内外政策評論 TheOpinion on Global & Domestic Issues

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Policy Essayist

長寿化を前提とした就業・社会モデルへの転換が必要(その1)

2015-09-28 | Weblog

長寿化を前提とした就業・社会モデルへの転換が必要(その1)

 厚生労働省の調査の調査によると、2014年の日本人の平均寿命は女性86.83歳、男性80.50歳となり、いずれも過去最高を更新した。男女平均でも84歳を越える。また試算によると、2014年生まれの子供では、75歳まで生きる人の割合は4分の3( 女性87.3%、男性74.1%)となっており、更に90歳でも女性でほぼ半分、男性でも4分の1にも達するという。

 長寿化は喜ばしいことであるが、年金や健康維持等の社会福祉費は増加の一途であることは明らかであるので、少子化、人口減による国民の税負担能力の低下傾向を勘案すると、生産・就労モデルや年金給付・社会福祉モデルの転換は不可欠になっていると言えよう。

 1、65才で‘老人扱い’は早過ぎる

 欧米等では、年金対象年令近くになると退職し、トレーラーハウスで気楽に各地を旅して回りたいという人もいる。だが日本では65歳で定年退職、生産活動からの卒業となると、一つは所得が無くなることへの不安や不自由さを感じさせる一方、生きがいを求める人が多いようだ。平均寿命は上記の通りであるので、平均的に男性では定年退職後約15年間以上、女性では22年程の期間があり、その間「高齢者」として生産活動から卒業させられ、その多くが事実上就職の道を絶たれることになるので、社会との関係が疎遠になってしまうのが現実のようだ。1、2年程度は良いが、15年から22年間生産活動から遠ざけられ、所得の道を絶たれるのは長過ぎる。その上、70から74才までが「前期高齢者」、75才以上を「後期高齢者」とされる。しかし65才、或いは70才になったからといって人生これで終わりだと思っている人は少なく、多くの人は社会との関わり合いを望んでいるようだ。65才になると‘たそがれ人生’になり、‘終活’に明け暮れるのでは折角の経験が活かされない。意識の面だけではなく、寿命が延びている分肉体的にもエネルギーは残っているのだろう。

 1990年代以降の日本の着実な長寿化により男女平均の寿命が現在84才以上であることを考慮すると、外見上、或いは本人の意識の上で「高齢者」或いは老齢者と言って差し支えないのは、75才以上、将来的に長寿化が更に進む場合は80才としても良いのではないだろうか。75才以上の人口に占める比率は現在11%強、就労人口の約22%に当たるので、国民が支えなくてはならない「高齢者」の比率としてはまだ高いが、容認出来る数値と言えよう。長寿化に伴って年令区分や社会認識が追い付いていないと言えそうだ。基本的には、日本社会が年令意識、年長者尊重意識(シニオリテイ・コンプレックス)が強いこともあって、年令により国民を区分し、行政上も区分化、制度化する傾向が強過ぎ傾向にあるようだが、寿命自体が延びているので、それに伴い社会、行政意識が変化して良いのではなかろうか。

 このような観点から、年齢による呼称、総称を極力少なくし、当面70才以上を統計上“年長者”と総称し、前期・後期高齢者という年齢差別的な区分を廃止することが今日の長寿化社会に適しているように見える。強いて言うならば、所得の上でも体力や意識の上でも社会保障上の配慮が必要となる75才から80才以上前後を「高齢者」、「お年寄り」と呼称することは止むを得ないのかもしれない。社会のためにそれぞれの立場で貢献されてきた年長者に敬意を払うことは美徳であろうが、年齢だけで人を区分し、老齢者、老人、お年寄りと総称して労働市場や社会から遠ざけるのは老齢別視となる。

 また報道等においても、容疑者や犯罪者等の年令を表記するのは良いが、その家族や友人、関係者の年令まで表記し、また女優タレント等の年令をその都度表記するのは、日本特有のことであり、年齢差別、年齢別視とも見られる。多くの場合視聴者の関心でもないし、映像で伝える場合は、視聴者が判断出来ることが多いので、個人情報やプライバシーの観点からも行き過ぎとも見える。

 2、定年年齢の弾力化―「働ける間は働ける社会」の構築   (その2に掲載)

 3、定年年齢と切り離した年金制度             (その3に掲載)

 4、人口減を見据えた行財政モデルと統治機構の簡素化    (その4に掲載)

(2015.9.4.)(All Rights Reserved.)


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