すなば たかひろ

「元気で人に優しい鳥取」を取り戻すため、県議になった元新聞記者の挑戦記。みんなで鳥取の未来像を考えましょう!

兵庫県森林動物研究センター(1)

2014年08月23日 | 日記

 県議会農林水産商工常任委員会の県外調査で8月22日、兵庫県丹波市にある兵庫県森林動物研究センターを訪問しました。センターの土岡正洋次長が挨拶され、田口彰業務部副部長から説明を受けました。以下は説明の概要です。

 

【1】センターの概要

 鳥獣被害が深刻化したことからワールドライフマネージメント拠点として平成19年4月24日に開所。実験フィールドは126ヘクタール。ワールドライフマネージメントとは、科学的な調査研究に基づき、「生息地管理」「個体数管理」「被害管理」を状況に応じて組み合わせ、「人」と「野生動物」と「自然環境(生息地)」の関係を調整すること。兵庫県農政環境部の地方機関であり、兵庫県立大学自然・環境科学研究所内の施設として位置づけている。

 所長は兵庫県篠山市出身の霊長類学者、児童文学社として有名な授河合雅雄・京大名誉教授。研究統括監は国立科学博物館長や山階鳥類研究所長を務める林良博さん。専門は、動物資源科学、獣医解剖学、寄生虫学、人と動物職員は森林環境や生態系、野生動物学の専門家を全国公募し、県立大学の教授、准教授と兼務の研究員5人と、農林業普及指導員や獣医師ら技術系県職員から選任した森林動物専門員6人を中心に構成される。専門員は鳥獣の専門家ではないので、研修を受けて勤務している。研究員の調査研究に基づき、専門員が対策や施策立案に当っている。

 

【2】柵を中心にした被害対策

 兵庫県の鳥獣被害は9億7000万円。野生動物が増えたことに加え、農地や集落が野生動物の餌場になっていることが問題。対策は①柵の設置②駆除③不要果実など餌をなくす④山際の藪など動物が隠れる場所をなくすなど環境の改善⑤追い払いの5つある。柵の種類は設置方法によって①集落柵②グループ柵③個別柵の3つ、柵の種類によって①電気柵②金網柵③ワイヤーメッシュ柵④ネット柵⑤トタン柵がある。

 

 電気柵は正確に設置し、維持管理できれば、非常に有効だ。ちょうど動物の鼻が触るところに柵線がくるように調整すること、また、1年を通して電気を流すことで、動物の学習効果を利用することが大事だ。また、また、電圧を定期的に測定し、電圧が下がらないように維持管理することも重要。農閑期に電気流さないのは柵の効果を削ぐことになる。

 集落柵から農地ごとのグループ柵に変えて設置した集落は、作業効率が上がった。集落先は規模が大きく、それを全部管理するのは大変。農家が減る中では協力して設置できるグループ柵は有効だ。また、資材の工夫も大事。積雪対策でグラスファイバー製のポールを使い、碍子をクリップ式に変えたことで、撤去も楽で、積雪にも強い柵を実現した。

  金網柵とワイヤーメッシュ柵は、定期的な見回りと補修が肝要。点検は月1実施すると効果が高い。ルートの設定も大事。最短コースを通りながら尾根まで張り、斜面は雪で倒されないよう場所に設置しないといけない。柵の両側にトタンを敷き、雑草の繁茂を防ぎ、動物が隠れる場所をなくすと効果が高い。

 ワイヤーメッシュ柵は加工が簡単で、費用が安い利点がある。集落柵として使われることが多いが、道路や河川から流入する危険がある。田んぼの山との境に設置したが、それでも防げないので、集落間にも埋めて設け、個別柵も併用した。

 ワイヤーメッシュ柵と目隠しになるトタン柵を併用するとイノシシに効果がある。また、ワイヤーメッシュ柵の上に電気柵を併用すればサル対策に有用。地域の実情に合わせ、柵の設置方法、種類を選択することが肝要だ。

  イノシシの力は想像以上に大きい。潜り込む隙間があれば鼻を入れ、柵をこじ開けて進入する。シカが飛び越えるのは斜面など柵との高低差が小さな場所。設置場所を考えることが大事。そうした場所を動物はいつも見つけ、侵入の機会を伺っている。犬に追われるなどパニックになると柵に体当たりするなど命がけの行動をとることがある。

 

 電気柵は管理が重要。碍子は山側に向けて取り付け、柵線が山側に貼ること。動物は支柱に関心を示すので、触れないようにする方がいい。雨の流れで柵の下に隙間ができる、あるいは、柵の下を動物が掘り返すなどで、効果がなくなる。維持管理が重要だ。

 

【3】サルの生態と被害対策

 群れで生活する。メスは群れでずっと暮らすが、オスはおとなになると群れを離れる。鼓動範囲は約50平方キロ、7キロ四方。様々なものを食べる。6~7歳で出産し、3年に1回出産するが、餌が良ければ毎年繁殖する。運動能力が高い。数センチの凹みでも壁を登れる。判断は視覚情報中心。成人男性に対しても逃げず、向かってくる。

  兵庫県は14~15群の958頭が生息。絶滅も心配しながら被害を防ぐ必要がある。ワイヤーメッシュ柵の上に電気柵を設けるのが有効。ワイヤーメッシュ柵を登ると、電気柵に触れ、感電する仕掛けだ。

 【4】植林地被害対策

 森林林業センターが研究している。苗木を単木的に守る資材を設置する方法と、造林地毎に植生防護柵を設置する方法がある。植生防護柵は谷などを含むため、なかなか完全に囲めず、防ぎきれていないのが現状だ。

  最後に、研究と対策の融合性をどう取っているか、研究成果の情報提供の仕方はどうしているか、生息地管理や個体数管理の詳細、予算などの質問にお答えいただき、意見交換などもしました。

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