巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
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夢追い人は世人を弄す

2018-01-14 11:58:35 | 
夢追い人は世人を弄す

明が暗に変わって
僕の心は一点に集中す

誰にも均しい世界ではなかった
分け与えねばならなかった

君の夢、僕の現実
君の自由、僕の不自由

彼の地を目指す君
此の地を慈しむ僕

すべてが噛み合ったときに
僕達は旅立つべきだろう

あるものすべてが幻だったとき
君の強靭な魂は肯定を止めぬのか
僕は後悔し、懺悔するのだろうか

あゝ、空高く舞う無数の燕達が
ピーピー、ピーピーと
帰巣のサイレンを鳴らす

遠くに臨む山々の冬枯れた木々は
ただの盗人と変ず

一陣も立たぬ風が僕の心を揺らす

君の蛮行を、愚行を赦し
僕の変心を諦め、僕の改心を称えたまえ

君の全人格を肯定した虚偽の塊

精神が旅立ったとき肉体はどこに宿る
僕の心は既に此処にはなくて
抜け殻の体躯が道端に転がっている

亡霊だ
再生不能なスクラップ

誰かを助けることは誰かを殺すこと
今、僕は僕の魂を抹殺せんとす
君は死にゆく僕を心で嘲りながら
やや焦り、死を促す

君は鬼に変ず
僕は自らを偽り、騙す
君は確信す、革新す
そして僕は鬼籍に入る

抗わぬ僕を羽交い絞めにする君は永遠旅人
命潰えても歩みを止めぬ亡者

タイムリミットはもうじきだ
焦る君は死してゆく僕ともろともに
ゴールテープに辿り着かぬのか……

あゝ、夢の中で生きよ
僕の本心に耳を貸さぬ君は鬼だ
鬼畜と化す君は永遠を見ぬ

散る……

あゝ、紅の花が木棺を埋め尽くす

薔薇色の未来を夢見た君は
自ら望んで木っ端微塵になっちまった

すべてが吹き飛んだ
彼の地に辿り着かぬ魂の欠片
君の妄信は永遠なり

定置した錨に大波は力及ばぬ
山嵐は燕の帰巣を阻まぬ

夢追い人がまたひとり逝った