ととじブログ

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暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出 / 彩瀬まる

2019-08-13 03:31:22 | 本/文学
暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出
著者:彩瀬まる
発行所:新潮社
新潮文庫
2019年3月1日 発行

2011年3月11日、14時46分に発生した東日本大震災。
その直前、同日午後一時過ぎに宮城県、仙台駅にいた著者。

本文より、
『その日私は、二泊三日の東北旅行の二日目を楽しんでいた。同行者のない、気ままな一人旅だ。前日は松島に泊まり、おいしい牡蠣料理と、優しい鴇(とき)色に染まる夕暮れの海景色を堪能した。今日は仙台から友人の待つ福島県いわき市へ移動する。』

仙台駅から常磐線で福島県のいわき市へ向かっている途中、新地駅で地震が発生する。
新地駅は福島県沿岸の最北部、宮城県との県境近くに位置している。
この地は、地震発生後、津波に飲み込まれた。

著者は…
もちろん、震災から無事生還した。
生還したからこそ、このルポを書くことができたわけだ。

非常に不謹慎な表現だが、まるで、よくできたフィクションのようだ。
あるいは、計算しつくされたゲームのようでもある。
モンスターやラスボスがいないドラクエのあらすじみたいだな、と。

仲間と出会い、間一髪津波から逃れる。
しかし、原発事故が発生、余震による更なる津波の警報、避難所へ。
錯綜する原発事故の情報。
残り少ないガソリンで避難所から脱出、仲間との別れ。
ゴーストタウンのような街からの帰宅手段を模索する。
最初の作戦は失敗するが、ある情報を得る。
「あの街で鉄道が復旧しているらしいよ…」

しかし、言うまでもなく現実に起こった震災であり、著者のリアルな体験と、その時々の心の動きが綴られた、本物のルポだ。
実は私も被災者の一人だ。
旅行者だった著者と被災地の住民だった私、被災した場所も違う。
全く違う被災体験なのだけれど、読んでいると涙があふれてきて仕方がなかった。

単行本が刊行されたのが2012年2月25日。
7年の時を経て、新たに「文庫あとがき」を加えて刊行されたのが本書。
「文庫あとがき」を読み、被災地の住民だった私とは違う形で、今でも著者と震災はつながっているのだな、と感じた。


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