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大阪府内の市町村教委に学校道徳教科書の採択に関して要望書と公開質問状

2018-05-05 15:04:58 | 道徳教科書 中学校
大阪府内の市町村教委に対して、以下の要望書・公開質問書を提出しました。

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  2019年度使用中学校道徳教科書の採択に関する要望書と公開質問状

 貴教育委員会の教育への日頃のご尽力に敬意を表します。
 さて2019年度から使用される中学校道徳教科書の採択に向けて、貴教育委員会も準備作業を進めておられることと存じます。今年の中学校道徳教科書採択は、道徳の教科化にともない初めて行われるものです。戦前の修身教育によって教育勅語の「徳目」を子どもたちに徹底して教え込み戦争に駆り立てた反省から、道徳の教科化には強い危惧が現在も存在しています。文科省の中学校道徳教科書検定でも、教科書会社は学習指導要領に明記された「徳目」を全て網羅するように求められました。私たちは、道徳の教科化によって子どもたちの心の中を国家が統制し評価することになるのではないかと強い危機感を持っています。そこで、貴教育委員会が、どのような基準で道徳教科書が採択していくのか、子どもたちの教育に直接携わる教員の意見をどのように反映していくのか、注視しているところです。
 私たちは、日本国憲法に体現される基本的人権、平和、民主主義、そして近隣諸国との友好関係を深める観点から、公正かつ民主的に教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望するとともに、以下の公開質問への回答をお願いいたします。なお、貴教育委員会からの回答は公表を予定しています。ご多忙と思いますが、回答を5月末日までにお願いします。

【要望書】

1.採択関係者が「利害関係者」でないことを厳密にチェックしてください。
 教育委員、選定委員、調査員については、「利害関係者」でないことを、事前に厳格にチェックしてください。昨年の小学校道徳採択から、大阪市では教育委員からも「利害関係者ではない」ことを宣誓する「誓約書」の提出を義務づけました。貴教委でも大阪市と同様に教育委員からも「誓約書」を義務づけてください。
 
2.人権、平和、共生など日本国憲法の精神を尊重した調査研究と採択を行ってください。
 貴教育委員会が作成する「教科書を調査研究する観点」には、従来から「人権の取り扱い」が項目に含まれています。大阪には、問題や在日外国人問題、障がい者問題などさまざまな人権に関わる問題があり、教育課題としても積極的に取り上げられてきたところです。道徳の教科書採択に当たっても、人権、平和、共生など日本国憲法の精神を重視する観点から調査研究をおこない、そのような観点から評価の高い教科書を採択してください。

3.偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を調査の観点に入れないでください。
 教育基本法には、「愛国心」に繋がる目標がありますが、そこには「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。
 しかし、中学校道徳教科書検定結果を見れば、「日本美化」「日本人はすばらしい」と言った内容がことさら強調されている教科書があります。これらは偏狭なナショナリズムにつながっていくも
のです。調査の観点に偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に入れないでください。

4.「考え,議論する道徳」を重視する調査の観点を設定してください。
 新学習指導要領では、「考え、議論する道徳」が強調されています。しかし、教科書の中には、教材の前後に「学ばせたい徳目」に誘導する設問を設けて、子どもたちの学びを特定の価値観に誘導しようとするものがあります。
 また、中学道徳教科書で検定合格した8社中5社で「愛国心」等を段階別で自己評価欄を設けています。段階評価は、文科省の「徳目」にそって、自分の「内心」を評価させるものです。中には、徳目への「理解」だけでなく「態度や行動」まで自己評価させる教科書もあります。出版社によって段階評価の仕方は多少変わりますが、どれも子どもたちの「内心」を縛るものになることは間違いありません。
 子どもたちは、自由に発想し、幅広く考え、意見交換する中で自分の考えを深めていきます。自由な発想は、「考え、議論する道徳」の基になるものです。特定の価値観に誘導する教科書はそれらに逆行しています。
 
5.採択にあたっては子どもの実態をもっともよく知る教員の意見を尊重してください。
 ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」には、「教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」と明記されています。「教員の意見を尊重した採択」は、国際基準です。従って、教員が調査員をつと
める「調査員報告」や「学校意見」を集約する形で選定委員会「答申」を作成し、それに基づいて採択してください。

6.選定委員会「答申」や、「調査員報告」、「学校意見」では教科書の長所・短所を記述するようにしてください。
 いうまでもなくどんな教科書にも長所と短所があります。しかしながら近年、「特長(すぐれた点)」しか書けない形式にしている地域があり、これでは教員の意見は伝わりません。また優劣がわからないため正しい判断もできません。
 
