ドラクエ9☆天使ツアーズ

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乙女の祈り

2021年04月17日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
【本日の午後の授業は、先生の都合により自主学習の時間となります
 この授業を受ける予定だったクラスの皆さんは
 これまでの教えをより深く理解するための時間として
 一人一人が今与えられている課題と向き合い、
 その上で級友同士で意見や感想などの交換をし
 有意義な自主学習となる様に努めてください】

そんな告知板の文言は、和気藹々とした教室の空気にかき消されてしまった。
侯爵家の姫を取り囲んで、レースの飾り編みを美しく仕上げるための手ほどきを、クラスメイト全員がああでも無いこうでも無いと騒ぎ立てるので、一向に進まない。
先生が不在であり、上級生の数名が自主学習の監督をしている状況では、ついついお喋りは脱線してしまう。
「優秀な方はだいたいいつもそうですわ」
と誰かがこぼしたのを皮切りに、その場にいた少女たちが常日頃の我が身の不遇を口々に訴える。
誰に?
侯爵家の姫に。
「私の姉上様はピアノがとてもお上手ですけど、教えてくださる時は先生より恐ろしいですわ。どうしてできないの、って怒ってばかり」
「まあ!私の母上様もですわ!私はとても成績が良かったのに、どうしてあなたは悪い点数ばかりとるのでしょう、って。知りませんわ、そんな事!」
「私もいつも兄上様と比べられて、字が汚いとか読めないとか間違ってるとか。兄上様は良いですわ、お勉強が大好きなんですもの。私は大嫌いだわ」
「そうですわ!大好きな人が大好きなことをするのと、大嫌いな人が大嫌いなことをすることを、同じ様に比べられるのはおかしいと思ってたのよ!」
「本当だわ、おかしいわ!私は割り算が苦手で二時間も三時間もやらされるのよ!妹は同じ問題を10分で解いてお人形遊びをしてるわ!それもわざわざ私の隣の机で!」
「まあ酷い!そういうの、ええっと、嫌味ったらしい、ていうのよ!」
「わかるわ、お母様もわざわざ自分の過去の賞状を私の部屋に飾るのよ!酷いでしょう?!」
「私の所はティールームよ!お前の賞状やトロフィーはいつここに仲間入りするのかしらね、なんてお茶の度に言われてうんざりなのよ!」
白熱するあまり、いつからか「上品で淑やかで気立ての良い口調」も何処かへ吹き飛ばされてしまっている。
それに気圧されているのは、和の中心にいる侯爵家の姫、アステとその側仕えのマリスである。
ことの発端は、このアステが、級友に「兄上様を見返したいからレース編みが上達する様に手ほどきをしてくれないか」と頼み込んだ事によるのだが。
アステと同世代の彼女たちにしてみれば、高貴なお姫様で、誰もが憧れる優秀な兄上様がいて、きっと何不自由なく毎日を送っている為に自分たちには関わりのない方なのだ、と思っていたから、その申し出は晴天の霹靂だった。
完全無欠な兄上様にレース編みをけなされて傷ついていらっしゃるらしい。それだけならお慰めして、またいつもの日常に戻ったかもしれない。だが、アステは、「見返したい」と言ったのだ。
誰からも優秀だと称えられる兄上様を、見返したい。
その思いは、少なからず彼女たちの胸の中にあった。
兄だったり、姉だったり。或いは、母や、弟妹、どこかの誰かでも良い。いつも誰かの優秀さと比べられ、「嘆かわしい」だの「もっと努力が必要だ」だの「そんな事では無益だ」だのと言われた経験は一つや二つでは無い。
そんな思いをアステも抱えているのだと思えば親近感を覚え、素直に応援したくもなる。そして自分たちが力を貸して、あの何よりも優秀な兄上様を見返すことができるなら、それは胸がすく思いを共有することになるだろう。
まだ幼さ故に明確にそんな動機を自覚したわけでは無いが、それでも彼女たちはアステの申し出に沸き立った。そうしてからの一致団結である。
皆がレースを持ち寄り、手よりも口の方が盛んに動いている状況だが、アステの為に糸が絡まったレースをほどきなおしてやっていた少女が、ふと口にする。
「でも、姫様。レースなら、マリスも上手でしょう?」
いつも一緒にいるマリスに聞いたりはしないのか、という実に単純な疑問。
その一言で、皆の視線はアステの隣にいるマリスに集まる。
教室の中でも年少組として皆に可愛がられているマリスは、何を言われたのかわからない、という様にきょとんとしている。
それで深読みができた者は半数ほど。やはりアステも、年下に教えを乞うのはプライドが許さないのでは、と早合点して、級友が放った不用意な疑問に一瞬ヒヤリとした空気になったが。
アステがそれをあっさりと蹴散らした。
「マリスは私の侍女なのだもの。甘えが出て、きっと辛く当たってしまうわ」
