美を忘れちまった蒔絵師よ
君は過去を取り戻せまい
深い銀灰色の外は寒気と微風が渦巻いて
それでも君は去らんとするのか
今日の夕空は紅色にもならぬというのに
好きなやうにすればよいじゃないか
勝手気ままな人生だ
人の手を借りようとせぬ君は
いつか大切な人を排するだろう
それが過ちかどうかなど
単に愚かな問いに過ぎない
君はおろか人間の理解さえ遥かに超える
今宵は紅色も群青色もなく
漆黒の夜闇が現れたね
今日も明日も変わらぬ人間活動
移り変わるのは四季、そして自然美
痛めつけられた心、治癒せよ
すべての終わりと始まり
少しばかりの痛みは刺激になるだろう
もう少々耐えていようじゃないか
美を忘れちまった蒔絵師は
その技法の要不要さえ既にわからぬ
どうやら道を誤ったようだ
僕の目的地は何処にある
答えは案外と身近なところにあるものだ
駆け出しの頃の師に尋ねるがよい
君が取り戻すべきは隣人の愛だったりする