下の表は、経団連が毎年実施している「新卒採用に関するアンケート=選考にあたって特に重視した点」のベスト5です。1位に挙げられているコミュニケーション能力は、他の項目より一段高く、さらに2004年からずっとトップを続けてきています。
わたしたちの生活は、常に多くの人々とのつながりによって成り立っています。家族や友だちという小さな集まり、学校や職場のように毎日共に過ごす人々、また近所や地域という集団。それだけではなく、ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を活用すると、日本中、世界中の人々と交わることが可能な時代になりました。今まで以上に多様な文化、思想、思いが交わるこれからの社会において、それぞれの考えや思いを伝え理解を深め合うコミュニケーション能力の高さが、さらに求められる時代になっています。
コミュニケーション能力というと、外国語が堪能であるとか、高いプレゼンテーション能力があり、自分の意見をしっかりと伝えることができるというところに視点が行きがちです。しかし、その土台となるのは、相手の考えや思いをいかに上手に聴くことができるかという点です。上手なコミュニケーションは、キャッチボールのように、ことばをやり取りしながら、より良い考えや解決策を見つけ出す手段となるものです。互いの会話の中で、自分の主張ばかりを強引に押し付けるようでは、ことばのキャッチボールはうまくいかず、会話のボールはどこかに飛んで行ってしまいます。相手のことばをボールのようにしっかりと受け止め、相手が取りやすいボールを投げるように、相手が理解できるようにことばを返していく。その繰り返しによって、互いに高まっていくことができるようにすることが上手なコミュニケーションとなるものです。
今、日本の学校教育はアクティブラーニング等を取り入れ、子どもたちが主体的に学ぶことを大切にする方向に大きく転換しています。アクティブラーニングには、発見学習や問題解決学習、体験学習、調査学習等があり、また、教室内でのグループ・ディスカッションやディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの方法とされています。この学習の場で重要なものが、コミュニケーション能力です。一人ひとりが知恵を出し、みんなで話し合いをしながら、より良い解決法を見つけ出していく過程を通して、子どもたちの力を伸ばす学びにつなげていこうとしています。
今、幼稚園で育ちゆく子どもたちにも、コミュニケーション能力を伸ばす土台を作ることが求められています。
コミュニケーション能力の高い人は、小さいうちから親の影響を強く受けているという研究があります。(伸芽会)それによるとコミュニケーション能力が高い人は、幼少期に「挨拶」「子どもの話をよく聞く」「子どもの話に共感する」という3つを特に意識して行っていたとのことでした。「コミュニケーション能力を伸ばそう!」と大きく構えなくても、日常生活の中、これらを意識することを通して子どもの力を伸ばしていくことができるもの。1月号で紹介した「自分の荷物は自分で持とう」等と共に、日々の小さな取り組みを通して、子どもたちを導いていただければと願っています。
(園長 鬼木 昌之)