tokyo_mirage

東京在住・在勤、40代、男。
孤独に慣れ、馴れ、熟れながらも、まあまあ人生を楽しむの記。

そこは蛍光灯じゃないだろう

2017-11-29 16:59:24 | 雑感
最寄駅近くに「ガールズバー」と札の下がっている店があった。

それまで定食屋があったはずの場所で、へえ、ガールズバーに変わったのか、と思いながら通り過ぎた。
ちらっと見えた限りでは、定食屋そのままの内装を居抜きで使っているようだった。

後日再び同じ場所を通ると、また定食屋に戻っていた。
あれ、ガールズバーは?と思ったが、あまり気にかけずに通り過ぎた。

後日また同じ場所を通ると、再びガールズバーになっていた。
よく見ると定食屋の看板も壁際に残されている。
それでわかった。同じ店を昼は定食屋として使い、夜はガールズバーとして使っているのだ。

定食屋は年配の女性がひとりでやっていた。入ったことは1回しかない。
焼き魚定食を頼んだが、味噌汁の具が豆腐なのに隣に冷奴の小鉢が置かれていて、
なんともセンスのない店だなあと思い、味も相応にパッとしない感じだし、
値段も安いわけではないので、それ以後足は遠のいていた。

ガールズバーは店の前に客引きの女の子が立っていたことがあるが、
素人っぽさが抜けない、というより、素人そのものとしか思えない子だった。
もしかしたら定食屋の老婆の孫娘とかかも知れなかった。
ヒマを持て余した孫娘が手っ取り早く小遣いを稼ごうと思い立って、
祖母の営む定食屋店舗の「夜の空き時間」に目をつけた…みたいな。

全体に素人のママゴトのような仕事がありありと見え、
僕はこの手の店には行ったことがないので「1時間飲み放題3000円」というのが
割安なのかどうかもわからないが、
(いや、きっと割安なんだろう。でも、酒は出てもまともな肴は出ない気がする)
こんな店に入る物好きな客がいるのだろうかと、通りがかるたびに店の中を覗き込む。
(考えてみると、ガラス扉・ガラス窓で外から様子が窺えてしまうのも
ガールズバーのありようとして望ましくないだろう)
パイプ椅子同然の簡略な椅子、天板が薄くて脚も細い、いかにも軽そうなテーブルなど、
安普請な家具が見える。「寛げるラウンジ」の雰囲気は皆無。

しかし何より「違うだろ」と思うのは、室内が蛍光灯で照らされていることである。
蛍光灯の灯りというのは、なぜだろう、特に冬の寒い時期は、空間の貧相さを際立たせる。
ヨーロッパが照明に蛍光灯を嫌うのもよくわかる。
思えば、僕が1回だけここで定食を食べた時も、決して裕福とは言えない家庭の
古ぼけたダイニングに紛れ込んだような、居心地の悪さをおぼえたものだ。

流行らない定食屋の「居抜き」を使い回そうという「手抜き」は、いかにも浅知恵だ。
せめて「照明だけでも換えてみようかな?」と気づけるちょっとした知恵が欲しいところだ。
なんとも“残念な”ガールズバーだが、ある意味、目が離せない。