それは嫌なの、と言われ、今度は皆がきょとんとする番だった。
アステが何を嫌だと言うのか、良く分からなかったのと。
では自分たち級友になら辛く当たっても良いのか、と言うのが引っ掛かったのと。
今度は別の感情で、微妙な空気になってしまった。
誰かがその場の空気を変えてくれないか、と思っていたのは長い様で短い様な沈黙。
それに助け舟を出したのは、教師の代わりに、まだ幼い生徒たちの自主学習を監督するために側についていた上級生の一人。
「わかりますわ」
と、気取った声がして、全員がそちらをみた。
自分たちより三つほど上の彼女は、レシカと言った。歳よりも大人びていて、そのせいで少々近寄りがたい所はあるものの、こうして下級生の面倒を良く見るので生徒達から慕われてもいる。
「姫様は、クラスメイトの貴女たちを小さな淑女として敬っていてくださるのよ。だから教わる事も、先生から教わるのと同じくらい、敬意を持って教わることができるということでしょう」
そう言われて、皆はアステを見る。それを否定しないアステに視線が集中している中、レシカが続ける。
「でもマリスは側仕えだから、とても近しい存在なのよ。家族よりも近いもの。それに甘えてしまって、時にはわがままを言ったり、怒ったり、酷いことをしてしまうかもしれない」
その言葉で皆の視線はマリスに集中し、マリスが困った様にアステを見る。
それでもアステは、真っ直ぐにレシカを見ていた。それは侯爵家の姫としての矜恃。
「姫様は、それをしてはならない、と自律なさっているのでしょう。まだお小さいのにご立派だと思いますわ」
そう片付けるレシカに、アステが口を開く。
「私は小さいとは思っていないわ。学校へ入った以上、一人の淑女だわ」
「ああ、えっと、そうですわね。私に比べて、と言った方が良かったかしら」
困った様に少し笑ったレシカが、わかるの、と俯き、全員の視線が集まった事を感じた様に顔をあげた。
そうして、もう一度笑って見せた。
「私は、それをしてしまったから」
と言った彼女の口から、思いは静かに流れ出す。静かに、平かに紡がれる。
「その子は私の初めての側仕えだったの。私は12まで家庭教師に習っていたから、入学する時にその子をつけられたわ。家から離れて生活するのが不安で、不便で、気に入らない事も我儘も癇癪も、全部その子に押し付けてしまった。私の側仕えなんだから、そうして良いんだ、って思ってしまってた。その子がどれだけ大変だったか、言われるまでわからなかった。いつも何も言わなかったから。けれどある日突然、泣いて、家に帰してください、って言われて初めて、私は酷い事をしていたんだって、分かったわ」
いつの間にか教室が静まり返っている。
レシカは下級生達を見回し、安心させる様に微笑み、心配そうに見守る数名の同級生にも頷いて見せる。
「あなた達もそのうち側に支えてくれる子をつけられるかもしれない。もしくは誰かの側仕えになるかもしれないけれど。覚えておいてね、主は何よりも臣下を大切にするのよ。なんでも言いなりになるからって、心までは言いなりにしてはダメよ。お友達でも家族でも無い、自分の一部なのだから、尚更よ」
少し難しいかもしれないけど忘れないで、と教師の様に諭すレシカに下級生の一人が声をあげた。
「レシカ様は、その子とお別れしたのですか?」
「ええそうよ。お前には年下は扱えない、とお父様に言われて、次に来てくれたのが二つ上のエヴィよ。我儘を厳しく叱ってくれるわ。だから余計にあの子には悪い事をしたと思うけど」
もう謝ることもできないのよ。
他の家に行ってしまったから。
だからあなた達にはそんな思いはして欲しく無い、それがレシカの思い。傷つけることも傷つくことも、どちらもして欲しく無い。それだけを思って話して聞かせた上級生に。
「私、その子を知ってるかもしれないわ」
と、発された凛とした響きに、全員がアステをみた。
その場の皆と同じ様に驚いていたレシカが、間を外した様に「え?」と声をこぼす。
アステは真っ直ぐにレシカを見て言った。
「私の侍女候補として、何人かが連れてこられた時に会ったと思うわ。一人だけ、前の屋敷で側仕えの経験がある、と紹介された子がいたわ。学校にもついていたから、きっと助けになりますよ、って勧められた子だわ。」
それにレシカは答えられない。
周囲も、ただどうして良いかわからずに、双方のやりとりを見守るしかない。
それを気に求めず、アステが強く言葉を押し出す。
「母上様に確かめればわかると思うわ。前の家も、その子の名も」
気位が高いアステの話し方に、レシカは気圧されている。
そうでなくても、自分の痛みを打ち明けた後に、年下からそれを突きつけられてはうまく立ち回ることもできない。彼女もまた、まだ少女なのだ。
気丈に見せて、それでも姫の手前、下級生達の手前、やっとのことで口を開く。
「姫様が、その子を選ばなかったのは」
