青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

かくも厳しき逢坂越え

2015年05月08日 23時41分01秒 | 京阪電鉄

(どちらが先か?@東海道本線上関寺隧道)

上栄町駅から少し大谷駅側に登った場所で、京津線は東海道本線をオーバークロスします。明治13年に開業した当初の東海道線は、現行線よりもっと南側のルートを通って国道1号と161号の交点辺りから逢坂山隧道(665m)で大谷駅方面へ抜け、山科の南側を大きく迂回するルートで京都へ向かっていましたが、その後大正10年に新逢坂山トンネル(2,325m)を掘り抜いて現在の山科ルートへ線路を付け替えました。京津線自体は大正元年に浜大津までの線路を敷設していましたが、新逢坂山TNの坑口南側にあるこの部分をトンネル開通後を踏まえて立体交差にする工事に手間取ったため、前後を分断した形で仮開業をしたと言う経緯があります。ちなみにこの立体交差、東海道本線は上関寺隧道、京津線では蝉丸跨線橋と称しているらしく、トンネルなのか跨線橋なのか何とも不思議な歴史的構造物なのであります。

  

上栄町駅から1駅乗車、京津線の逢坂山トンネルを通って大谷駅へ。浜大津からトンネルの出口まで延々と登って来た電車がサミットを越え、線路が京都へ向かって下り勾配に差し掛かったあたりにある無人駅。ここもお隣の上栄町駅と同様かそれ以上の勾配上にあって、とてもじゃないけど今のフェイルセーフ化した高性能な車両じゃなきゃ危なっかしくて駅なんか作れないよなあと言う感じ。車両の停止位置に「転動防止!(ブレーキのかけ忘れで逸走しちゃダメよ!)」の赤文字標識が置いてあるのも当然だと思います。


サミットを越え、坂を軽やかに滑り降りて来る807編成。大谷駅は、もともと京津線が2両編成だった地下鉄乗り入れ前の時代には2両分ギリギリのホームしかなく、地下鉄乗り入れによる4両編成化に伴いやや浜大津寄りに移されました。GWと言う事もあり、並行して走る国道1号は大津方面に向けて渋滞中…


そんな渋滞する東海道を横目に、スイスイと坂を上って大谷駅へ進入する815編成。ちょうど車両がカーブしている辺りに以前の大谷駅があったようで、画像に映る踏切からそれぞれのホームに上がるスタイルの相対式ホームの駅だったそうな。普段の乗降客はとても少ない山間の駅ですが、休日は旧東海道のハイキングコースへ向かう観光客でそれなりに乗降客も目立ちます。


大谷駅は、国道1号のバイバスを避けて旧東海道側に出入口を設けています。駅前の風景は、クルマが行き交うR1と比べてしっとりとした雰囲気。逢坂山の峠に向かって琵琶湖名物の川魚料理屋が並んでいて、時折ウナギを焼く香ばしい匂いがたなびいて来て思わず店に入りそうになるのだが、新幹線代すらケチってここに来ている私にはとてもとてもウナギを食べているお金の余裕はございません(笑)。

 

駅前の旧道を歩くこと2~3分で、「逢坂の関」跡に着きます。「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関」の歌は、小倉百人一首にも詠まれた有名な歌ですよね。詠み人は蝉丸。蝉丸と言われると、坊主めくりで引くとその時点で負けが確定すると言う最凶の札と言うイメージが強い(笑)。蝉丸でお正月に大事なチョコレートをかっぱがれた苦い思い出が蘇る人、同類ですw


京津線逢坂山トンネル三条側坑口。坑口は旧東海道の橋とセットになっていて、線路に直交せず斜めになった坑口が特徴的。何となく江ノ電の極楽寺トンネルとイメージが被る。ともに古都を走り、併用軌道を持ち、極端な急曲線と厳しい車両限界。思い付くだけでも京津線と江ノ電の共通点は多いような。

 

三条側坑口からトンネルを抜けて来る815編成の京都市役所前行きを。トンネル内は浜大津側から三条側の坑口へ一方的な登り坂になっており、めーいっぱい長玉で圧縮するとその勾配の厳しさが分かります。トンネル額縁の明かり抜きってのはどうしてもこの手のトンネルを見つけるとやりたくなってしまう構図で、芸がないのはご勘弁いただきたく…(笑)。シャッタースピードを1/100くらいにすると800形のLEDが映るのね。

  

京津線逢坂山トンネルの長さは250mほどなので、国道1号を浜大津側へ下って反対側の坑口へ。国道の下の深い掘割から直接トンネルに入ってしまうため三条側と比べて坑口を確認するのが難しいのですが、まートンネル直前のカーブの急なこと急なこと!逢坂山を彩る瑞々しい新緑に包まれながら、電車はここでほぼ直角に向きを変えてトンネルに入って行きます。その編成の折れ曲がり方はまるでNゲージのよう。


大谷駅のホームに置かれたベンチは脚の長さが左右で違う。急勾配の途中にあるから脚の長さが揃ってると水平にならないって事ですね。かくも厳しい逢坂越え、夜をこめて 鳥の空音は はか(謀)るとも、よに逢坂の関はゆる(赦)さじ。
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