巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
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そう遠くない未来に

2018-01-10 02:14:55 | 
そう遠くない未来に


生まれてきたことが罪なのだ!

君はすべての悪感情を超えんと欲す

いつか見た麗らかな紺碧色の海は遠く
君は暖かで柔らかな真綿のような洞穴を抜け
黄土色の埃が舞う大地に根を下した

夜空を星々が最高密度で埋め尽くす

嗚呼、あれがシリウス!
嗚呼、あれがプロキオン!
嗚呼、あれがベテルギウス!

近頃はすっかり見えなくなっちまった
埃だらけの霞がかった空が
一瞬だけ澄んだような気がする

この一日
一年、二年、三年、四年、五年
僕は誰に何を祈ろうか
君は巫女になり
僕の運命を嘲るのだろう


生まれてきたことが手遅れなんだ!

もうあの母なる海には還れない

ふるさと

僕が愛した
君が捨てた

もう戻らない家族団欒
誰も彼も都会で真っ黒に汚れちまった

大切がいったい何なのか
気付くまであっという間に四半世紀

君は悠久の時が流れる中で
ふるさとが荒れ行く姿を黙殺した咎を
ただ独り忘れ去り、居直り、嘲笑い
何食わぬ平然な顔をして
何の赦しを乞おうとしているのか


生まれてきたことが罰なのだ!

だから誰も彼もが
大人も子供も、その中間も
いつか、どこかで、道を誤る

でも、それでいいじゃあないか
生まれてきちまったんだから

嗚呼、残酷なり
嗚呼、生とは実に残酷なものだ

過ちはすなわち人間の性

君を追うすべての霊魂は僕が赦すから
あの川の土手に生えている
可憐な土筆(つくし)を摘んできておくれ
季節外れの御遣いは
単なる嫌がらせでしかない

君がそこにあるはずのない土筆を探して
一年、二年、三年、四年、五年
さすれば君はきっといつの日か
ふるさとをまた再び愛し
甦らせるはずだから

嗚呼、人の情けが身に染みる

外は存外に真っ暗だ
さあ、家に帰ろう