なぜ。
自分から離れ、別の家の側仕えとなる少女の消息。
複雑な思いが鼓動を早める。傷つけることも傷つくこともして欲しく無い。
そう願った柔い精神には酷なほど、アステの言葉は強い。
「その子が私を一度も見なかったからだわ」
他の子もそうだけど、とアステは態度を変えることなく続ける。
「許しがあるまで控えていなさい、と言われていたのはわかるわ。それでも、他の子は名を名乗る時には進み出て、上の方々に挨拶をして下がる。その少しの時間に私を見たりもしたけれど、その子だけは一度も見てこなかった」
私に興味がないんだと思ったわ、と、その言葉を聞いてレシカは俯く。
「その子」にそんな態度を取らせたのは、自分か。
自分から離れ、新たな主を迎え入れることに希望を抱けない程に傷つけたのか。だとすれば、アステはそれを責めているのか。そんな厳しい空気がわずかに和らぐ。
「マリスは入ってきてから出ていくまで私のことしか見てなかったから」
「えっ」
不用意に響く、マリスの高い声。
それを取り合うことなくアステは言った。
「だから、その子は私に興味がないんだと思ったのよ。」
本当はどうなのかなんて知らないわ、と言う声は、アステが「その子」にかけらも興味がないことの現れの様に温度がない。
「その後、その子がどうしたかは母上様に尋ねたらわかると思うわ。もちろん、あなたがそれを知りたいと思うのなら、だけど、聞いてあげても良いわ。」
「どうして」
「あなたが悲しそうだったからだわ」
違っていたらごめんなさい、と、少し頭を下げて見せ、そのまま視線を俯かせたままアステはわずかに唇を噛んだ。そして語られる思い。
「私は先日、ある方にとても失礼な態度を取ってしまったと思うわ。お礼を言うことも、お詫びをすることもできなかったことが、今とても嫌な気分だわ。謝って許されると思ってはいけないけれど、謝ることも許されないのはとても辛いと思ってよ。」
だから、とアステはレシカを見る。
「あなたがもう謝ることもできない、と言うなら、それができる私がするべきことだと思ったからだわ。」
小さな淑女として、侯爵家の姫としての務めだ、と教室にいる全員に宣誓する。
アステが侯爵家の姫として躾けられたままのあり様だった。
「それに私、あなたが悪いとは思っていないわ。あなたの話だけを聞いて、あなたを悪者にするのは違うでしょう?その子の話も聞いて、二人で話し合って、お互いに納得するべきだと思っているわ。」
一方的に自分が正義だと主張する人間を簡単に信じない様に、一方的に自分から悪者に成り下がる人間も信じない。当事者でないからこそ他者は公正であるべきだという精神。上流社会で教育される尊い理念。
それを習うばかりで、経験したことのない少女の言葉は迷いがない。
教師の言葉では、教科書では、世界は正しいことであふれている。
アステの幼いがゆえの強さはまさに無敵だ。その敵なしの強さが、今は、一人の少女を導こうとしている。
アステが、侯爵家の姫としての自覚を持った瞬間だった。
「ああ、姫様」
レシカが立ち上がり、淑女の礼をとるのをその場の全員が初めての感動と共に見上げていた。
「ありがとうございます。私、謝ることが許されるなら、勇気を出したいと思いますわ。」
「そうね。私もそんな大事な事を手紙で済ませたりはしないから。母上様にお話できるのは、夏の長期休暇の時だわ。」
大事な事、と言われてレシカはこみ上げる感謝にもう一度深くお辞儀をして見せた。
そんな感動一辺倒なやりとりに、級友の一人が口を出す。
「でも姫様、違う子だったら、レシカ様は謝れないわ」
まあ本当だわ、それはどうしたら良いのかしら、と集中する視線にアステは笑う。
「違うのなら、もっと手を尽くせば良いだけだわ。レシカ様がそれを本当に叶えて欲しいと言ってくれれば、私は私の力で助けられると思うわ。」
みんなが今、こうして私を助けてくれるのと同じ事よ。
その言葉は教室の全員に届く。
侯爵家を出て、全寮制のこの学園に入学した。
自分は侯爵家の姫なのだから、と、一人強がっていた少女は周囲を遠ざけていた。
賛辞も羨望も畏敬もことごとくはねつけ、うずたかく積み上げられた期待の頂点に下ろしていた腰を上げて、地に足をつけた。
そうしたからこそ、アステの言葉は全員に届いて、響く。
この時を待っていた。
入学時からこの時まで、それを間近で見ていたマリスの心は、今なによりも誇らしい。
少女達の輪に自ら望んで進み出たアステの姿に喜びを感じている。
それはアステを取り囲む少女達も同様に。
凛々しく正義を掲げる姫が自分たちと共にある。同じだと言ってくれる。助けることも助けられることも、同じだからこそ、尊い。それは少女達の世界では地位や権力などではなく、無垢なる力。特別な少女が持つ、少女だけの力だった。
その力を守護として得た彼女達は、新たな世界を知るだろう。



