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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

身近でも三井マンションの不正 基礎工事

2015年10月23日 | 鍬ヶ崎の防潮堤を考える会

横浜市で起きたマンションの杭打ちのとんでもない不正問題。いま岩手・宮古市鍬ヶ崎地区で進んでいる防潮堤工事でも同じような不正が起きている。

プレキャスト工法による防潮堤の鋼管杭の問題もその手抜き、不正、不合理性、の点では全く同じ構造の問題だ。

しかし、前者がマンションのわずかな傾きの問題や立て替え補償の問題なのに対して、後者は地域全滅の危機、地域住民の人命に係る重大な問題なのである…

 

岩手県の杭打ち「鍬ヶ崎の防潮堤工事」の場合、疑惑だらけ


 

(1)岩手県は、打ち込んだ防潮堤の基礎杭(=鋼管杭)が硬い支持地盤まで届かないのに4ヶ月ほど打ち込んだままにしておいた。 鋼管杭の長さを足すために引き上げてみたら塩害のためにかなりの腐蝕が進んでいた。しかし岩手県は数十本の支持地盤未達の鋼管杭を引き上げて溶接で長さを足し、塩害の腐蝕はそのままにして、再びそのまま埋設しているのである。以下の写真の通りである。何の手当てもせず、市民への説明もせずこのような確信的欠陥隠蔽はその時点で責任が問われるべきものである。目撃者はそのときなにが行われているのか分からなかったという。


撮影:宮古市 古舘和子氏(2015.7.15)

 (目撃者談)「赤さびというより剥がれているように見えました。たった4ヶ月地中に埋められていたもののようです。長さを追加するためにクレーンで抜いたものです。1年もすれば穴があきそうな勢いですね。どんな鋼材なのでしょうか?そもそもこれが防潮堤基礎たり得るものなのでしょうか?偶然の1本であっても鍬ヶ崎の防潮堤はここから崩壊します。鋼管の粗製濫造が始まっていると思います。先きの震災の検証が行われておらず形だけ替えて同じ欠陥防潮堤が作られていると思います」

 

【関連記事】宮古市議会への「考える会」陳情書 2015.9.13

【関連記事】工事変更で土木センターと会見(2) 20157.27

 

 

(2)管理問題。鋼管杭が支持地盤に届いているかどうか分からない。 横浜のマンション工事と同じで、届いているかどうかは現場の管理者まかせ、管理者がどのような管理で到達、不到達を判断しているのかも分からない。発注者の岩手・宮古土木センターの管理者は現場に立ち会ってもいない。完全な暗闇作業場である。(ゼネコン、下請け、孫請け、ボーリング調査、ドリル打設、鋼管杭追加溶接、非破壊検査会社、生コンクリート会社等)業者から業者への事後報告が上がり辻褄合わせの書類が発注者に届くだけだ。書類が整えば…の役所仕事への変貌。マンション発注者~元請け、1次、2次、3次下請けの改ざん多重構造と同じである。大きな闇が覆っている…

鍬ヶ崎防潮堤「その1工区」設計縦断図
(日付不開示資料 岩手県提供)

岩手県の公開文書には全て日付が無いが
これは反古(廃棄)図面。この図面の鋼
管杭は2015年2月~3月に打設されたが支
持地盤に未到達である事が判明(全80本
のうち54本打ち終わった時点で50本が未
達)、その後7月に工事再開されるまで
上部は塩水に漬かったままであった。  

【関連記事】鍬ヶ崎沿岸の岩盤地形(1)反古、縦断図 2015.6.1

(参考)

マンションデータ(2013.10.20 日本経済新聞)

西棟全52本の基礎杭データ10本に改ざんが見
れ6本~8本が支持層に届いていなかった。

 

 

(3)支持地盤への到達も問題だが、津波の横圧力に耐えられるか? めくら打ち状態である。横浜のマンションのコンクリート杭の場合はそれらの支持地盤への未到達そしてそのデータの改ざんが問題になっている。しかしマンションの場合はある意味で縦の力(重力)に基礎杭が耐えればそれで良い。だから杭の先きにコンクリートを袋状に流し込んで補助的支持地盤の細工も出来る。しかし、しかし、防潮堤の基礎鋼管杭は防潮堤の海側面が受ける横からの力を徹底して支えなければならない。岩手県にはそこのところの問題意識、もちろん解決策が無いようである。希薄である。完全なベクトル音痴になっている…。どこかでこの問題は露呈し防潮堤そのものの意味が破綻する…

 

 

