ととじブログ

書きたい時に書きたい事を書いている、あまり統一感の無いブログです。

やがて海へと届く / 彩瀬まる

2019-08-14 04:35:07 | 本/文学
昔、あるきっかけがあって、夫婦でお互いの死について話をしたことがあった。

自分が残された方だった場合、相手の死を簡単に受け入れられるものではないと思う。
しかし、自分が死んだ方だった場合を考えるとどうだろう?
もし残された相手が深い悲しみや絶望の中で生きているのを見たとしたら、それが何よりも辛い事ではないだろうか。
生きている間はどこまでも味方であって欲しいけれど、死んでしまったらもういい。
残された方は、自分の幸せを第一に考えよう。
お互い、相手の死にエネルギーを浪費することなく、残った自分の人生を好きに過ごしていこうよ。
と、そのような結論に至った。

死がある程度正常で、安らかなものだった場合は、そのように振る舞い、生きて行けるかも知れない。

では、そうではない場合は?

例えば、こんな場合。
妻がレイプされ身体をボロボロにされ、その後まだ息があるうちに、生き埋めにされて殺害された。
そして、その犯人が法に裁かれることなく、生きているとしたら。
死んでしまった者は帰ってこない。仕方がない。自分は自分の人生を楽しもう。
そのように割りきって生きていけるだろうか?

あるいは、こんな場合。
災害で犠牲になった人々。
その一人一人に対して残された人々は。
死んでしまった者は帰ってこない、仕方がない。自分は自分の人生を楽しもう。
そのように割りきって生きていけるだろうか?

現実の世で満ちあふれている、理不尽な死。
想像を絶する恐怖や痛み、そういう死に対しては?

そんな問いかけに挑んだのがこの作品。
彩瀬まるが描いた『やがて海へと届く』。

単行本は2016年2月に講談社から、文庫本は2019年2月に同社から刊行されている。

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坂田莉咲(※)推奨により。
「坂田莉咲のSHOWROOM」は2020/03/31に終了した。



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2023/03/09 最終更新


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