学園という囲いの中で育まれる乙女の祈り。
純粋で美しく、正しい事を教わり、清らかなままに大人の世界へと飛び込む私たちは、希望と愛を携えていくことができます様に。
どこまでも。
どこまでも。

ご褒美を探して

2021年04月09日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
馬車の中、でヒロに「ご褒美をあげよう!」と言われて「考えとく」と返すミカの
ご褒美を探すネタ

だったんですが

ウイバージョンとミオバージョンと師匠バージョンを
考えて作ってみたものの
何にも面白くならなかった名残の1枚

ミカは「出来て当たり前」と言う世界で育ってきたので
出来たことに対する「ご褒美」が何を意味するのかが、感覚として不明瞭です
(なので褒めるピントもズレてる、とヒロは思ってる)
ウイとミオに、お前らなら何が欲しい?と聞いて
「チョコレート一つ」や「よく頑張ったね」の一言が貰えたら嬉しい、という答えに
では褒美が当たり前になった時、それが与えられないのならやらない(頑張らない)
という思考にはならないのか、と不思議に思います
そんなミカに対して師匠が、天使界における天使の話を聞かせます

天使の仕事は誰からも褒められるものでは無いこと
それは天使たちが最終的に「自分たちが救われる」ために与えられた仕事である事
それに対して褒美が与えられるというなら、それは「心」であること
成し遂げて当然の仕事に「よく頑張ったね」と声をかけたいと思う心
そうして声をかけられて嬉しいと思う心
褒美とは、心と心の交流なのでは無いだろうかと思う、というのが師匠の話

これは私が、天使たちは最後まで不憫だったな、と思ってしまっているからなのですが

その話を聞いてヒロが皆に
「今回(精神的に)頑張ったのはミカだから褒めてあげて」
って言って、三人三様に褒められて「別に俺はそんなつもりじゃどーのこーの」
ってカッコつける中で
「お師匠様に褒められても嬉しいんですね」(いつもなら怒鳴るから)
「こりゃ本当に嬉しいんだな」
「イイことしたね!」
って終わるネタでしたとさ




(とりあえず絵を完成させてからセリフを考える、という手順なので
これ4コマにならないな、って気づくのがこの段階で大爆死)

教育の弊害

2021年04月06日 | 天使ツアーズの章(学園祭)





4コマだかSSだかで、ミカのお爺ちゃんが

ミカが下流社会の悪影響を受けるのと同じ様に
ヒロたちも上流社会に関わる事で悪影響を受けるだろうから
そこはお互い様じゃないだろうかね(意訳)

みたいな話をしたんですが(たぶん)
ヒロたちが受ける悪影響といったらこんな具合
(わざと意味が合わない言葉を使って遊んでますよ)
(先生がいたらめっちゃ怒られるやつですよ)

驚異の復原力

2021年04月02日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
ミカ 「お…前…、もう元に戻ったのか…」
ヒロ 「おかげさまで」




ミカは(マジかよ)って絶句状態だけどヒロがこんなだから安心して付き合っていける、って言うSSが1本忘却の彼方
ついこないだ作ったとこだったんだけどなあ???
先生に「付き合い方」ではなくて「向き合い方」を考えなさい、って言われて
二人で話をするだけの短い話だったんですが
まあいつものことなので、何かその後に活かせるでしょう多分

その後に活かせる、と言えば
今回のヒロの学びはちゃんと生きていて(こんなんでも)
それが頭角を表してくる未来のSSが2本
ヒロの故郷の話と、モエギと仕事の話です

こっちは忘れないとイイなあ、とか思いながら

次からの流れは
少しネタ4コマを挟んで、短めに「学校編+ミオの母親編」の予定でしたが
これまた男子組と女子組に別れるので
どうしようか悩みに悩んで、先に対外交のヤンさんの話をやっつけてしまおうかな
と考え中です

もとどおり

2021年03月29日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
ミオ 「ああああ私のせいでごめんなさいごめんなさい」
ウイ 「ダイジョーブだよ、ヒロがヒロなのが一番だよ」







絵がうまく描けて無いけど、先生にカットされたヒロの髪型はソフトモヒカン
のつもりで描いてるんですよあれでね?

ソフトモヒカンというかツーブロックというか刈り上げというか
その辺の違いがヘアカタログ見ても全然分からなかったんでどれでも良いんですけど
まあなんかその辺のザリザリする感じの芝犬の背中みたいな感じの手触りの
あれですよ!