(4)支持地盤層の安定度がもともと異なる。 マンションは支持地盤層が安定しているところに建つ。マンションの立地は人間が決める事が出来、地盤に問題あるところにはマンションは建たないといえる。比べて、防潮堤の立地は人間側の選択権は無いに等しい。このことから防潮堤の建設はもともと無謀だとさえ思われる。だからマンションや橋梁など他の巨大建造物の基礎工事と工法は同じにはならない。0(ゼロ)から、よほど慎重、念入りでなければならない事は分かるはずである。とくに北三陸沿岸特有の支持地盤の海側/陸側の急勾配・複雑系の岩盤をどのように支持地盤に見なすのか? 官も民も住民も初体験であるものを、何の研究もされていない。何の説明もされていない。設計施工者にはそこらのビルの基礎工事程度の知識しかないのだ。地元民にとっては鋼管杭の埋設は不可能に思えるのである。

急勾配・複雑系の鋼管杭支持地盤

 

 

(5)支持地盤環境。 支持地盤の地層、形状以外の問題点。冒頭に述べた海水による塩害の問題。どのようにして海水の塩に弱い鋼管を海底地層に埋設するのか? 少しも考えれれていない。引き上げられた冒頭の鋼管杭は4ヶ月も海水に浸かっていたものである。以上のような塩害など鋼管杭に及ぼす影響と表裏の関係にある、むしろその方が問題が大きいと言われている、鋼管杭の環境破壊についてはここでは詳述しない。a)コンクリートからしみ出す強アルカリの海水汚染、b)同様、海洋を汚す鉄錆汚染、c)沿岸に林立する鋼管杭による地下水の滞留、流域、流量などの変化、d)そもそも鋼管杭強制打設による地層、深層岩盤の徹底破壊。など、別の場所で述べる事になる…

 

【関連記事】 要望書(知事)回答書(2) 2015.3.27

 

註 4)結果としてなにが起こるか? ハード面から順番に…

 1、鍬ヶ崎海岸の鋼管杭倍増投入による海底自然の破壊 埋設工事破壊と慢性的腐蝕破壊

 2、地震による鍬ヶ崎海岸線の自然崩壊 地脈破壊、地盤の弛みの加速

 3、津波による鍬ヶ崎地区の壊滅 防潮堤の倒壊による

 4、鍬ヶ崎地下水系の変調 枯渇、汚濁、地盤・地表への影響

 5、港内海水の汚染 鋼管杭埋設汚泥、鉄錆、セメント・コンクリートによる港湾海水の強アルカリ化(六価クロムなど)、錆び止め等薬品

 6、宮古湾、外洋の慢性的海水汚染 環境ホルモン、海の自浄作用の退化

 7、磯焼け、漁業被害 磯漁業、沖合漁業の壊滅

 8、住民の健康被害

 註 5)土木工学的結論 逆T字型直立式プレキャスト工法は横からの津波の襲撃力に弱く、鍬ヶ崎海岸はその急峻、複雑な深層岩盤地形のために鋼管杭工法には向いていない。(正しくは「鋼管杭工法は鍬ヶ崎海岸には向いていない」というべきであるが…)──岩手県がボーリングによる鋼管杭支持地層調査を放棄したがる理由ははっきりしている。地層そのものがボーリング調査を受けつけないからである。考えて見れば鋼管杭の打ち込みとボーリング調査は似ている。完璧な杭(くい)打ち込みと完璧なボーリングは同じものなのである。それが出来ない理由は専ら鍬ヶ崎の地層にある。原理的には出来ない事ではないがあまりにも杭の本数が多くボーリングの本数が多すぎる。時間、経費、労力の生産効率が悪すぎる。ほとんどどこかでごまかすか、意識して不正をするか、アリバイ作りでよしとする姑息さをするか、そのような予感にまみれて人間的には無理な作業工程となるのである。現在追加しているという50m間隔のボーリンング調査も納得できるデータは量の面からも質の面からも期待は出来ない。そもそもの大甘の初動が間違っていたからである。大きくふりだしに戻るしかない。

 

(6)欠陥の露出。 マンションのコンクリートパイル基礎欠陥は上層階の手すりの2cmの段差で露見した。その手抜き工事、データ改ざん、責任問題、建て替え工事等、問題は当然にもまだまだ続く。防潮堤の鋼管杭の不正や欠陥の露見は、即座に万事休すである。防潮堤は崩壊し、住民の命と財産は文字通り水泡に帰する。…と簡単に描(か)いてみたが、これは手抜きではない。防潮堤の欠陥露見即壊滅地獄は真実だ!

(参考)

日本経済新聞(2015.10.23) 

 

 

次頁にその他の参考図

 

 

 

 

 

 

 

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