宮古on Web「宮古伝言板」後のコーケやんブログ

2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。 藤田幸右(ふじたこうすけ) 管理人

県土整備部と住民(2)大船渡湾の防潮堤=続

2012年11月24日 | どうなる復興計画

県土整備部が強迫観念的にこだわる仕事ぶりが下の短い記事の中に見えてくる。防潮堤については多くの漁師からは海を死なすという意見が出ており、一般市民からは海が見えなくなる、もっと別な発想で津波防災を考えたいという意見が出ている。防潮堤だ防潮堤だとあまりにも硬直した官僚主義の姿が見えてくる。

大船渡湾の防潮堤をより高く



 NHK岩手県のニュース


岩手県は、まちづくりを検討した結果、大船渡湾の防潮堤の位置が変わったために想定される津波の高さも高くなったとして、防潮堤をこれまでより高い7メートル50センチで整備する方針を明らかにしました。
これは26日開かれた有識者でつくる県の津波防災技術専門委員会で県が報告したものです。
 ─中略─
これについて、委員からは「シミュレーションでは明治三陸津波を想定しているが東日本大震災を想定すると津波がもっと高くなることはないのか」という質問が出されましたが、県の担当者は「シミュレーション上、大きな影響はない」と答えていました。
県は今後、大船渡市とともに住民への説明を行ったうえで平成27年度中の完成を目指すとしています。

(10月27日 盛岡放送局)


(資料)技術専門委員会は以下8名の委員とオブザーバーで構成
今村 文彦 東北大学大学院 教授
堺  茂樹 岩手大学 工学部長
首藤 伸夫 東北大学 名誉教授
内藤  廣 東京大学 名誉教授
羽藤 英二 東京大学大学院 准教授
平山 健一 独立行政法人 科学技術振興機構 JST イノベーションサテライトいわて 館長
南  正昭 岩手大学工学部 教授
山本 英和 岩手大学工学部 准教授


県土整備部は質問をただ一蹴しているように聞こえる。明治三陸規模の津波対応であった7.2mの高さを防潮堤の位置が変わったというシミュレーションで7.5mに変更するという県土整備部の報告に対して技術委員から「(変更はともかく)もともと今次3.11規模の津波対応ではもっと高さが必要になるのではないのか?」という質問があったというのだ。

県土整備部と技術専門委員の会話は主客のポジションなどいつでもどこでもちぐはぐなのであるが、委員のこの質問の趣旨は大船渡の防潮堤に関する質問ではなく100年単位規模の=史上二番目範囲の規模の=明治三陸の規模の津波を想定するという大命題に関する、ついて回っている疑義、不信感をあらためて表白したものである。つまり、大船渡湾の防潮堤の高さへの質問ではなく防潮堤そのものの効果に対する異議申し立て、強い不信認といえる。そうでなかろうか?

質問に対して県の担当者は「シミュレーション上、大きな影響はない」と答えたという。意味不明の答弁である。答えること自体がおかしいことだともいえる…。また「(東日本規模でも)大きな影響はない」という事はどういうことか? 投げやりな答弁にしか聞こえないが…。担当者も委員と同様、もはやわけが分からなくなっているのだ。「シミュレーション上」とは、シミュレーションがもともと(永遠の)仮説だからである、なんとでもいえる事だからである。住民にとってはたまったものではない…

──県土整備部の担当者も委員会の委員も、それにNHKの放送記者も各社新聞記者も、こんなことでは真剣に職務を果たしているとはいえないと思う。ごまかしや曖昧さのない仕事ぶりを見せてほしい。南海トラフ大震災問題以来、この国の津波想定の大命題は大きく揺らいでいるのである。「史上二番目」対策には誰も耳を傾けなくなったのである。でまかせに「大きな影響はない」などといわせてはならない。


油断はできない


県土整備部が県の津波防災技術専門委員会を行政的にぎゅうじっている事は誰の目にも明らかである。本来は政治からも行政からも独立して知事なりに専門的な提言をしたり諮問を受けて答申したりする機関であったものが自由にものを言えなくなったように思う。県土整備部のただの追認機関と思われているほどなのである。これでは県土整備部が今後の展望を「住民への説明を行った上で」と声明してもそのやり方は見え見えである。宮古市の例もあり油断はできないのだ。宮古市の水門問題では市長も議会も、専門委員の先生も県土整備部におさえられて住民への説明は無いに等しかった。

今でも理不尽である宮古市の閉伊川水門建設推進に強引であった県土整備部の根拠のない独善的なやり方を繰り返えさせてはならない。「それが行政的正当性の、また本当の技術的分野にかぎって許される程度ならまだしも、限度を超えて政治的発言をくり返し、誤った越権行政を実行しているのである」(岩手県土整備部)

一方では岩手県津波防災技術専門委員会の方の行政・政治に影響されない本来的独立不覊の活躍をお願いしたい。あまりにも停滞感のある海洋災害に対する土木工学/学者/学会の実態である。プレート地盤・地殻、地質、三陸沖地震、海洋、海洋気象、波浪など学問的周辺情報との連携はうまくいっているようには見えない。明治来の政治的経済的周辺情報をきっぱり捨てる覚悟が必要である。



[関連記事] 県土整備部と住民(1)大船渡湾の防潮堤

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[関連記事] 懲りない面々「コンクリート村」(2) ~専門家のおざなりな津波防災プラン~

 

つづく

 

 

 

 

 

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