7.選定委員会「答申」では、専門的な調査研究の結果として「順位付け」「絞り込み」を行ってください。
 一部マスコミが「文科省は採択にあたっては教員による順位付けや絞り込みを禁止している」と報じ、また同じような解釈をしている一部の教育委員会がありますが、これは誤りです。下村文科大臣(当時)は、国会答弁で「(教科書採択は)教員や保護者を初めとする調査員による綿密な調査研究を行った上で、適切に行われる必要がある」(2015.4.22)と述べ、文科省初等中等教育局長も「調査研究の結果として何らかの評定を付し、それも参考に教科書の採択を行うことが不適切だというものではない」(同日)と述べています。選定委員会「答申」の「順位付け」や「絞り込み」は、教育委員会での公正で公平な採択を行うためにも必要な資料となるものです。

8.教科書採択過程を市民に公開してください。
 教科書採択に関わる資料は、公文書として所有した段階で速やかに公開してください。特に教育委員会議、選定委員会の開催日と議題を事前に市民に周知し、傍聴の条件と機会を拡大してください。配付資料はその都度公開してください。教育委員会議、選定委員会の議事録を作成し、速やかに公開してください。
 教科書採択には市民の関心が高く、また教科書会社も傍聴に来ることから傍聴人数を制限している場合、市民が傍聴できないという事態が起こります。そういうことがないよう、傍聴希望者全員が入れる配慮をお願いします。
                                      
     以上
 
【公開質問状】

1.貴教育委員会の「採択基準」「調査の観点」には、「愛国心」を醸成する項目を入れる予定でしょうか。
   ①「愛国心」の観点を入れる予定がある。
   ②「愛国心」の観点を入れる予定はない。

2.調査員の構成について
   ①現場教員を任命している。校長・教頭・指導主事は含まない。
   ②できるだけ現場教員を任命しているが、校長・教頭・指導主事も含む。
   ③現場教員は少ない。
   ④現場教員はいない。
   ⑤その他(                     )

3.教科書の調査研究に各学校・教員はどのように関わっていますか。
   ①学校意見を集約している。           
   ②教員の意見を集約している。
   ③教員研究会の意見を集約している。
   ④意見集約を行っていない。

4.選定委員会「答申」や「調査員報告書」はどのような形式で作成されるのでしょうか。
   ①各社の長所と短所を記述している。
   ②各社の特長(すぐれた点)をまとめている。
   ③その他(                        )

5.選定委員会の「答申」はどのような方法で行う予定ですか。
   ①順位付けをして答申する。
   ②何社かに絞り込んで答申する。
   ③全社の長所と短所を文書表記して答申する。
   ④全社の特長(すぐれた点)を文書表記して答申する。
   ⑤その他(                      )

6.採択において選定委員会「答申」を重視しているのかどうか、その位置づけを教えてください。
   ①選定委員会「答申」を重視する。
   ②選定委員会「答申」を参考にする。
   ③選定委員会「答申」には一切左右されない。

7.教育委員会議では、どのような方法で採択をする予定ですか。
   ①話し合いによって全員一致で採択する。
   ②記名投票(挙手)で採択する。
   ③無記名投票で採択する。

8.選定委員会の会議録作成について教えてください。
   ①議事録を作成している。
   ②審議のおおまかなメモを作成している。
   ③議事録は作成しない。

9.選定委員会「答申」の公開はいつの時点ですか?
   ①「答申」ができた時点で公開請求があれば公開する。
   ②「答申」は採択当日まで公開しない。

10.教育委員協議会(名称は教育委員会によって違う場合がある)は秘密会としておこなわれています。採択過程の透明性の確保の観点から、協議会も議事録を作成すべきだと考えますが、どのようにされていますか。
   ①協議会の議事録は作成している。
   ②協議会の議事録はないがメモは作成している。
   ③協議会の議事録もメモも作成していない。
   ④協議会のような会議は行っていない。

11.採択の教育委員会議で傍聴者が定員を超えた場合、どのように対応されていますか?
    ①できるだけ全員が傍聴できるように配慮している。
    ②傍聴希望者で抽選を行い、定員内の傍聴としている。
    ③その他の対応(                     )

12.傍聴者に配布した資料の取扱いについてどのようにされていますか?
    ①配布資料は回収している。
    ②配布資料は回収していない。
    ③傍聴者には資料を配付していない。

13.情報公開請求に対して、市民アンケート(教科書アンケート)は公開されていますか。
    ①名前、住所を含めて全て公開している。
    ②名前、住所以外は全て公開している。
    ③名前、住所以外にも非公開部分があり、部分公開としている。
    ④公開していない。

14.今年度の中学校採択に関して、府・市議会の議員や市民グループ、個人等からの要望や請願が何件届いているでしょうか。また、それらの内容はどのようなものでしょうか。

以上


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