vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

S坂の情景

2004-12-14 23:39:40 | 
D坂,S坂と聞いてどこにあるか分かったあなたは相当の「坂道通(つう)」。
D坂は江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」(大正14年)で少しだけ有名かもしれないが,東京メトロ千駄木駅から西へそそり立つ団子坂。その昔,あまりの急坂のゆえに,お団子のようにコロコロ転げ落ちる人が後を絶たなかったとかいうのが由来との説がある。漱石の「三四郎」(明治42年)や二葉亭四迷の「浮雲」(明治20年~22年)にも登場する。
そして,S坂は,D坂よりも少し南側,根津神社(東京メトロ根津駅が最寄り駅)の南側にある坂。
こちらは,鴎外が「青年」(明治43年)の中で,「地図では知れないが,割合に幅の広い此坂はSの字をぞんざいに書いたように屈曲してついている。」と表現したことから,そのように呼称されるようになったと言われている。
標識がS字だともっと雰囲気が出るのだが…
私は,このS坂が好きで,谷根千(やねせん・谷中,根津,千駄木界隈の呼称)を訪れたときには,フラリと立ち寄ってしまう。
D坂ほど幅がなく,一方通行の生活道路。
急坂にもかかわらず果敢に下り坂にアタックするチャリダーの姿が決まって見られる。
そして,何と言っても,坂下から,坂の上の少し古ぼけた洋館風の板塀作りの家を臨むのが好きだった。

ところが,先週末に久々に訪れてみると,な,なんと,その洋館が忽然と消えてしまっていた
一番上の写真は,ショックから気をとり直して何とか撮った写真。
その洋館は,写真中央部に立っていたのだが,跡形もなくなり,その部分だけ,ポッカリと穴が空いたようになっており,青空が綺麗に眺められる。
もっと早く,写真に収めておけば…と思っても,後の祭り。
現場では,新しい家の基礎らしいものを作っていたので,是非,あちこちにあるプレハブ住宅ではなく,先代の跡を継ぐ相応しい瀟洒な建物が建って欲しいと心から祈った

ところで,最近,「タモリのTOKYO坂道美学入門」という本が出た。未読であるが,とっても気になる本。何だか,坂道を見ると心が揺れ動くんだよなぁ。これって変なのかな?

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4 コメント

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amazonのレビュー (nz00)
2004-12-16 22:28:46
TBありがとうございます。私のブログでもコメント書いてますが、こちらにもちょっと。



タモさんの本、私も未読ですので往来堂書店で立ち読みでも(買えってか?)。でamazonのレビューで「彼は名古屋人で…」書いてる方が何人かいるのでごらんになってみてください。



たぶん本の中で名古屋人になりきってるところがあるんでしょう。それを間に受けてしまったんでしょうね。タモさん最近のタモリ倶楽部でも原田芳雄と共に鉄道技師になりきってましたし。



坂と言えば港区も坂が多くて、ほぼ全ての坂に名前がついて立派な案内板があったりします。以前高輪(港区)の長屋に私は住んでましたんで、自然と港区の坂道通になってましたね。タモさんの本に港区の坂が載ってるか気になるところです。
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暗闇坂 (vagabond67@管理人)
2004-12-18 22:22:16
nz00さん いらっしゃいませ。

港区の坂,好きです。

もちろん網羅しているわけではありませんが,中でも,麻布十番へと下る「暗闇坂」が好きです。

名称といい,湾曲具合といい,側に建っているオーストリア大使館の風情といい,雰囲気は抜群ですね。

もっとも,人がすれ違うのさえ困難な歩道には,いささか困ったものですが

東京は丁度いい具合の坂道が揃っていて,楽しめますよね~

またnz00ブログの方へもお邪魔させて頂きます!
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S坂上の家 (sinngetu)
2005-01-07 21:10:22
はじめまして。

1年ほど前まで、S坂のすぐ近所に住んでいましたので、この景色が懐かしいです。

不忍通り近辺は谷底で、東へ出るにも西へ出るにも必ずどこかで坂を上らなければいけないため、自転車ではなかなか苦労しましたが、散歩は楽しかったですね。

S坂上の家は、冨田均『東京私生活』(作品社, 2000. ISBN:4878933550)という本の52ページに写真(モノクロ)が載っていて、むかし内田百が住んでいたことがあると書かれています。

私も昨年9月に東京へ行ったときに、この家が消えているのを発見して愕然としたものです。3月に引っ越すまでは毎日のように見ていましたので、消えたのはその間と思われます。
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住人 (vagabond67@管理人)
2005-01-11 00:49:14
sinngetuさま いらっしゃいませ。



一風変わった,それでいて趣味の良い建物だっただけに,どんな人が住んでいるのか,と想像を巡らしていましたが,百先生が住んでいたとは!文士にゆかりのある谷根千らしいエピソードですね。

百先生はあの家でどんな作品を生み出したのだろうか,他の住人はどんな人だったのだろうか等,妄想はますます膨らみます



「東京私生活」面白そうな本ですね。読んでみたくなりました。
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