チーム駿河湾

静岡県水産技術研究所の職員が公私を問わず入手した静岡の海、漁業、海の生き物の旬な情報を発信します。

へら

2014年11月23日 | 日記
11月5日7時30分、南駿河湾漁協地頭方支所にお邪魔して来ました。刺網によって漁獲された全長30㎝程の“ヘラ”(地元のシタビラメ類の呼称)が水揚げされていました。3尾とも裏側が上向きに置かれていましたが、縁が赤いのでアカシタビラメとお見うけしました。ここではアカシタビラメをはじめ、クロウシノシタ、イヌノシタ等様々なヘラが夏秋を中心に水揚げされます。
食べ方としては、地元では漁師風の刺身の味噌たたきが人気ですが、小型魚の生身を骨ごと薄切りにし、醤油、砂糖、酢をかけ混ぜて食する“背ごし”も、骨の歯ごたえが楽しみます。また、洋風のバター焼きやムニエルも美味しく、お勧めです。シタビラメの仲間は身が決して厚くありませんが、その上質な味としっとりとした身質が好まれ、和洋中様々な方法で調理され、多くの国で食べられている人気魚種です。
以前買ったオーストラリアの雑誌(Guide to favourite Australian Fish(Univerasal Magazines Pty Ltd) ) には、クロウシノシタと同属のSole(Lemon- tongue)の小型魚を姿そのまま、生姜の薄切りとオイスターソース(!)を加えたオリーブオイルで弱火で炒め、蒸し焼きする料理が紹介されていました。火が通ったら魚をいったんパンから取り出して、残った汁に蜂蜜(!)を加えて加熱、それが茶色に変わったらすばやく魚を戻して蜂蜜を絡めるという方法は、蜂蜜産出国として有名なオーストラリアらしい料理方法とは思うのですが、いったいどんな風味になるのでしょうか?
休日の夕方にそのようなことを考えていると食欲がわいてきました。ところが残念な事に、ヘラの漁獲量はこれから少なくなってしまうそうです。来年の夏の旬までおあずけかな?


マメジの水揚げ

2014年11月13日 | 日記
 11月5日、御前崎魚市場でクロマグロの幼魚である「マメジ」を見かけました。クロマグロの幼魚は、地域やサイズによって呼び名が変わり、マメジ、ホンメジ、ヨコワなどと呼ばれます。
 この日は、竿釣り船のカツオと一緒に約100kgが水揚げされており、尾叉長44~51cm、2~3kgで「マメジ」銘柄に仕分けされていました。
 おおむね週1回、御前崎の市場調査に通っていますが、マメジの水揚げに遭遇したのは今シーズン初めてです。市場伝票によると、この週は他の日も同程度の水揚げがあったようです。
 今年7月から、太平洋クロマグロの資源管理強化のため、全国で漁獲モニタリングが試験的に実施されており、沿岸での漁獲量も漁法やサイズ別に月単位で把握することになっています。
 今年は静岡県のクロマグロの水揚げが少なく、沿岸に来遊するクロマグロの幼魚を狙ったひき縄もほとんど出漁機会がないまま終わり、今回のような竿釣り船や大型定置網で散発的に漁獲する程度でした。
 今回の貴重なクロマグロ、競りでも引きあいが強く、同日に水揚げされた他のマグロ(キハダの幼魚)に比べて2倍以上の高値で取引されていきました。


  図1 トロ箱に並んだマメジ



  図2 選別の合間に尾叉長測定

静岡県の蝦五目(その2)

2014年11月13日 | 日記
11月5日7時30分、南駿河湾漁協地頭方支所にお邪魔して来ました。丁度、イセエビが水揚げされていました。
イセエビが夜間に動き回る習性を利用して、夕方に刺網を海底に設置し、翌朝引き上げる漁法で漁獲します。一般的に漁獲量は9月に多く、その後、水温が下がるにつれて減っていきますが、この日の漁獲量10kg/人程度はこの時期にしてはまずまずの好漁です。
このエビは短時間なら水の外でも生きるため、せり前には籠に入れられて市場に並びます。鰓が乾燥しないように、おがくずの詰まった箱に入れて保管すれば、翌日まで生きているので御贈答品にも使えます。
食べ方は、お造り、鬼殻焼き、具足煮、味噌汁等がありますが、想像しただけで涎が出てきそうです。
また、現在、伊豆半島の海沿いの民宿等では“いせえび祭り”の期間中で、晩御飯にイセエビ1尾が付くところもあるそうです。御前崎も伊豆も今がイセエビの旬です!

ルシファー降臨

2014年11月07日 | 日記
調査船駿河丸で静岡県沿岸域のカタクチイワシ卵・仔魚の採集調査に行ってきました。
口径(長径)45㎝のプランクトンネットを水深150m層から表層まで垂直に引くのですが、目的の卵・仔魚よりも他の生物のほうが圧倒的に多く獲れます。卵の情報は静岡水技研HPの“しらす情報”に掲載するので、ここでは、他の生き物を紹介をします。
 まずは、ユメエビ(属名)の仲間です。頭が前方に細長く飛び出した特徴的な外観に惹かれます。属名Luciferは魔王や反逆天使という意味がありますが、全長1㎝内外しかも透明で華奢な身体を持つ生物に対しては少し大げさな名前かもしれません。
 左写真の種類は、体後半部の突起や尾部・生殖器の形態からケフサユメエビ(Lucifer penicillifer)の雄と査定できました。写真右は体後半部の突起がなく同種の雌と推定されます。「日本産エビ類の分類と生態Ⅰ.根鰓亜目(株式会社生物研究社)」によると、広くインド洋と西太平洋の沿岸・沖合に分布しています。
ユメエビ属は小型で多産されないので漁業対象外ですが、シラス船曵網で獲れる“ちりもん”の代表選手としても知られています。