小品日録

ふと目にした光景(写真)や短篇などの「小品」を気の向くままに。

安岡章太郎 「ジングルベル」

2006-12-24 23:39:12 | 小説
街に流れる「ジングルベル」の音楽に翻弄される「僕」。
駅前の食堂では、苦手なはずのウナ丼を無意識のうちに注文してしまい、泣く泣く食べた挙げ句に、値段の高さに驚かされます。
さらには、電車も止まって、彼女との待ち合わせには2時間も遅れてしまうなど、散々な目に遭うことに・・・
自ら事態を招いているようなところもあって、帰りにミカンをたくさん買ってしまうところも笑えます。
不実な恋人や公職追放で仕事のない父親などをめぐり、生きていくことの徒労がユーモラスに描かれた短篇です。

「セント・ニコラスのおじさんよ。あなたにはかないません。どうせ僕は橇に縛りつけられたトナカイです。」

講談社文芸文庫『ガラスの靴・悪い仲間』で、14ページ。

ガラスの靴・悪い仲間

講談社

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そういえば、徳田秋声の「仮装人物」の冒頭では、サンタクロースの仮装をさせられた主人公が、煙草に火をつけようとして髭が燃えてしまったというエピソードが語られています。

どうやら、クリスマスには、ちょっと滑稽な、苦みのある出来事が似合うようです。

仮装人物

講談社

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