vagabond の 徒然なるままに in ネリヤカナヤ

エメラルドグリーンの海,溢れる太陽の光,緑の森に包まれた奄美大島から,乾いた心を瘉す写真をお届けします。

ブリュッヘンの指揮を聴いたことがありますか?

2005-01-29 02:59:42 | 音楽
フランス・ブリュッヘンは,20世紀最大の音楽家の一人だと思う。彼は,リコーダー(そう小学校でみんなが練習したあのリコーダー!)を演奏し,その可能性を無限に広げるとともに,レオンハルト,ビルスマ,アーノンクールらと共に古楽器演奏運動を推進した。私も,ブリュッヘンのリコーダー名曲集を聴いて,一時期,リコーダーの世界にどっぷりはまり込んだものである。

そんなブリュッヘンが「もうリコーダーを握らない」と宣言してから随分経つ。
そして,1981年にオリジナル楽器による18世紀オーケストラを結成して以後は,この楽団を中心に指揮の世界で活躍し,現在はエイジ・オヴ・エンライトメントの首席客演指揮者を務める等している。
彼の指揮による音楽は,繊細,緻密で,響きが美しく,しかも,情熱的である。
私は,カルロス・クライバー亡き後,ブリュッヘンこそが生存する指揮者のうちでは最大の存在ではないかとさえ思っている(因みに,ブリュッヘンが好きな指揮者は,カルロス・クライバーであるとの話もある。)。
古楽器には拒否反応を示す人も多いと思うが,騙されたと思ってブリュッヘン指揮の演奏を是非一度聴いてみて欲しい。
彼の指揮したハイドンは,音楽が純粋で果てしなく響きが美しく,しかも,とても溌剌としている。
シューベルトでも,馥郁とした音楽の中に見え隠れする背筋の凍るような孤独で寂しい眼差しを見事に表現している。
そして,ベートーヴェンの交響曲全集が何よりも素晴らしい。ベートーヴェンの音楽の強固な構成力,実はデリケートな響き,そして最後にはたどり着く栄光を,大いなる熱情を込めて聴かせてくれる。

そのブリュッヘンが,2月の下旬に新日本フィルを振るということを,アルゲリッチの演奏会に行って初めて知った。
彼が日本のオーケストラの指揮台に立つは,初めてのこととのこと。
ブリュッヘンももう70歳。しかもヘビースモーカーのためか年齢以上に老けて見える(実際,5年ほど前に彼の指揮を見たときには,歩き方も相当ヨボヨボしていた。)。
あと何回来日できるか分からないなぁとふと思ってしまった。
ということで,思わず,アルゲリッチの演奏会場で,18日(モーツァルト「パリ」,シューマンの2番等。トリフォニーホール)と25日(シューベルト「未完成」「グレイト」。サントリーホール)のチケットを買ってしまった。
想像以上に老化が進んでいて,指揮もまともにできないかもしれないなあ,なんて思わなくもないが,この機会を逃すときっと後悔するに違いない。
ブリュッヘンが新日本フィルからどんな響きを紡ぎ出すのか,楽しみである。