僕の感性

詩、映画、古書、薀蓄などを感性の赴くまま紹介します。

卒論を読んで

2017-03-03 13:44:50 | 文学
知り合いの学生さんの卒論を頂いた。

Kの全集を融通したことから、よく文学について語り合うようになった。

歌人Kの散文を中心に研究されたものだ。先行研究がとても少ないのでかなり苦労の痕が見受けられる。

Kは短歌で名を馳せた人物だから、散文は極めて少ない。
私なら絶対根を上げたに違いない。

私が全体を読んでの感想は、作品を離れて時代背景を詳らかにし過ぎた感がある点だ。
もう少し、文学的手法や内容についての言及が欲しいと思った。

初期の段階では、自然主義の作家について研究内容を述べようとしたが
個々の作家によって差がありうまくまとめられなかったようだ。
だから、与謝野晶子やトルストイが多く登場し、ともすれば戦争論に終始しがちになる。

けれどあと20年はKを選ぶ学生がいないだろうと教授に言わしめたぐらいだから
彼女の艱難辛苦の足跡を暗に認めているということだろう。

そしてほとんど顧みられることがなかったKの散文に一筋の光を与えた功績は
案外大きなことなのかもしれない。

漱石や太宰ならばもっとたやすかったろう。

資料をもとめて東京や福島やら全国を飛び回っていた。
敢えていばらの道に挑んだだチャレンジ精神は称賛に値する。

彼女がKの卒論に取り組んだ後、大学の図書館には、初めてKの全集が置かれるようになったそうだ。