手口

昨日彼は、朝ごはんを食べてからシャワーを浴びて、
医者に行き、A就労の会社へ行った。

そして、夕方車を貸していた私を迎えに来た。

前回、頑張って外出したときは思いっきり寝てて忘れられて
たから…。

夕飯にみんなで鍋を食べ、ビール＆ジュースで乾杯。

ビールってももちろん、第３種で一人１本だけ。

で、夜になってみんな一斉に川の字で寝る。

朝方、不意に

「ありがとうねぇ…。」って言われる。

半分、寝ぼけながら

「うん…。」って答える。

「でも、不安で不安でしょうがない…。」って。

どう答えていいのかわからなくなる。

大きな不安は理解できる。

仕事・住居もちろん、生活基盤をこれから決めないと
っていうプレッシャーもあるだろう。

でも、年金や手帳、自立支援それさえも、継続されるかわからない。

普通に考えたら、不安だろうし、だったらやめればいいことだ。

でも…。

私から、

「だったら止めたら？」とは言えない。

それを言ってしまったら、またこの先ずーっと現状維持だろう。

大きな決意をしたんだって自分に言い聞かせる。

娘のために、実母のために、そして自分自身のために…。

どんなに今は辛くても、そのためにこの３か月苦しんで苦しんで
決めたんだからって言い聞かせる。

そして、これがボーダーさんの手口なんだろうなって思う。

彼は、こっちから何かしてくれるように、婉曲に婉曲にことを回す。

そして、それでもしてくれないと、お願いをする。

本当に、上手に、何度でも聞くまでお願いをする。

そして、した後、思いっきりありがとうって言う。

いつもこれの繰り返し。

ボーダーさんは愛を欲するわけだが、でもただ欲するだけではない。

赤ちゃんが総じてかわいいのは、かわいいと思わせるだけの要素を
揃えているから。

ボーダーさんも愛を欲しがる代わりに、ちゃんとそうさせるように
何らかしらの要素があるんだろうと思う。

彼は、素直にお願いできるってのと、心から感謝するってのが
その要素、つまり彼の手口なんだって思う。

ものすごくうがった見方だけどね。

でも、そうやって冷静に考えないと、ついつい決心が揺らぎそうになる。

私は今まで彼に、独立後についてはあ～しろこ～しろとは言わないように
してきたつもり。

あ～ただ、こっちにいるうちに仕事だけは目鼻つけてから行けとは
言ってあるけど。

ただ言っているのは

「よく、考えなさい。」って。

義父とは違うつもり。

子供のようにあ～しろ、こ～しろでは本人のためにならない。

ちゃんと、自分で考えて答えを出しなさいって。

そうしないと、また他罰的に、あれのせい、これのせいってことに
なるから。

そして、

「大きなアクションを後悔しないためには、事前の覚悟と事後の精進」

って言って聞かせている。

「大人として、自分の言動に責任と覚悟を持ちなさい」とも。

自分で決めて、あらゆる想定をしたうえで、覚悟をすれば、あとは
努力するだけでしょって。

本当は、こんなことは大人に言うことじゃないんだと思うんだけどね。

彼がこの先、どこでどんなふうに生きていくのか。

私が全部背負うこともないし、私の想像を超えていく部分もあるんだと
思うけど、でも、これをきっかけにちゃんとした大人になってほしいなって
心底思っていたりしている…。

彼はそんな私に

「○○（私）はやさしいね…。」って。

「ふん、今さらわかったか。」って言い返しておいた。