国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
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そんな仮想の音楽喫茶

レスターは軽やかに飛び跳ねる

2010年10月27日 | マスターの独り言(曲のこと)
レスター・ヤングといえば、ジャズにおけるビックネームの1人である。
だが、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーなどビ・バップ組の
さらに一世代上なわけだから、かなり録音時代も古い。
今日取り上げる『レスター・リープス・イン』も1936年を最も古くし、
1939年、40年と今から60年以上前の録音である。
そのころからこんな音楽が存在していたこと自体が不思議なことのようにも思え、
またそれを2010年の時点で聴いているというのは、
時間を超越した何かがあるかのように思える。

さて、タイトル曲の「レスター・リープス・イン」を僕が知ったのは、
チャーリー・パーカーの『ライブ・アット・ロックランド・パレス』がきっかけである。
こちらの演奏は凄まじすぎる。
録音されたのが1952年とパーカー晩年の録音であるが、
火を噴くようなパーカーのアルトサックスは、
エネルギーに満ちあふれて、来るもの全てをなぎ倒そうとする
高速で回転する竜巻のような演奏である。

一方で曲の冠になってもいるレスター・ヤングの演奏はどうか?
このアルバムはカウント・べイシー楽団との演奏で、
レスター・ヤングがフューチャーされたものである。
パーカーと比べてしまえば一聴両端なのだが、
非常にゆったりとしたリズムに、軽くテナーがのる。
テナーはアルトよりも音が低く、空間的な広がりがある。
録音状態の悪い中でもレスターのテナーは生き生きと跳ねるようなリズムを作り出す。

どちらがいいかなどを比べるのは愚の骨頂であろう。
パーカーをカミソリのような鋭い演奏とするのであれば、
レスターは鈍く光るような短刀の如き軽やかな演奏である。
それこそ「リープス・イン」の「飛び跳ねる」や「飛びつく」の意味に相応しい。
豊かな含みのあるテナーの音は、今の世にも健在なのだ。