すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

新庁舎建設を住民投票で止めるには② 拘束型住民投票の可能性

2011年05月25日 | 日記
 これまで実施されてきた住民投票条例が投票されても、その結果が無視されることが多いことは、昨日、ブログで書きました。 では、どうすればいいのでしょうか。法律論なので、ちょっと読みずらいと思いますが、我慢して読んでください。

 首長が議会で多数派を抑えている場合の常套文句は「議会制民主主義を否定することになる」です。これで無視し、チャンチャンと住民請求で出た条例を否決してしまうんですね。でも皆さん、なぜ、議会制民主制が登場したか、考えて欲しいと思います。

 ギリシアのポリスやローマでは、市民による直接民主制でものごとが進められていました。現在もスイスやアメリカの自治体では、直接民主制が取られています。民主主義の基本は直接民主制であることには争いがありません。
ところが、支配する領土が広がり、国民が多くなると直接民主制で、ものごとを決めていくことができなくなりました。そこで発明されたのが選挙です。選挙そのものは直接民主制で、その選挙で選ばれた人が統治するのが議会制民主制です。
 
 モンテスキューは「選挙で選ばれた人が決めるから、その結果は正当であり、選挙は正当性契機である」と考えました。ルソーは「主権者たる国民が権力を選挙によって授権する。選挙は権力化契機」と考えました。選挙の本質に違いがあり、論争が続いてきました。

 日本国憲法は議会制民主制を採用したうえで、国民投票、リコールや住民投票のような直接請求など間接民主制の制度も取り入れています。議会制民主制も、時代とともに硬直化を始めたので、原理原則に立ち返り、補完する意味で、直接民主制の制度を取り入れたと考えるべきでしょう。では、住民投票という結果に、首長や議会が拘束されるのでしょうか。

 私の恩師である阪本昌成さんは、広島大学を退官され、九州大学、立教大学の教授を経て、現在は近畿大学法科大学院で教授をなされています。専攻は憲法学、法哲学です。阪本先生は「住民投票の結果に法的拘束力を持たせることは、議会制民主主義の上から無理がある。だから、尊重義務を規定するのが通例だ」といわれました。そこで、「住民投票条例の中に拘束力のある項目を持たせれば、条例は議会の議決を経ているので問題はないのではないですか?」と質問したんです。そうすると、「それはそうだ。イニシアティブによる住民投票条例の請求の場合、条例制定の可否は議会の議決にゆだねられているので、君が言うように、そこで可決された住民投票条例は議会によって制定したものと解することもできるから、条文の中に、以後の市政を拘束する規定があっても、議会制民主主義との間に問題がなくなるかもしれないね」と言っていただきました。そして、「これは憲法制度の問題でもあるが、地方自治法や行政法学の立場から住民投票について考えてみることも大事だと思う。君の先輩になる広島大学大学院社会科学研究科の横山信二教授が専門なので、最先端の議論を聞いてみてはどうか」とアドバイスをいただきました。

 そこで、横山先生に電話しました。あっさり、「憲法が定める地方自治の主旨、地方自治法の構造からは、法的拘束力のある条項も設けることはできますよ」と明確に言ったいただきました。そして、「一般的に尊重義務で止めているのは、議会の反発を抑え、住民投票条例を可決させやすくするという意味しかありません」とも言われました。「尊重義務で止めることは、市長や議会に説明責任を果たさせる効果しかない。もちろん、説明責任は一般的な説明ではなく、内容にわたる詳しいものでなければならないが、政治責任に止まり、破ったとしても、辞職や賠償などの法的義務を負うものではありません」と、現在、住民投票に厳しい見方を披露されました。しかし、横山先生は住民投票の可能性を否定しておられるわけではありません。
 「地方の統治の仕組みを考えると、直接民主制が採用できなくなったので、間接民主制が採用れたという歴史的経緯があることに気がつく。個別の事案については、住民発案(イニシアティブ)による住民投票は、地方自治の仕組みとして議会制民主主義を補っているという意味を考えれば、むしろ、今回の庁舎建設の可否を問う住民投票条例の場合は、法的拘束力のある条例を設けるべきだろう。ただし、これは個別の案件の場合で、一般的な案件、たとえば、基本条例のようなもので、包括的、一般的に拘束力を持たせる条例や条項を設けることは、議会制民主主義の否定につながるので、妥当ではない」と場合分けをして明快に説明してくれました。
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