先生は立たせる感じでセットしてくれたけど役目が終わった今
手櫛でサササーっ、です

そんなヒロの見た目は5キロ増えてるはずなので
ミオに今まで通り懐いてもらうためにはダイエットもしなくちゃですわ


預かる

2021年03月19日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
ここは城下にあるレネーゼ侯爵家の私邸の一つ。
後継者であるミカヅキ名義の屋敷を管理する執事のアドールは今、一着の衣装の手入れを念入りに行っている最中であった。
ミカヅキの友人であるヒイロのために誂えられた一着。
その保管をどうするか、と頭を悩ませていた二人の会話を聞いていての事だ。
自分の手元で保管するには上等すぎる、というヒイロの言い分と、侯爵家で保管するには私的すぎる、というミカヅキの言い分、どちらも尤もだと思ったので。
「私がこの屋敷で管理させていただくというのは、いかがでしょうか」
と、差し出がましいのを承知で提案してみた。
普段から、ミカヅキの衣装なら数点ばかりだが管理している。
そこにこの一着が加わろうとも、問題はない。
ここはミカヅキの私邸だ。そして自分は侯爵家からは切り取られた従者だ。この一着について管理状況を侯爵家に報告する義務も、管理に対する報酬を侯爵家から受け取る権利も持ってはいない。
その話に、ミカヅキはそれで良い、と言った。よろしくお願いします、とヒイロが言った。そういうわけで、今、この衣装はここにある。
(立派に今日のお役目を果たされたのですね)
その労りを込めて、慎重に羽箒で生地を撫で、埃を落としていく。
平民であるヒイロを引き立て、貴族であるミカヅキの隣にある事をわずかも損なわないよう、細心の注意を払って、裏地の一枚、糸の一本から考えに考えられた衣装だった。
それを脱いで、ようやくヒイロは、言葉通り肩の荷を下ろしたのだろう。夕食時には、今日1日の出来事を、話して聞かせてくれたものだ。
この一ヶ月余、彼を見、彼らを見てきた自分もまた、その軽やかな語りに深い安堵を覚えたのも事実。
一月という時間で、身分差のある二人に課せられたものは、アドールに手出しの許されるものではない。
その重さを推し量ることも、結果に言及することもまた許されはしない。
「それは良うございました」と一定の形式の言い回しに終始する。それ以上のことはただ胸の内に秘めなければならない。
まだ幼い主を惑わせてはならない。
それは必然、主との友好を疑わせてはならない、とも思える。
これほどの身分差がありながら、ミカヅキに対し一切の抵抗がないヒイロは貴重な存在だ。ミカヅキが同等だと認め、友好を求めている現実に、侯爵家が対処できていない。本来なら対処などしなくても良い案件だからだ。
侯爵家としては、身分差のある交友関係など一蹴してしまえば済む話。ミカヅキもそれを拒むことは出来ない。どれほど渇望しても叶わない格差があることは生まれながらにして、その血に刻み込まれているだろう。
端から問題にもなり得ないはずなのだ。
それが。
侯爵家から最高顧問の教師が出向き、最大限にミカヅキの言い分を呑み、事を起こそうとしている。
侯爵家でどのような変異があることなのか、自分には解ろう筈もない。知り得る立場にない。それでも、これは今までにない何かがある。
その渦中にあると見えるヒイロというただの少年は、それを分からない、と言う。
「格ってのがいまいちわかんねえ」
とは、この一月で何度も彼が口にしたことだ。
それに対し、ミカヅキは「位格」という意味を教える。
教育者のマナーコレット師は、その歴史から成り立ちを教えている。
それでも「分からない」のだ。
ヒイロのその言葉は、重く受け止めなければならないと思う。
どれほど知識を詰め込まれても、ヒイロには「分からない」という事。それを何とか分からせようとしている最中に、悪気なく「格」を軽んじてしまう。
アドールには、ヒイロの「分からない」という訴えが、幾度も繰り返された結果、大変な事態を引き起こしてしまったように思える。
「格とは何だ、って言われたら、説明はできるんですけど」
教えてもらったから、とヒイロは言う。
自主学習の時間に、一息つけるよう熱いお茶を用意しているアドールとの他愛も無い会話の中でそれを言う。確かに、彼はまだそれを「わかって」いない。
「そうですね。私も、明確にそれを言葉にすることはできませんが」
と前置いて、マナーコレット師がミカヅキとの対話を試みているのを良いことに、アドールは給仕の手を止めヒイロに向き直った。
今だけ、この部屋だけは、上流社会と切り離された空間として。
「若様のご友人であるから、私はヒイロ様とお呼びさせていただいております」
「ええーと、はい」
