情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

警察が取調べを録画できないのは、身柄拘束状態を利用した情報収集ができなくなるから?!

2009-03-14 11:17:17 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 警察庁刑事企画課所属の担当者が、警察時報4月号において、取調べの全面可視化(取調べ状況をすべて録画すること)に反対する理由として、「組織犯罪の検挙、情報収集が困難になる」と説明していることが分かった。組織犯罪という限定をつけてはいるが、このような説明を聞くと、取調べの現場では、「情報提供すれば、今回の件は故意ではなく、過失だったことにしてやるから…」などというやりとりがなされているのだろうな…と想像してしまう。逮捕された者から第三者の犯罪に関する情報提供を得ること自体は、本人が任意に話すのであれば、問題はないだろうから、本来は、録画してもかまわないはず…。それが録画できないというのは、明らかに、通常の聞き方をせず、私が想像するような取調べが行われているからではないのだろうか。

 問題の論考は、「警察における取調べの一部録音・録画について」と題するもの。可視化(録音・録画)することによって、「取調べの機能が大きく阻害される理由」として、

1:被疑者との信頼関係の構築が困難となる
 (時間をかけて被疑者と信頼関係を構築することで真実の供述を引き出すことが重要だが、録画・録音すれば、被疑者が第三者に知られることを意識して、人間的な信頼関係を構築することが困難となる、ということのようだ)

2:組織犯罪の検挙、情報収集が困難になる
 (取調べでは犯罪の組織的背景を聞き出したり、内部告発的な供述を得ることも重要であるが、被疑者が取調べの状況を第三者に知られることを意識するようになれば、仲間からの報復や組織内での信用の失墜を恐れるようになり、そうした供述を得ることも極めて困難になる、ということのようだ)

3:第三者のプライバシーが侵害される
 (犯罪立証には必ずしも関係のない、被疑者等の第三者のプライバシーに関する情報が不必要に公判において晒される危険もある、ということのようだ)

の3つを挙げている。


 しかし、1~3のいずれの理由に対しても、利益を誘導したり、騙したりして、自白の任意性に問題があるような取調べをしさえしなければ、録音・録画したものを再生することはないのだから、まったく問題がないと反論することができる。警察側の可視化反対には説得力がないというほかない。

 で、それだけで放置できないのは、警察庁企画課が、2のような主張をすることだ。この主張は、冒頭で述べたとおり、利益誘導型取調べがなされていることを警察が自ら認めるようなものだと思う。

 「なぁ、お前、あの池袋の殺人事件、知ってるだろう。あの事件に関係ある者を知っていたら教えてくれ。教えてくれたら、この件は不起訴にするよう検察官に頼んでやるから」

 ていうのはまだましなほうで、

 「お前、チャカ(けん銃)扱ってる奴を知らんか。最近、上がけん銃を押さえるよううるさいんや。いやね、チャカ所持で挙げる必要はないんや。ただ、ロッカーなんかで見つかってもいいんや。どうや」

 などと言って、けん銃の押収を演出するとか、

 「お前の近所で殺人事件があったやろ。そのときに、黒い服を着た男性がいたのを目撃した人がいるんやけど、お前見ていないか。この捜査に協力したら、この件はうまくやるように検事さんに言ってやれるんだけどなぁ」

 などと言って、見てもいない事件の証人にさせてしまうとか、いろんな状況が頭に浮かんでくる。

 可視化できないのは、できないなりの事情があるわけだが、警察庁企画課担当者の論考で、警察の違法捜査を覆い隠したいということがその事情の1つであることが明白となった。

 こういう取調べを前提としつつ、裁判員になることについて、あなたはどう考えますか?



★なお、まったく違うテーマですが、ミサイル迎撃ミサイルSM3がいかにばかかしい税金の無駄遣いとなりかねないかを図解した記事(http://blog.goo.ne.jp/tokyodo-2005/e/345c8c44e718241df327374b94934861)を書いたことがあるのですが、そのときSM3の高度が議論になりました。このたび、産経新聞が「SM3の迎撃可能な高度は100キロ程度」と明記したため(http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090313/plc0903130000000-n3.htm)、私の図解が正しい可能性が大きくなりました。費用対効果の点からいってもまったく不明確なこんな兵器に1兆円もかけようとしている。



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★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
★「News for the People in Japanを広めることこそ日本の民主化実現への有効な手段だ(笑)」(ヤメ蚊)
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