“名古屋・名駅の商業ビル「名鉄レジャック」の閉館が決まったことを新聞で知りまました。もし、レジャックがなかったら、私の人生は全く違っていたに違いありません。昭和五十五年十月。私はこのビルにあったディスコに通っていました。仕事後の毎週金曜日の夜です。映画「サタデー・ナイト・フィーバー」観て影響を受けたのです。気分はジョン・トラボルタでした。その日、「一緒に踊っていただけませんか?」と、女性が丁寧な言葉で声を掛けてきました。当時十八歳だった妻でした。女性から男性に声を掛ける「逆ナンパ」といパターンだったのです。
妻は看護学生でした。病院に住み込み、午前中は仕事、午後は高校の看護科で勉強、夜も仕事というハードな生活でした。卒業と同時に無事、准看護師に。後に我々は結婚しました。妻は五十代で正看護師とケアマネジャーの試験に合格。頑張り精神は若い頃と変わりません。
現在の私たちには子ども三人、孫三人。私は前期高齢者になり、妻は昨年還暦。今も現役バリバリの看護師です。もしあの日、レジャックでの出逢いがなければ、妻と結ばれることはなかったわけで、閉館はとても寂しい。一度ビルの前で手を合わせようと思います。”(7月26日付け中日新聞)
名古屋市の主夫・室谷さん(65)の投稿文です。名駅の商業ビル「名鉄レジャック」の思い出である。室谷さんはこのレジャックで逆ナンされ、結婚に到り、子ども3人、孫3人の至福を得られた。人の一生にはいろいろな思い出の場所ができる。結婚の機会の場所ともなればそれはもう忘れられぬ場所であろう。そのビルが壊される。寂しい気持ちになるのは当然である。
今名古屋駅近辺は、リニアの開通に向けて、大改造中である。こうしたビルもいくつか建て替えられる。レジャックもその一環である。古くなった人工物はいつか寿命が来て廃棄され、新しいものに変わる。リニアの開通はその大きな起爆剤となっている。寂しく思う人もあろうが、大きな楽しみに思っている人も多かろう。