「先生からその様に扱う様に、と言われているからではありません。先生が貴方を若様と同等に扱う様に、というのは身分のことです。そうではなく、若様の格があるから貴方を同格としておもてなしするのです」
「ぬう」
なんとか理解しようと話に食いついてくる姿勢は、格を軽んじた事を痛烈に自覚した事の現れではあろうものの。
「やはり少し難しいのでしょうかね」
「いや、えっと、言われてることはわかります!わかると思うんですけど」
「実感はない?」
「実感、うーん、実感…」
「私はヒイロ様をとても良い方だと思っております。若様にとっても良いご友人であられる。それと同時に、私たち従者にも非常に好ましい人物として映っておりますが、それを踏まえても若様を抜きにしてお付き合いする事はあり得ないのです」
「ええーと、それは俺個人にはミカの格がない、から」
「そうですね。例えば若様がいくらお許しになっても、ヒイロ様が単独でこの屋敷に入る事は許されません。あくまでも、若様が連れている、ということが大事なのです」
「はい」
「それと同じく、私たちにも若様の格があります。例えば、私とヒイロ様が屋敷外で会ったとして、親しく会話をしたり行動を共にしたりすることも許されません」
「えっ、じゃあ町で偶然会っても声かけちゃダメって事ですか」
「そうですね。私にできるのは、せいぜい目礼まででしょうか」
「あっぶねー…俺、知らなかったら絶対大声で声かけるとこでした」
それは目に見える様。ヒイロが好ましい人物だ、というのは本心だ。ミカヅキが連れてこなければ一生、関わりのなかった少年。おそらくは、どこにでもいる普通の少年だ。
「ヒイロ様がよく私どもの仕事を手伝う、とお申し出をくださいます。それは大変嬉しいことでもありますが、今は先生の言いつけによりお断りしておりますね」
「あ、ああ、はい」
「今回のことが終わればどうなるか、というのはまだ私には予想できませんが、例えば今後ヒイロ様が何かしらの理由で仕事を任せて欲しい、と私を尋ねてこられてもお受けすることはできません。仕事の従事者にも格があり、ヒイロ様にはそれがないからです」
「えーと、それはー、ミカの格があっても、ダメだ、ってことですよね」
「そうです。そこは若様の口添えがあっても許されません。家の格があるからです」
それまで素直に話を聞いていたヒイロがついに机に両肘をついて頭を抱えて見せる。
「ああ、すみません。余計、複雑にしてしまいましたか」
「ううーん、いや、いろいろ例を出してもらって状況を考えられる様にはなったと、思うんですけど」
考えることができる様にはなった、というのはヒイロなりにアドールに気を使ったことか。ヒイロは人を拒否する様な真似をしない。格はなくとも彼なりに礼儀はある。それを好ましいと思う事と、この世界で通用するかという事は別だ。
(これは難しいのかもしれない)
上流社会に生きる自分たちは、生まれながらにして身についているものが彼にはない。それを肌身に感じることは、きっと出来ない。
言葉の意味を知っても、歴史や成り立ちを学んでも、「わかる」ことは出来ない。それが出来ない以上、ヒイロはミカヅキとの同等を得られない、と憂うばかりだった。
それが。
「なんか今日わかった気がするんですよ」
とヒイロが嬉しそうに報告してくれたことに、アドールは一瞬、なんと答えて良いのか分からなかった。
その驚きの間に、ヒイロが晴れやかに笑う。
「先生とミカと、アドールさんが教えてくれたこと全部が、こう、なんていうか、バーっと目の前にあって」
と、ミカヅキの妹姫が通う学園に足を踏み入れ、その世界を体感してきた少年は。
「俺、何があんなにわかんなかったのか、そっちの方がわかんないっていうか」
と照れ臭そうに笑った。
そのあとも何がわかったのかを言葉にしようとして苦戦しているのを見て、微笑ましくなる。
「そうですね。私もそれを、明確に言葉にすることができませんから」
と、あの日に前置いた言葉を言えば、一瞬目を丸くしたヒイロが、次に晴れやかに笑った。
とても良い笑顔だった。
この一月に学んでいた彼の苦難の表情を、一気に晴らしたそれを、言葉にする事は難しい。そう同意する。
「うん、言葉にする事はできないけど、でもわかったと思います」
それはもう疑いようの無い言葉。
「それは良うございました」
と返すだけしか許されない自分に、「ありがとうございました!」とヒイロは深々と頭を下げた。
その礼は、格を理解し得なかった頃のものと同じではなく。
自信を伴った礼だと思った。
彼を成長させたもの。事前の教養と、実体験。その二つを導き合わせ、恥じることなく向き合う覚悟を後押ししたのは、何であれ。
この衣装もまたその役目を果たし、然るべき時まで一時の休息をとる。
(ご苦労様でした)
羽箒で美しく生地の毛並みを整え終わり、ハンガーに吊るされた衣装は今。
彼と、彼の友人の未来を預かって、クローゼットへと仕舞われた。

