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2011.6.1~。大津波、宮古市、鍬ヶ崎復興計画。陸中宮古への硬派のオマージュ。
 藤田幸右 管理人

田老「第一防潮堤」の今(12=その後)

2013年10月15日 | どうなる田老

前回の 写真<C> 以降、現場ではひきつづいて工事が行われている。このページの写真も、前回同様、ブログ<被災地ガイド 岩手県宮古市田老地区を案内する男の想い日記>から借用して掲載するものである。



現地では足場が組まれテントが張られて、コンクリートを流し込む型枠の木製外枠リードもすでに立ち上がっている。同時進行的に、パラペットの下辺を受ける「受け床」も整備され、パラペットの最初の鉄筋も既存防潮堤躯体に差し込まれる形で整然と並び始めている。


「受け床」、斜め鉄筋などの形成

 

 

写真 1

<被災地ガイド 岩手県宮古市田老地区を案内する男の想いブログ>
189 防潮堤かさ上げ工事の進捗状況 2013.9.21 より 

 


図 1

図 1 は、写真 1 の断面図であり、写真 1 の解説である。まず図で黒く塗りつぶした「パラペットの受け床」は、写真では灰色に写っているが、素材は単なる荒砂なのか? 土砂なのか? セメントを混ぜたコンクリートなのか? よくわからないところである。更に既存土砂、礫石との境界線の形状もどうなっているのか… (…岩手県庁から入手したパラペット一般設計図ではこの「受け床」に関する説明も、図面もなかった。写真を見ての私の命名でありデザインである…) 「受け床」は形状的には作らざるを得ないものであろうが、実際はもっと薄い設(しつら)えかもしれない。いずれにしてもいかにも弱々しく頼りないものに見える。素材、デザインのほか填圧などの強度、丁寧さも心配…。ちなみに、まだ出来ていないパラペット本体の輪郭は、図では点線で示している。

写真では黄色のぼんぼりがついており、図では赤い線で引いた最初の鉄筋について、既存防潮堤コンクリート壁に差し込まれている部分については、県庁の設計図では「接着系あと施工アンカー 穿孔(せんこう)径20mm 穿孔深さ200mm」とある。直径2センチ深さ20センチの孔(あな)をあけて(穿て=うがって)鉄筋を埋めて既存防潮堤とパラペットをつなぐアンカーの役割をさせるという事である。孔のあと処置はセメントで接着させる意味だろうか?  パラペットの足もとにできる三角部分もコンクリートで埋め込むとして、しかし、この鉄筋が津波に対してアンカーの役割を果たすとはとても思えない。津波に対応しているのではなく単にパラペット自体の転落を支えているだけだ! ── その場限り、本末転倒のこのような設計思想がまかり通っている…

 

  鉄筋組みの完成形

 

 

写真 2

<被災地ガイド 岩手県宮古市田老地区を案内する男の想いブログ>
197 かさ上げ工事の進捗状況 2013.9.29 より



図 2

順次こうして鉄筋が組み上がっていく(写真 2 、図 2 )。設計図によると横断鉄筋は図と写真で見る通り40センチピッチで組まれる事になる(前にピッチ30センチと書いたがそれは宮古土木センターの説明の間違い。設計図では40センチ)。縦断的には図の赤い鉄筋のこぶの場所で6本の長い鉄筋(長さ10メートル)が渡されて縦・横がつながる。鉄筋の面から見ると、鉄筋が十分に入ってこのパラペットは、一見頑丈そうに見えるが、それは海側に面した約半分の部分であって向かって右のウデには鉄筋が入っていない。

パラペット自体の設計にも問題があるとして、しかし、よくよく観察して、よくよく考えなければならない事は、パラペット自体の強さの事ではなく、多くの人がすでに分かっている通り、前々からこのシリーズで指摘しているパラペットと田老「第一防潮堤」の既存躯体部分との取り合いの部分であり、接合部分の危うさである。そのあまりのもろさ、あまりの弱さ、あまりのはかなさの事である。それは田老「第一防潮堤」を象徴する天頂のコンクリートブロックの撤去から始まり、天板の斫り(はつり)工事、そして一体型でその強固さを誇ってきた防潮堤本体の重機による自滅的破壊へと進んだのである。パラペット工法は河川堤防の工法であり津波対策工法としては通用しない事も検証された。木で鼻をかむということわざのように、どの接点を見てもパラペット工法と防潮堤は結合せず融合しなかった。今まで述べてきたように、その指摘を数え上げ、その崩壊の様相を描き分ける事は情けない哉たやすい事である。

 

コンクリート型枠の製作


写真 3

<被災地ガイド 岩手県宮古市田老地区を案内する男の想いブログ>
211 防潮堤かさ上げ工事の進捗状況 2013.10.14 より

写真 3 はパラペットの型枠。鉄骨を内蔵して、この中にコンクリートを流し込んでパラペットを成形する。10メートルスパンで総延長1070メートルを完成させる。右側の黒い部分は陰ではなく、パラペットの陸側ウデのための空間。


 


 払拭できない崩壊の懸念

図 3

図 3 には写真にある型枠は描いていない。図 3 は実線で示したように、ほぼ完成した内部構造図のつもりである。岩手県県土整備部の一般設計図とも一致しているものと思われる。ただしこのシリーズの当初から懸念しているコンクリート対コンクリート等の接点の部分は懸念のまま未解決で持ち越されている。20センチのかさ上げのためと称して既存防潮堤の一部を重機で削り、そこにパラペットをはめ込もうとしたものであるが設計自体に無理があった。その行政的背景や政治的思惑の闇もあった…。既存コンクリートとパラペット、既存コンクリートとパラペットの鉄筋、既存填圧土砂とパラペット受け床、パラペットとパラペット受け床のそれぞれの接点ないし接線、接面(図 3 の空色の部分)の融合はできていない。いうならば、パラペットは防潮堤本体から浮いてかさ上げの高さをかせいでいるにすぎないのである。このかさ上げ工事を引き金にして、将来の(否、すでに今から!)この防潮堤の崩壊は必至である。寒暖、風雪などの自然現象は一様にかかって亀裂や剥離を進める。しかし有事のその時、津波の力はパラペットに対して平均にはかからない。 


(13)につづく


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コメント (1)
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