「十年ひと昔」という言葉があります。世の中の移り変わりが大きく、十年前のことはもう遠い昔のことのように感じるという意味で使われます。ところが、最近の世の中の移り変わりはさらに目まぐるしく、十年どころか、数年で世の中が大きく変わってしまう時代になりました。
テレビの旅番組などを見ていると、空から写した映像がたくさん出てきます。昔だったらヘリコプターを飛ばさなくては撮れなかった風景が、今はドローンを使って気軽に撮ることができるようになりました。また昔は坂道に差しかかると、立ちこぎをしたり、押して上ったりしていた自転車も、電動自転車ができたことで、座ったままスイスイと上ることができるようになりました。そのおかげでお家の方の自転車での送り迎えもずいぶん楽になり、みなさんもいっぱいお世話になりましたね。
みなさんが幼稚園に入園した年、新型コロナウイルスが世界中に広がりました。緊急事態宣言が発表されて、不要不急の外出を控えるよう呼びかけられ、学校も臨時休校になるなど、混乱した中で4月を迎えました。天使幼稚園も入園式を延期し、みなさんの幼稚園生活のスタートは6月になってしまいました。
この3年の間に、テレビ会議システムが充実し、会社に出掛けずに在宅ワークをするケースが多くみられるようになりました。自宅で会社の仕事をするなんて、コロナ以前には考えられないことでした。
学校での学び方も大きく変わりつつあります。以前は、たくさんの事を覚えることができる人がテストで高い点を取り、良い成績を収めていました。でも、これからの時代は、自分の力で問題を解決する力が求められるようになっていきます。そのために、学校ではアクティブラーニングといって、自分で問題を見つけ出したり、みんなと一緒に話し合って解決する方法を見つけ出したり、自分の考えをみんなの前で発表したりする活動が増えていきます。また、学校では一人ひとりがタブレット端末を使う学習も取り入れられています。以前は学校であたり前の風景だった、黒板にチョークを使って文字を書く授業はだんだん減っていくことでしょう。
この数年間だけでも、これほど大きな変化がありました。国際化、情報機器の発達、さらには激しい気候変動に伴う「SDGs (Sustainable Development Goals)=持続可能な開発目標」の推進など、今後はさらに変化が大きな時代になっていきそうです。
これから小学校に進み、中学、高校、大学と学んでいくみなさんは、このような変化が激しい時代を生きていくことになります。
そこで必要になるのが「変化に対応する力」です。その力を養うためには、どこに課題があるかを見つけるための「観察力」や「推理する力」、多くの解決策を考えることができる「柔軟な発想」、また、未来を予想する「想像力」や仲間と議論を重ね協力して取り組むための「コミュニケーション能力」、そして、失敗を恐れずに進めることができる「挑戦力」などが大切です。
神さまはみなさんにそれぞれ異なった力を与えてくださいました。
聖書の中に「タラントンのたとえ」というのがあります。主人が、ある人には5タラントン、ある人には2タラントン、ある人には1タラントンを預けて旅に出ました。5タラントン、2タラントン預かった人はそれを使って、もっとタラントンを増やしました。でも、1タラントン預かった人はそれを土の中に埋めておき、そのまま主人に返しました。主人はタラントンを増やした人には、もっと多くのものを与え、タラントンを増やさなかった人は、すべてのものを取り上げて追い出したというお話です。(マタイ25章14~29)このタラントンは、タレント(才能)の語源でもあり、神さまは一人ひとりに異なる才能を与え、それを上手に活用することを求めているというお話です。
社会を動かすことは、一人だけではできません。社会に生きるみなさんたち一人ひとりの力を集めることを通して、社会を発展させることができるのです。激しく変化していく社会の中で学び続けるみなさん。どんな変化にも対応できる力を養い、人々のために、神さまから与えられた自分の力を発揮して活躍できる人になっていってくださいね。
(園長 鬼木 昌之)