情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

朝日新聞社に対する大学教授の手紙

2005-10-03 05:01:43 | NHK番組改編事件
今日の貴社の朝刊に掲載された「『NHK報道』委の見解」とそれを受けた貴社秋山社長の談話を読み、私は、これでは、NHKと政治の問題が、朝日新聞の取材あり方論にずらされたままで幕引きになると、非常に危惧しています。「新生プラン」をめぐって、NHKの体質に視聴者の厳しい視線が注がれだした矢先に、貴社のこのような腰砕けは情けないかぎりです。

ただ、今日の貴社の朝刊に掲載された第三者委員の個人ごとの見解を読みますと、1月以降の貴社の報道、とくにNHKと政治の関係を報じたことを高く評価した委員が少なくありません。また、全委員が、テープをとることに一定の理解を示しています。

ところが、貴社も含め、今日の大手紙は、第三者委員会が「朝日新聞の取材の不十分さを指摘した」、「朝日新聞も非を認めた」という大見出しを打っています。そして、これらの見出しが一人歩きして問題の本質が覆い隠されようとしている状況です。私は、これは大いなる問題のすり替えだと考えますが、そうした流れが生まれた大きな理由として、今回も第三者委員会が、「『政治的圧力』があったかを裏付けるうえで、『呼び出し』の有無は重要な要素である」という認識をしていることが挙げられます。
しかし、政治家が「呼び出した」のか、NHKが「自からの判断で出向いた」のかをズ-ムアップするのは、論点そらしに他なりません。そもそも、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の議員に、「予算説明の時には、必ず聞かれるから」と言われ、ETV問題の事前説明の準備をするよう促されたからこそ、NHKは予算説明と関係のない放送総局長を同行して安倍氏(ら?)のもとへ出かけたわけです。そういう背景事情を考えれば、NHKが(阿吽の呼吸で)「自主的に出かけた」のか、「呼びつけられた」のかにこだわるのは、問題の核心をそらす議論です。

伝え聞くところでは、貴社の経営陣は販売部数の減少を気にしているそうですが、ある販売店主は、「朝日が謝るたびに部数が減る。不祥事には謝罪も仕方がないが、NHK問題では朝日に理があるのだから徹底して闘ってほしい。一時的に落ちても、それは必ず盛り返す。権力と闘う朝日を読者は支持してくれる」と言っているそうです。私の周りにも、これと同じ意見の人が少なくありません。こうした読者の声が貴社の経営陣に届かず、「部数が減ることはすべて不祥事」という観念が支配しているとしたら、メディアのトップに立つ人物の見識として嘆かわしいことです。

ジャーナリズムの一翼を担う組織として、貴社はメディアと政治の距離を問いかけた今回の取材と報道の意義に確信をもち、間違っても、逆切れした政治家やNHKの威圧的対応におもねて、ペンを曲げることがないよう、強く要望します。


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