企業の変化のマネジメントには大別すると2つのアプローチがあります。
一つは計画的変化(Planned change)で、通常トップダウンで実施されます。 組織階層のトップは、組織全体を俯瞰する立場にあり、組織の向うべき方向を定められるという考え方に基づいています。
もう一つのアプローチが 創発的変化(Emergent change)で、トップダウンとは対照的に組織の末端或いは境界(現場、前線)で、既存の業務を少しずつ継続的に改善するための意思決定や行動に焦点が当てられています。
計画的変化は、創発的変化に比べて理解しやすく、多くの人に受け入れられやすいアプローチと考えられます。 例として企業による業績発表や中長期プランの発表といったIR活動があげられます。 投資家向けに企業のトップが業績改善の計画を発表を行うのはよくあることです。
株主は企業が変化しているという目に見えるサインを望んでおり、その象徴としてトップ主導の計画により業績が好転することを期待しています。 以前は、トップ主導の計画がポジティブに受け止められればそれだけで株価が上昇しました。
そのうち、投資家は実際に計画が予定通り達成されるケースが少なく、多くが計画倒れに終わっていることに気づき、こうしたトップダウンの発表にはより懐疑的になるようになりました。 やがては、予想通りの発表では株価が好転しないケースが増えてきました。
計画的変化は理論やルールに基づくもので、多くの人に理解しやすいのに比べ、創発的変化はとらえどころがなく理解しにくいアプローチです。 そもそも、創発という言葉自体が理解しがたく、理論化が難しいと考えられます。 このBlog のタイトルの「創発」には組織変化の枠組みを制御可能な組織を通じて社会変化の枠組みに応用していく道を探ろうという意図が込められています。
創発企業経営という記事の一番最初に記したとおり、変化予測が難しい現代においては、計画的アプローチを実行するのは非常に困難であり、現場の混沌や創発を理解し、理を見つける洞察が求められています。
ここからは組織変化の枠組みのみならず、計画的変化と創発的変化の歴史上の事例を幾つか挙げてみたいと思います。
近代、最も良く知られた計画的変化の理論と実例は共産主義ではないかと思います。