国道122号沿いの音楽喫茶 『ドルフィン』

さぁ、音楽を聴け!
コーヒーは自分で沸かして用意して…
そんな仮想の音楽喫茶

ハンコック、独立後の迷い?

2010年10月07日 | マスターの独り言(アルバムのこと)
「その時」は一生懸命なものだが、
後で思い返してみれば「あぁ、ちょっとやっちゃったかな?」という
後悔は誰でもあるだろう。
ただ当人は大真面目にそこから何かを汲み取り、
次のステップへとしていったのだからやっぱりスゴイ人ではあるのだろう。

ハービー・ハンコックの『クロッシングス』
マイルスに与えられたエレピがすっかり板に付き、
またエレキ時代の初期のマイルスバンドで活躍をしてきたこともあり、
いつの間にかハンコックも自信がついてきたのだろうか。
マイルスバンドを離れ、作った自分のバンドもマイルスのようなエレキバンドだった。

その頃のハンコックにはいろいろとあるのだが、
そうした背景もハンコックの音楽に影響を及ぼしている部分は多々あるのだろう。
マイルスの下で培った演奏の技術と音楽の形式。
そこに精神世界をミックスすることでハンコックは一段進む。
それまでのブルーノートに録音してきたようなジャズっぽいジャズではなく、
より粘りっこく、かつリズミカルに跳ねるような旋律。
明確なリズムの波が単純な心地よさを与えてくれる。

『クロッシングス』のA面に相当する部分は、「眠れる巨人」という組曲になっている。
タイトルはカッコイイ。
でもどこかマイルスの影を感じずにはいられない。
それを受け入れつつもよりリズムを強調していくのは、
この後に「ヘッド・ハンターズ」というこれまたファンクなアルバムを作り出す。
前段階になっているのだろう。

でも一方でそれが独創的なものかと言われるとちょっと疑問が生じる。
それはこの後のハンコックの迷走ぶりにも表れているのかもしれない。
マイルススクール出身というプレッシャーに振り回されているような気がするのだ。
ある意味ハンコックのギリギリラインアルバムがこの辺りのアルバムなのかもしれない。