チーム駿河湾

静岡県水産技術研究所の職員が公私を問わず入手した静岡の海、漁業、海の生き物の旬な情報を発信します。

黒潮小蛇行と水温分布

2011年02月04日 | 日記
 2月4日の海況速報をみると、黒潮の小蛇行が熊野灘沖~遠州灘沖を東進中で、御前崎沖の小蛇行の峰からは西方に19℃以上の暖水が波及しています(図1)。
 このような変動がみられる中、当研究所の調査船駿河丸は2月2日から3日間、駿河湾から遠州灘にかけて海洋調査を行いました。このうち御前崎沖では北緯32度30分のst35まで南下し、黒潮を横切りました(図1)。図2はst09からst35にかけて海をスパット切った断面の水温の様子を表したものです。st09、st10では水深300m、st30~st35では水深700mまでの観測のため、それより深い場所はデータがないことに注意して下さい。
 黒潮流軸はst30のやや南側にあり、その北側(岸側)のst09とst10では表面から水深130m付近まで14℃台の一様な水温が広がり、一方、南側(沖側)では水深150m~200mまで19℃台の暖水が広範囲に分布しています。また黒潮との境界になっているst10とst30の間では南北の水温差が下層まで非常に大きくなっています。
 今後、小蛇行の峰が駿河湾沖、伊豆半島沖へ接近しながら東進した場合、黒潮との境界がより岸に近づき、黒潮からの暖水が駿河湾内へ強く波及することが懸念されます。今後の海の変化に注目する必要があります。



「駿河丸」ゴマサバ追跡26時間

2011年02月04日 | 日記
 「駿河丸」(134t)は、1月27~29日にかけて伊豆諸島海域の「大室出し」*でゴマサバのバイオテレメトリー調査を行いました。バイオテレメトリーは、試験魚に取付けた音波発信機(図をご覧ください)が発する音を、船に装備した水中マイクで聴音しながら追跡し、試験魚の自然状態での行動・生態を調べるものです。
 今回の調査では、体長36cmのゴマサバについて約6時間、体長37cmのゴマサバについて約20時間、計26時間の追跡を行うことができました。この2尾は、何れも追跡直前に「大室出し」で釣獲したものです。調査時の感触ですが、夜間より日中の方が遊泳速度が速いこと、夜間は「大室出し」の浅い方に移動する傾向があることが窺えました。
 2回目の調査を2月下旬に予定していて、海山周辺におけるサバ類の行動・生態について興味深い結果が得られれば、このブログでもお知らせしていきたいと考えています。

 *「大室出し」(おおむろだし)⇒伊豆大島の南にある海山で、最浅部の水深は30m程度。有数のサバ漁場でもあり、これから春にかけてマサバの来遊も期待されます。



図 音波発信機(黄色の丸の中)を取付けたゴマサバ
  音波発信機はピンガーとも言い、空中重量は5g程度