☆♪☆ 鉄のみゅーじしゃん ☆♪☆

作編曲家・ギタリスト塩塚博のブログ。
近年は駅メロディの作曲で知られています。

フルヴェンの、ブラ4。

2009年02月16日 00時11分28秒 | クラシック音楽
前回12月に、ドヴォルザークの交響曲第8番、通称ドヴォ8の、
ジュリーニが指揮したものにハマッているという記事を書きました。

年が明けてからは、ブラームスの交響曲第4番、ブラ4にハマッています。
曲自体は前から好きでしたが、何か大きな力に吸い寄せられるように、
ブラ4ワールドへといざなわれてしまいました。

ブラームスの4番、とっても、とっても、いい曲です。
ベートーベンの5番や9番、モーツァルトの40番ほどのポピュラリティはないけど、
美しくもの悲しいメロディが聴く者の琴線を掴んでかきむしる、
ブラームス全作品の中でも、そして交響曲という広いジャンルの中でも
ひときわ輝きを放つ、名曲です。

僕は、クラシックで、気に入った楽曲に出会うと、必ず
違う演奏家や指揮者のCDを何枚か買い求めて、
同じ曲のいろいろな解釈や脚色を楽しんでいます。
これまでにも、同じ曲のCDを10枚以上揃えたことが何度かありますが、
この「ブラ4」も、いつのまにか、集めも集めたり、14枚。



上・左から、クライバー81年、クライバーDVD96年、
ワルター59年、バルビローリ67年、ヴァント97年、
2段目、すべてフルトヴェングラー、43年、48年、49年、50年
3段目、チェリビダッケ86年、アバド91年、ベーム75年
最前列、ジュリーニ89年、69年。



まずはわが親愛なるマエストロ・ジュリーニの指揮した作品。
マエストロならではの、美しくてやさしく、歌心あふれる味わい深い演奏。
冒頭の第一音が「無」の世界からゆっくりとやさしく登場してくる。
テンポは例によって遅めだが、これはこれで「あり」。
69年と89年のものを比べたら、円熟、味わい、録音のよさで
やはり89年のものが軍配。だけど、69年のものも悪くないです。



続いて、伝説のマエストロ、フルトヴェングラー。
先生は1954年に亡くなっているので、残された録音はすべてモノラル、
音質も現在の尺度で言えば劣悪であることは覚悟しなければいけない。
だけどそんな録音でも、フルヴェンのみずみずしくドラマティックな演出と
楽曲へのこだわり・愛情は、時代を超えて聴く者を魅了し続けます。
43年、48年、49年、50年の4種揃えた中で、僕が一番好きなのは48年10/24のもの。
音質は悪いけれど、ダイナミクスが奇跡的にリアルな状態で聴ける。
第一音は完全な「無」の彼方から、長ーい時間をかけて幻のごとく浮かび上がってくる。
この深遠なサウンドにいきなりノックアウトをくらう。
要所要所でこれでもかという程のクレッシェンドがドンズバでやってくる。
テンポ運び・緩急も激しく、でも効果的に自在に動く。
結果、どのバージョンよりも抒情的な演奏となり、聴く者は魂の底から揺さぶられる。
興奮する。そして打ちのめされる。



フルヴェンの世界を知ってしまうと、
カラヤンもベームも、ワルターも、そして世間で何故か絶賛されるクライバーも、
淡々と、ヘタするとそっけなく演奏しているように聴こえてしまいます。
(クライバーは81年録音のCDよりも96年のライブDVDの方がいいと思う。)
ジュリーニ以外で僕がこれはいい!!と思うのはまず、
86年のチェリビダッケの日本公演のライブ(右)。
チェリさんは、やると決めた曲に対しては徹底的にこだわり、
自分の思いの丈をすべてぶつけてくる。
オケの団員はかなりしんどいと思うけど、結果としては
ピーンと緊張感の張り詰めた、透徹して隙のない、すごい演奏になる。
チェリさんはフルヴェンの弟子で、若い頃フルヴェンのもとで修行したから、
その意味では現代にフルヴェンを蘇らせた人かも知れない。

でも、もっとフルヴェンの精神を現代のスペックの中で再現してくれたのは、
91年のクラウディオ・アバド指揮のベルリンフィル。(左)
フルヴェン以外の盤の中では第一音が最も長く(ジュリーニより長い)、
テンポやダイナミクスの操り方もとことん気合が入っており、
録音も素晴らしく、これは超オススメ。
アバド自身はフルヴェンをけっして意識したわけではないと思うけれど、
この曲の演奏のいわば王道を、てらわず堂々と清々しく見せてくれたと思います。
ありがとう、クラウディオ。

そんなわけで、僕は毎日この曲を必ず最低二者のバージョンで楽しんでいます。
時間がない時は第1楽章だけでも聴いちゃいます。

皆さん、ブラ4はホントにいい曲ですよ。
これを知らずに死んでしまったら、あまりにももったいないです。
よかったらぜひ聴いてみて下さい。

コメント
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