ととじブログ

書きたい時に書きたい事を書いている、あまり統一感の無いブログです。

1Q84 / 村上春樹

2021-03-09 00:18:38 | 本/文学
『1Q84』は村上春樹の12作目にあたる長編小説で、単行本は2009年から2010年にかけて、文庫本は2012年に刊行された。

二つのストーリーが並行して進んで行くという構成で、これは『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』に続くもので、その3番目の作品ということになる。

二つのストーリーが並行して進んで行く作品を描く難しさは、二つのストーリーがそれぞれ面白くなければならないし、かつ面白さが‘同程度’でなければならないというところにあるのではないかと思う。
面白いストーリーを度々中断され、その間にもう一方の面白みに欠けるストーリーを読まなければならないというのは、読者にとって辛いものだ。

この二つのストーリーがそれぞれ同程度に面白く、さらには最終的に二つのストーリーが融合するという点では、3作品(『世界…』『海辺…』『1Q84』)の中で最も成功しているのではないかと思う。

個人的には、村上春樹作品としては、一番好きなのが『羊をめぐる冒険』で、次が『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。
『1Q84』がその次かな? といったところだ。

ちなみに時代背景は1984年。
だから、例えば、昨今のように、防犯カメラが要所要所で目を光らせネットワークにつながっている中で、青豆が従業員を装いホテルの客室に侵入して中にいる男を殺害するような事は、とてもできそうにない。
また、スマートフォンやSNSで街行く人々が皆撮影者かつ発信者という中で、世間に顔をさらして時の人となったふかえりが潜伏している部屋を出て買い物に出かけるような事も、やはりできないであろう。

しかし不思議と時代的な古臭さは感じられない。
と同時に、1984年という時代を彷彿とさせるものもあまり無い。
また、舞台は主に東京で、首都高、高円寺、中央線等々東京に含まれる要素が多々出てくるが、東京臭のようなものもあまりない。
細部を修正すれば、2021年のロンドンを舞台にしても成立してしまう、ある意味、とても村上春樹らしい物語だと思う。