創発企業経営

15年目の会社の経営、事業報告

創発企業経営 (13)

2012年07月16日 | 経営
また少し横道に逸れますが、1999年に始まった日産リバイバルプランは、企業再生或いは国家財政の再生にも利用できる見事な手本のように思います。   その時の資料をPDF で読むことができます。

まず過去の業績不振の原因が分析されています。

  1. 利益追求の不徹底
  2. 顧客指向性の不足
  3. 機能、 地域、 職位横断型業務の不足 機能、 地域、 職位横断型業務の不足
  4. 危機意識の欠如
  5. 共有ビジ ョ ン や共通の長期計画の欠如 共有ビジ ョ ン や共通の長期計画の欠如

これは改善可能であり、再生の可能性大と評価しています。 多くの企業であいまいにされがちな問題をきちんと分析しているので、どういった問題を改善すればよいか明確です。 

そのうえで、コミットメントとして以下を掲げています。

  1. 2000年度 黒字化
  2. 2002年度 営業利益 4.5% 以上
  3. 2002年度 1999年度比で有利子負債を50%削減 (1兆4000億円を7000億円に削減)

これを実現するためのリストラ策として以下が挙げられています。

  • 人員削減 : グロ ーバルレベルで21,000人
  • 3か所の車両組立工場閉鎖。 2か所のユニッ ト 工場閉鎖。
  • 車両プラットフォーム数を現行の24から15に削減。
  • 3年間で 20%の購買コ スト 削減
  • サプライヤー数を50%削減 (1145社から600社)
  • 自動車以外のノンコア事業の株式及び資産の売却。

こうした政策によるコ ス ト 削減効果として1 兆円、ノンコア事業の資産売却で5000億円が見込まれており、これだけで有利子負債1兆4000億は帳消しにできる内容でした。   実際、コミットメントと呼ばれた期限付きの目標は、全て前倒しで約1年早く全て達成されました。

ゴーン氏自身は北米のミシュラン社の部門経営再建とルノーでの不採算事業所の閉鎖や調達先の集約などにより、黒字転換の実績があり、再建請負人として実証済みの経営者とも云えます。

これを見て、東京電力ではなぜこういうプランが出てこないのか? と思う人がいるのではないかと思います。

電力事業は競合のいない独占ですから、負債が出たら値上げして使用者に負担を求めればよいと考えるなら、日本政府の国家財政が悪化したら、増税して国民に負担を求めればよいという考え方とよく似ています。

当たり前のことですが一家の家計でさえ、苦しくなったら最初にするのは節約です。 人口が減少する日本には、なくてもよい団体、施設や設備はいくらでもあると思います。

またルノー日産のCEOになったゴーン氏は27歳ミシュランフランスで工場長を、31歳でブラジル・ミシュラン社の社長を経験しています。 日本企業でこの人事を実行できる企業はないでしょう。

こうした問題の根本は同じ理由であると思います。 それは既に権益を得てしまった人がそれを手放そうとしないからです。

経済学者の故森嶋通夫氏は1999年に出版した 「なぜ日本は没落するか」 の中で次のように記しています。

現在の日本が被っている障害は、ある日本人が私に教えてくれたように、複雑骨折の状態であるというべきであろう。 そしてどしてそういう大怪我をしたのかという原因を探求すれば、それは心因性の --- よくいえば慢心、正当には過剰貪欲による --- 過食症だといえよう

この本が出版された同じ年、一企業の過食症の治療のために招かれたのは、海外で経験を積んだ経営者(指導者=インストラクター)だったという見方をすると、この事例は多くの示唆に富んでいます。

コメント
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