vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

さよなら赤坂見附のサントリー美術館

2004-12-30 22:54:56 | 美術
本日まで開催していたありがとう赤坂見附 サントリー美術館名品展を訪れた。12月の後半,猛烈に忙しく展覧会に行く余裕がなかったが,TAKさんおけはざまさんの記事を見て奮起し,二日酔の体に鞭打って,滑り込みでの鑑賞。
抜群の足場で,所蔵品も充実していただけに,非常に寂しい。あと2年はこれら作品とも会えないかと思うと非常に感傷的な気分になった。
★★★上の写真は,赤坂見附の交差点脇に咲いていた「フユザクラ」。赤坂見附サントリー美術館への別れを惜しむように美しく咲き誇っていた。★★★

以下,HPより。
『サントリー美術館は、今回の展覧会をもって赤坂見附での展観を終了し、2007年春には六本木(旧防衛庁跡地)に場所を移して新美術館を開館します。1961年に「生活の中の美」をテーマに東京・丸の内に開館したサントリー美術館は、1975年、現在の赤坂見附に移転しました。ゼロからスタートした館蔵品は、今では日本の古美術やガラスを中心に、国宝1点、重要文化財12点を含む約3000点に及び、展覧会は今回で303回目を数えます。今回の展覧会では、絵画・漆工・陶磁・染織・ガラスなどの多岐にわたる館蔵品から粋を集めた約80点を展示し、改めて「生活の中の美」という視点から見直しながら、赤坂見附での長年の活動を振り返りたいと思います。また、より皆様に親しまれる都心の美術館を目指して、現在準備を進めている新美術館についても、建築設計や構想の一端をご紹介いたします。人々の日常生活と共にあったそれぞれの作品を心ゆくまでご鑑賞いただくとともに、今後、新しい時代に向けたサントリー美術館の活動の可能性と広がりを感じていただければと思います。』

アンケート結果による館蔵品ベスト10という企画も行われていたが,さすが名品が揃っている。
ベスト10の中では,左の「薩摩切子藍色船形鉢」が良かった。正面に翼を広げた蝙蝠(こうもり)を後方には巴紋を配した大型の船形鉢で,なかなかに幻想的な深い青色をしている。なぜ蝙蝠?と思ったが,中国では「福」につながるということで,吉祥文(めでたい慶賀の意味をもつ文様)に頻繁に使われるそうだ(初めて知りました。勉強になるなー)。
圏外の作品で気に入ったのは,次のような作品。
尾形乾山「染付金彩芒文蓋物」 これは,生い茂るススキを大胆に意匠化した作品。リンク先の写真では雑駁な感じだが,実物を見ると,感性の鋭さを大いに感じた。
「稲妻に薔薇蒔絵文箱」 文を結んだ外観と稲妻のジグザグ文様が絶妙にマッチした,斬新なスタイルの文箱。抽象画にも繋がるようなクールさを感じる。
本阿弥光悦「赤樂茶碗 銘 熟柿」も素晴らしい。まず色が良い。リンク先の写真では良く分からないが,右奥の底の部分が垂れ落ちそうな形状をしており,「塾柿」のイメージそのもの。このような器で茶を嗜めれば至福のひとときを過ごせそう。
これまで漆器にはあまり関心が無かったが,名品を沢山見て,少しだけ開眼したような気がする(錯覚かも知れないが...)。




絵画では,狩野元信「酒伝童子絵巻」が圧倒的な迫力。毒酒を盛られて正体を現した場面が陳列されていたが,童子の体臭まで漂ってきそうなリアリズム。好みは分かれる作品だが,名品であることに相違ない。
伝土佐広周筆「四季花鳥図屏風」も渋くも豊かな世界を見せてくれるが,もうひとつ心惹かれたのは,上の「誰が袖図屏風」。この作品では,人物は登場せず,衣桁にかけられた豪華な衣裳や匂袋などによって,それを着る女性の面影をしのぶという趣向のもの。「誰が袖(たがそで)」の名は,古今和歌集の「色よりも香こそあはれとおもほゆれ誰が袖ふれし宿の梅そも」によるとのこと。江戸時代には,このような「しのぶ」という感覚が普遍的なものであったということにしみじみと思いを馳せた。昭和の初期までは,このような感覚が共有できたのかもしれないが,この現代の余りにも全てが明け透けになってしまったことよ…
「誰が袖」という言葉が気になって検索し見ると…「タガソデソウ」という山野草があるとのこと。可憐で美しいことこの上ない。いつかお目にかかりたい。


右の写真は,美術館の奥の休憩スペースから眺めた新宿方面の景色。
初雪翌日の東京は快晴。
この景色も見納めかと思うと,なかなか立ち去り難かった。

追記:ガレの作品を見て,そういえば昔,幕張の北澤美術館でもっと良い作品を見たという記憶があったので,調べてみると...2000年に閉館していたんですね。こんな所へもバブルの傷跡が残っていたとは。浦島太郎状態ですね


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3 コメント

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間に合いましたね! (おけはざま)
2004-12-31 00:03:26
こんばんは.



間に合ってよかったですね!

「薩摩切子藍色船形鉢」は僕も大好きです.ガラス器の人気が高いのもサントリー美術館らしくていいです.屏風や絵巻も作品世界に浸れますよね.



美術館から新宿の方を眺めた写真もイイですね.



六本木には,2006年に国立新美術館が,2007年には新生サントリー美術館が開館します.近年,一年過ぎるのが早く感じられるようになって来ましたが,そういう楽しみがあるならいいかな,とも思います.



今年は拙blogにたびたびコメントいただきありがとうございました.いろいろ励まされました.来年もよろしくお願いいたします.よいお年を!
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最後の最後。 (Tak)
2004-12-31 14:57:00
こんにちは。

コメント&TBありがとうございました。



最後の最後に間に合いましたね。

「サントリー美術館(赤坂見附)の最終日に行った」と

孫の代まで語り継ぐこと出来ます(オーバーですね…)



さて、桜綺麗ですね。

これは気がつきませんでした。

今日の雪でどうなっているのでしょう。

最終日がこの大雪でなくてほんと良かったですね。



本文にお書きになられている

「感覚の共有」ってこれからの世の中更に

難しくなってくるでしょうね。同じ時代を

生きていてもそれが持てなくなりつつあります。

個性は大事ですが、例えば新年を寿ぐ

「感覚の共有」とかは忘れずに持っていたいですね。



さて、今年はお世話になりました。

また来年もどうぞ宜しくお願い致します。



良いお年をお迎え下さい。
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来年もよろしくお願いいたします。 (vagabond67)
2004-12-31 18:57:27
>おけはざまさん

こちらこそ詳細なBlogをいつもありがとうございます。来年も楽しみにしておりますので,よろしくお願いいたします。



>Takさん

何とか滑り込みセーフでした

こんなに立地が良くて,雰囲気も良い美術館があったということは,是非,語り継いでいきたいと思います

フユザクラは結構しっかりと咲いていたので,多分今頃雪と桜とでとても綺麗じゃないかと思います。赤坂見附交番の裏にこんなに綺麗な桜が咲くとは私自身も発見でした。

それでは来年もよろしくお願いいたします。
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