見送り

2021年03月13日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
オシエルは学舎本館二階のインナーバルコニーから、その光景を見ていた。
本館の貴賓用の裏玄関。待たせておいた馬車が迎えにくるのを待っている二人の少年は、見送りに出た生徒との別れ際に何やらやりとりをしている様だ。
ここからでは良く見えないが、それでも「今更懸念することもなし」とオシエルはその場を動くつもりはなかった。
ミカヅキが友人を伴っての妹の学園祭での振る舞いには片がついた。後に任された自分の役目はそれを侯爵家に伝える事だが。
(それが皆様方の意に添うか、どうか)
と、ミカヅキから目を離し、その隣の友人であるヒイロに目を配る。
彼は、ミカヅキとその妹姫との交流にうまく作用している様に思う。
それは先に開かれた茶会での様子も相まって、考えさせられる事。ヒイロは、貴族社会の通念と自身のおかれる立場とを理解し、この一月余の教えを自分の中で昇華させて、自在に使いこなして見せた。
(まさかここまでとは)
というのが率直な感想だ。
ミカヅキの友人として公の場でいかに振る舞うべきか、それを仕込んだ一月余。
ヒイロの仕上がりは、オシエルの想定した及第点にはわずかに及ばなかったが、それでもミカヅキに託す分には障りはないだろうと考え、学園への同行を許した。
ミカヅキの公での振る舞いには教師として絶対の自信がある。ヒイロがそれに倣い、大人しく控えると言う立場で同行する程度なら良し。ヒイロにはそれをキツく言い渡してあるという事と、公とは言え学園内という綴じられた場である事。加えて学園行事の中日であれば遊楽の面が強く、今まで堅苦しい行事にしか出席してこなかったミカヅキへの試験的な意味合いも含めては周囲の理解も得られるだろうと判断したのだ。
それが、どうだ。
ヒイロは大人しく控えてなどいなかった。積極的にミカヅキと妹との交流を促す様に振る舞い、その学友たちも取り込んで和気藹々とした雰囲気を作り上げて見せた。
これは完全に想定外だ。ヒイロは、ここで一気に化けたと言っても良い。
(彼は、実地体験で成長を見せる質だったか)
それはオシエルの経験上、今までにない成長の仕方だった。
それはそうだろう。オシエルの教師人生の中で、不完全な状態で教え子たちを手元から離したことはない。
他よりも出来る子、出来の悪い子、それなりに手をかけて教えを施してきた。それでも、どうあってもオシエルが求めた及第点に届かず合格を言い渡す事ができない子らも多かれ少なかれ出るものだ。なんとか免除してやっては、という周りの意見にも耳をかさず「達していない者に了を与えることは出来ない」という姿勢を貫いた。それはオシエルの信念と共に侯爵家の名を背負う教師としての立場があった。
(その信念が教え子たちの成長を妨げはしなかったか)
今のヒイロの様に、不完全でもあとは本人の力量に頼る方法はなかったか。そう考えて、有り得ない事だという思いが湧き上がる。
オシエルの生徒たちは貴族社会に生きる子たちだ。及第点どころか、満点を求められる生き方から逃れられはしない。多少難はあるが、あとは社交界に出て、失敗し恥をかきながら学びなさい、と言って手を離すことはできない。それが許されない社会。一度つまづいて、そこからやり直すといった寛容さはない。
(なるほど。問題点はここにある)
自分の教えにも、それを作り上げてきた社会にも。
ヒイロを見れば、優秀たり得ない子供らに「教師を目指すのは諦め、他の道を探しなさい。端から向いていない」と進言した事も、可哀想なことをしたかもしれない、と感じるのは情でしかない。あの子たちも実地体験で飛躍的な成長を見せたかもしれない、という可能性は捨てきれないが、それをして許されない社会に生きる子たちの人生をオシエル一人が抱え切れるものではないのだ。
(御館様の真意はここにある)
その思いに、ヒイロからミカヅキに視線を移す。
彼もまた、ヒイロの成長に助けられているのか、どうかは危うい。
ミカヅキが初めて得た友人だ、と老侯爵は言った。
なぜ「初めて」得る事が「できたのか」それが要ではないか。
平民社会に生きるヒイロを友人だと位置づけ、彼を貴族社会に関わらせる事には慎重になるのも分かる。
自由とは、決して安らかなものではない。暴走し、荒れ狂う。己の意のままにはならず、時として逃れたいと思うほどの過酷な状況を生む。それに翻弄される事のない様に、人が人として求める安穏のために作りあげられたのが、規律だ。自由を封じ込め、出来上がった社会。そこに生きるミカヅキは、果たしてヒイロに何を求めるのか。
教育を施し、オシエルが及第点を出した友人の姿を見て、ミカヅキは拒絶反応を示しはしなかったか。
この一月の教育とは、自由に生きる彼を規律で縛り付けること。一月前には想定していながら、実際に完成形を突きつけられて、自分の判断が正しかったかどうか、動揺したのではないか。
それは、「貴族にはならない」と、自らの意志で示したヒイロの言葉にも同様。
公の場で、私の感情を出してはならない。幼い時分からその教えを完璧に体現できるミカヅキであるために、それを聞かされた表情からは何も読み取れはしなかったが。
礼儀作法と教養を仕込まれて、自分の考えを持つ様になったヒイロ。それは見違える様な成長だ。
この学園で、実際に貴族社会の片鱗を経験し、そこから垣間みる本質を理解したというなら、それを授ける様にオシエルに要請したのはミカヅキだ。
それがミカヅキにとって不本意であったというのなら。
(次は我々の番ですよ、ミカヅキ様)
ヒイロは大きく前進した。
彼は、今のままの自分がミカヅキの友人であることに疑問は持たないだろう。
だがオシエルは、それを惜しいと思ってしまうのだ。
今日の彼の振る舞いを見て、この一月の彼の奮闘を見てきて。
(できれば彼には爵位を授け、ミカヅキ様の功臣として認められる様、取り計らうつもりではあったものの)
おそらくは、老侯爵他、近しい幹部の方々も密かにそれを期待しているのではないかと思うが。
