親友と呼べる友だちができずにいた。そのことについては、母親の私に責任がある。
私自身、初めての土地での友だちづくりには、相応の時間が必要だったのだ。
いきなり東京からやってきて、幼稚園ママたちの輪に入ろうといったって、共通の話題も見つからなければ、ありきたりの挨拶で終わってしまう。
だから、毎日帰りのバスを降りた途端、「今日ね、KくんたちはAちゃんちに集まるんだって」と息子が口にするたびに、ギュッと胸が締め付けられる思いがした。
これではいけないと、年長に上がった今年は思い切ってクラス役員を引き受けてみた。
よく名前が上がるお友だちのお母さんたちに、積極的に近寄って公園に誘ったりもし、運よく親交を深めることができた。
すると、それに伴い子どもたちの仲もぐっと近くなった。
今では習い事の日以外、誘い合って集まる仲間が数人いる。
Kくんはその中のひとりである。
息子が毎日どんなふうに友だちと遊んでいるのか、目の前でその光景を目にするのは、正直、久しぶりだった。
先日、我が家にいつもの仲間たちを招いた際のひと幕である。
「忍者ごっこ」と称し、10㎝四方の発泡スチロール製パズルを持ち出して、Kくんと手裏剣遊びを始めた。最初はよかったものの、そのうちにかなりの至近距離から、顔を目掛けてぶつけ合うようになった。よくみると、悔しさで二人のこめかみの血管は浮き出し、ケンカと紙一重の様相を呈している。
これはマズい。
シビレを切らして声をかけた。
「ねえ。物を投げて遊んだら危ないよ。ケンカになる前にやめたらどうかな?」
すると驚いたことに、Kくんと息子はキョトンとして手をとめ、逆に切り返してきた。
「こんなやわらかいものをぶつけたって、ケガなんかしないよねぇ」
「うん。それに、なんでこんなことでケンカになるの?」
6歳にもなれば、危なくないものを選んで遊んでいるわけだ。
ヒートアップしたあとの引き際も、お互い十分に心得ているらしい。
ついこの間まで、「貸してって言ってから借りようね」「わざとじゃないけどゴメンって言えるかな?」なんて手助けしてやっていたような気がしていたのに、これには恐れ入った。
それから数日後の週末。
夕飯の支度をしていると、庭で2歳の娘が大きな声を上げた。
「たいへんだよ~。クワガタがゼリー食べないでケンカしてるよ~!」
すぐそばで飼育箱の手入れをしていた夫が
「ケンカはダメだよねえ。仲よくしなさいって教えてあげて」
というと、すかさず息子が、口をはさんだ。
「そうとは限らないよ。『ケンカするほど仲がいい』って言葉、おとうさん知らないの?」。
夫もあっけにとられている。
いつの間にか、息子は手の中から一歩遠くに踏み出していった。
育児サークル「わはは」
投稿者:ゆうこ