青空、ひとりきり

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お盆関西見聞録その8 バスに飲まれる鉄道

2015年08月24日 22時50分40秒 | 神戸電鉄

(この側線は何のため…?@市場駅)

夕方の粟生駅を出た鈴蘭台行きの普通電車に陣取り、流れて行く粟生線の車窓風景。さすがに朝から蒸し暑い中で動きっぱなしと言う事もあり、ほどほどに疲れて来た…通り過ぎた市場駅、駅は1面1線の片側ホームなのだが、駅の反対側に謎の側線が。保線用の車両置き場か何かかと思っていたが、これは車両の搬出・搬入のためのスペースなのだそうな。現在JR線との接続駅である粟生にも三田にもJRとのレール上の接続はないため、大規模修繕や新造車両はいちいちここまで陸送して、夜中に鈴蘭台の車両工場まで搬入するんだとか。


時刻は既に夕方の6時近くになっていましたが、まだまだ外は明るい。関西と言うのは東京と比べれば西の国だってー事を実感する(当たり前w)。と言う事でもうちょっと撮れそうなので藍那駅で降りてみます。藍那駅は、神戸市北区と西区の間に横たわる山間部にあり、何だかうら淋しい。隣の西鈴蘭台駅の乗降客数に比べれば、1日の乗降客数はたったの100人程度と圧倒的に少なく、とても神戸市内にあるとは思えない駅です。


とりあえずレンズをF2.8のいっちばん明るいのに変えて、撮れる時間まで撮ってみようと思います。正直粟生線の沿線写真と言う意味では少し食い足りなかった。やっぱ半日で撮り歩くにはもうちっと運転本数がないとツライ。藍那駅を通過する5000系の準急新開地行き。夕暮れ迫る裏六甲の峠道を、ヘッドライトを灯して駆け抜けて行く。


同じ場所から振り返って3000系の普通小野行き。粟生線の夕方ラッシュアワー、サラリーマン風情の乗客が目立ちます。粟生線は利用者の一番多い鈴蘭台から西鈴蘭台が単線となっているのがネックでして、鈴蘭台-西鈴蘭台=藍那-川池信号場=押部谷-粟生と細かく単線複線が入り混じる構造となっています。鈴蘭台から西鈴蘭台までが単線なのは、住宅密集地で拡幅の用地が確保出来ないのと、鈴蘭台~鈴蘭台西口間にあるトンネルが広げられないかららしい。


平日では夕方のみに運転される1100系の普通押部谷行き。押部谷は複線区間の終点かつ2面3線の駅なので、そこまでなら列車の本数も押し込みが効くって事でしょうね。押部谷行きの後は、藍那・木津・木幡・栄の4駅を通過する快速列車が追い掛けて、押部谷で普通の乗客を拾い上げるダイヤになっています。


だいぶ暗くなって来た藍那の駅で交換する1100系&1300系。夕方のラッシュ時であればこうして本数も多く、そこそこの乗客も目立つ粟生線。しかしながら、粟生線の苦境は続いている。そもそもが沿線に集客できるような行楽地を持たず、純粋に神戸中心部への一方通行の流動しか持たなかった粟生線。沿線にニュータウン開発が続いた昭和40~50年代は良かったが、今に至り団塊の世代の退職による通勤需要減、そして少子化による通学需要減、高速道路を含めた周辺道路の整備によるマイカーへの遷移、そしてこれが一番の問題になろうかと思うのだが、代替の交通網の整備による乗客離れに苦しめられています。



粟生線沿線からの乗客の逸走を見てみると、押部谷地区からは南下して神戸市営地下鉄の西神中央駅方面へ出る住民が増加している事(神戸市営地下鉄のパークアンドライド推進)、そして一番のライバルである神姫バスが押部谷・栄駅前を通り三ノ宮に直行する路線バス、恵比須・緑ヶ丘駅周辺のニュータウンから三ノ宮へ直行する急行バス、三木駅前から西神中央駅に向かうバスを走らせている事にあろうかと思われる。この神姫バスの神戸電鉄に対する攻撃は凄まじいものがあって、平日の朝7時台でその攻撃っぷりを検証してみよう。

<平日の朝7時台>
●押部谷駅・栄駅~三ノ宮間
神鉄5本(670円)に対しバス10本(620円)
●恵比須駅・緑ヶ丘駅~三ノ宮間
神鉄4本(740円)に対しバス5本(670円)
●三木駅~三ノ宮間
神鉄4本(760円)に対し急行バス3本(690円)

単線区間が多く増発の難しい粟生線、新開地での乗り換えを余儀なくされる粟生線を尻目に、まるで脇っ腹から美味しいところを吸い上げるように神姫バスが阪神高速の新神戸トンネルを使って三ノ宮へ直行するのである。特に三木営業所から恵比寿・緑ヶ丘・押部谷・栄を経由するルート(恵比須快速線)は4列シートの高速仕様のバスを投入しており、神鉄の牙城であった三木市西部のニュータウンの中まで入って行ってこまめに乗客を回収した後、藍那ICから高速に入って三ノ宮に直行すると言うツワモノ。待っている事しか出来ない鉄道と、拾いに行ける自動車の違いといったところか。所要時間についてはほぼ互角ながら、競合路線は微妙にバスの方が安い価格設定にしていると言うのも、マジで神鉄潰しに来てる神姫バスの恐ろしさを感じてしまう…


粟生線内で一番の優等列車である快速。とは言え線内で通過するのは4駅だけ。いっその事、粟生線も乗車人数の少ない中間駅については停車本数を削減して、全時間帯を快速を中心にした所要時間短縮くらい考えてもいいのかもしれないね。カーブと勾配の多い線形では表定速度を上げる事も出来ないから、時短のためには止まらない駅を増やすしかない。鈴蘭台・鈴蘭台西口・西鈴蘭台・押部谷・緑ヶ丘・志染・三木・小野・粟生くらいか。通過駅利用者には泣いてもらう事になるけど、それくらいドラスティックにやらんとこの状況は改善されんかもねえ。
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