残念ながらそれは見送るべきだ、と伝えなければならない。
ヒイロの意志が硬いからではない。
ミカヅキの意志が、いまだ柔いからだ。
先に行ったヒイロを、ミカヅキが許容できるかどうか。
悪く言えば、今まで下に見ていた彼が自分と並び立ち、さらにその上を行く現実を見せられて、ミカヅキが耐えられるかどうかが問われる。
だからミカヅキには、ヒイロと向き合うことを言い含めた。
なぜ初めての友人たり得たのか。
ミカヅキなら、必ず答えを出せるだろう。
(その様に、幼少期からお育てしてきた)
ミカヅキの出す答え、そこから始まるのだ。新たな教育と、成長と、習熟。若く瑞々しい精神は、周囲の意図しない結果をもたらすのかもしれない。
それに備える。
(我々は、それに備えるために今は見送るべきです、と申し上げて)
大きな成長を求められているのは、籠の中の雛ではない。
雛が自由に成長したとしても、囲い込める自在な籠の方にこそ、成長と変化を求められる。
自由に反対するものは、統制か、束縛か。
どちらかを選ばなくてはならない侯爵家の判断とは。
その様に、窓の下ではなく、はるか向こうの光景に思いを馳せていた時。
「レネーゼの若君様はお帰りになられる様ですな」
と、オシエルの背後からかかる声に振り向けば、老齢の学園長がにこやかに歩み寄ってきた。
「若君様の専任でいらっしゃる先生がこの様な形でお見送りされるとは」
どういたしました、とやんわり問いかけてくることに姿勢をただす。
「今日の私は客分としてあると言うことを、若様は納得しておられましょうから」
学園長は、それだけの言葉でオシエルの立場を理解した様に頷いてみせた。
「では私も隣によろしいでしょうか」
と次なる問いかけには黙礼で返し、オシエルは脇に避け学園長へ窓の真正面になるその場を譲る。それに感謝の礼を返した学園長は、窓下に見える様子に目を細め、話を続けた。
「若様が学長室へわざわざのご挨拶に参られた折、見送りは不要に、とおっしゃられましてな。今日の主役は生徒たちであって然るべきと考えるので、何分にも、と念を押されましては、そのお心遣いを有難く頂戴いたしました」
せめては私もこちらでお見送りさせて頂きたいと思いまして、と自分もオシエルと同様の見送りの理由だ、と語っておいて、オシエルを振り返る。
「若君様は実に良く先生の教えを飲み込んでおられる。素晴らしい」
美しい礼儀だとミカヅキを称え、それを仕込んだオシエルの功績を称える。
それはこれまでにも幾度となく経験してきたことではあったから、お褒めに預かりまして、と返すことは当然の流れではあったが。
いえ、とオシエルは学園長の意識を誘導する様に、外の二人へ視線を戻した。
「この度の事では私はいささかも指導をしておりません。若様が自らその様に判断されたとすれば、この学園内で生徒の皆様方と触れ合い、直接に日頃の学習成果などを実感されての、純粋なるお気持ちからの事ではないか、と思います」
この様な席では自分が主役にならぬ様に、と指導するのは容易い。だがその振る舞いに包み隠された心根がどうあるかは、指導だけで済ますことはできない。
「それを思えばこの場に招いて下さった事、若様のお心を成長させていただきました事、生徒の皆様方には感心させられるばかりでありますね」
その様な機会を与えて下さった学園の先生方にも、と口をついて出る謝辞は、社交辞令からは幾分、定石を外れた行いではあったが。
それをどう捉えたか、しばしオシエルの言葉を考えた様な沈黙の後、学園長は「なるほど」と窓の外に目をむけたまま頷いた。
「先生も、若様をお育てする新たな道を模索しておられる様だ」
そう言われて、思わず学園長に視線を戻せば、彼は心得た様に笑みを返す。
「私も教育者として多くの子供たちを育てる事に注力した身です」
たったそれだけの言葉で、今のオシエルが辿っている道は、先を行く者たちが切り開いてきたものだということが分かる。
そして、それを超えていけるかどうかが問われている。
ミカヅキの預かり知らぬこの場で交わされたそれは、社交辞令から外れた行いが引き起こした事。
(若様が求めておられるのは、これか)
レネーゼの名を背負うためにこそ新たな道を探したい、とそう言った幼い後継者の立志を思う。
「ああ、出られる様ですな」
と学園長が窓の外の様子にわずかに背を正した。
二人が、馬車に乗り込んだ。それを確認し、御者の一人が扉を締め。
オシエルも学園長の隣で背を正す。
夕刻が迫る中、学園の外へ向かう並木道は影を長く伸ばしている。整然と舗装された石畳は、馬車を支障なく進ませるために敷かれたもの。
その道を当然の様に駆け出す侯爵家の箱型馬車。道を外れる事なく、ただ真っ直ぐに敷かれた道を進んでいく。
視界の端で、学園長が深々と頭を下げた。
オシエルもそれに続く。
二つの最敬礼は、紋章を刻んだ馬車が学園の門を過ぎて遠くなるまで捧げられた。

天使御一行様

 

愁(ウレイ)
…愛称はウイ

天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。
旅の目的は、天界の救出でも女神の果実集めでもなく
ただひたすら!お師匠様探し!

魔法使い
得意技は
バックダンサー呼び

 

緋色(ヒイロ)
…愛称はヒロ

身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。
究極に節約し、どんな小銭も見逃さない筋金入りの貧乏。
旅の目的は、腕試しでも名声上げでもなく、金稼ぎ。

武闘家
得意技は
ゴッドスマッシュ

 

三日月
(ミカヅキ)
…愛称はミカ

金持ちの道楽で、優雅に各地を放浪するおぼっちゃま。
各方面で人間関係を破綻させる俺様ぶりに半勘当状態。
旅の目的は、冒険でも宝の地図でもなく、人格修行。

戦士
得意技は
ギガスラッシュ

 

美桜(ミオウ)
…愛称はミオ

冒険者とは最も遠い生態でありながら、無謀に放浪。
臆病・内向・繊細、の3拍子揃った取扱注意物件。
旅の目的は、観光でも自分探しでもなく、まず世間慣れ。

僧侶
得意技は
オオカミアタック