さて、ちょっと間が空きましたが、「グロインペインシンドロームの治療」の続きです。
前回のお話は、
恥骨の骨膜を痛めた私。
この状態から組織の効率的な治癒を、治療によって機能を正すことで求めるだけに止まらず、
T先生お勧めの「スロートレーニング」を運動療法として取り入れることで
「筋の連携の正常化(リクルートメントパタンの正常化)」に加え、
組織の回復に関与する種々の「ホルモン分泌の促進」を得ることで
積極的に損傷部位の回復と筋肥大を獲得するという試みが効を奏した
というお話でした。
そして今回はその続きとして「もう一つの工夫」のお話。
不利な状態でも競技力の向上を狙うために行った工夫についてお話ししますね。
積極的な回復に結び付いた「スロートレーニング」でしたが、
冷静に考えて、怪我の回復と筋肥大(期間も短いので恐らくはわずかな筋肥大)だけで、
重量挙げの競技動作を全くせずに試合当日を迎えたとしたら、
記録の更新は難しかったでしょう(というか不可能です)。
しかし、頭の片隅には『このどん詰まりの状況にあってもあわよくば…』という邪念も燻っていたわけです。
我ながら諦めが悪いですよね(^^;)
で、これに対する明確な答えはS先生とH先生からいただきました。
何をしたのか?
答えは「出来る範囲(の角度)でウエイトリフティングはする!」というもの。
具体的には「ボックススナッチ」「ボックスクリーン」でした。
これらを自分にとっての85~90%の強度で行いました。
え?
全然わからない!?
そりゃそうですよね(^^;)
スナッチやクリーン&ジャークは下記をご参照ください。
これを「ボックス」という木製の台の上にバーベルを乗せたところから行うのが「ボックススナッチ」「ボックスクリーン」です。
なんとなくイメージが付いたでしょ!?
この時の私は、下までしゃがみ切ると股関節が痛んでしまう状態だったので
バーベルを台の上にのせて、深くしゃがまなくていい状況を作って練習をしたということです。
これだったら痛まない角度での運動で「瞬間的な筋力発揮」に関する運動要素を安全に補うことができます。
さすがはS先生とH先生です。
こうして、ケガを負った最中であっても消極的にならずに「攻めの姿勢」で試合に向けた練習をすることができたことが自己ベスト更新の勝因でした。
この経験から、普段から患者さんに言い続けていたことの正しさを身をもって体験することができたのも収穫でした。
この仕事を始めたきっかけが自身の故障でしたから、
故障で苦しむ方の助けになる仕事をしようと、精進してきたわけです。
それがケガに負けてたら話になりませんからね。
どんな事からでも前向きな学びを、と常々考えて臨床に当たってきましたのでね。
あらためて、故障で苦しんでいる患者さんに言いたいですね。
どんなに暗くて寂しい夜にあっても、明けぬ夜というものはありません。
どん底でも諦めることはない。
と。
痛めた時には以下のルールを守りましょう。
・痛めてしまったら、痛む運動は避ける
・患部の強化は患部の状況に沿って痛まない運動の中で行うこと
・患部への刺激は腹7分目にとどめる
・十分に回復のための休養を取る
・元気な部分は元気な部分に合わせてしっかり追い込む
と、いうわけで、
今回の経験で今までの引き出しに「ホルモン分泌の促進」という新たな引き出しが加わりまして
これからの臨床がまた楽しみになりました。
やはり現場から、そして自身の体験を通して得る学びは深くて濃いですね。
ホンや活字からのお勉強ではこうはいきませんからね。
以上、「グロインペインシンドローム」を通じて気付いた事でした!
おしまい。