青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

少し寂しい春でした。

2021年04月17日 17時00分00秒 | 中央東線

(早過ぎた桜舞って@勝沼ぶどう郷駅)

いつもなら4月の1~2週目が見頃となるはずの勝沼の甚六桜、今年の春の桜前線の異様な速さで、ご多分に漏れず4月を待たずに満開となってしまいました。個人的に、ここの桜は関東甲信越で鉄道と合わせるには一番いい桜かなと。駅からのアクセスだったり、本数だったり、花付き、花色、アングル、どれを取っても平均値が高い。桜の時期、どこで撮ろうか・・・なんて皆さん色々迷うと思うのですけど、とりあえず迷うくらいなら甚六桜に来ちゃいなよって思ってる(笑)。今年もお酒はご法度ながら、変わらず咲き誇るは甲州の桜。駅前の公園に鎮座する、EF64の18号機とともに。かつては中央本線で客貨を問わずエース機関車として君臨していた国鉄世代の生粋の山男。前夜の雨に濡れ落ちた花弁の中で。

雨上がりの朝、公園の水溜まりにその姿を写すロクヨン。引退してここ勝沼にやって来たのが平成18年ですから、早くも15年の時が流れました。保存された当時は藍色がかった国鉄直流色を纏っていたものの、今となっては塗装も外板も傷みが目立ちます。部分的には修理もされているのでしょうけど、そのせいでガワがパッチワークになってしまっているのが気掛かり。なかなか屋根がない場所での鉄道車両の保存は難しいものがあるのでしょうが、現在クラウドファンディングが募られていて、再整備に向けての動きもあるそうです。

ちなみにこちらは、平成20年頃の甚六桜公園。13年前か。EF64も移設1年半程度で、まだまだピッカピカでした。確かこの時は新線の建設に伴って付け替えられた旧大日影トンネルが遊歩道として整備されたと聞いて、そこを歩きに行ったんだっけかな・・・大日影トンネルの遊歩道も、その後は漏水による劣化が著しく危険という事で通行止めになってしまって、そっから何の進展もないんだよなあ。それこそ碓氷峠旧線のような明治の廃隧道を散策出来るロマン溢れる遊歩道だっただけに、再開を期待しているのだけども・・・

あれから時は流れ。国鉄機らしく、側面に並ぶ通風用のルーバー。羽根の一つ一つがピンと魚の鱗のように逆立っていて、昭和の工業製品らしい造形美を醸し出しています。昭和から平成になると、工業製品のデザインってのはこのような突起物はなるべく避けて、表面は平滑に平滑にするのが良しとされる時代になって行ったように思う。ステンレス車のコルゲートなんかも、昭和の時代のクルマの方がゴツゴツして彫りが深く、それが得も言われぬ風合いを生み出していて好き。結局昭和贔屓。新しいものに馴染めない悪癖のなせる技か。

この18号機、新製配置から甲府機関区なのだそうで、そこから、立川・八王子・篠ノ井・JR貨物に移って篠ノ井・最後は塩尻で引退と一貫して中央本線、篠ノ井線系統に殉じたサラブレッド。身なりは褪せてもそこかしこから滲み出る山男の貫禄があります。ここに桜を見に来るたびに、あいさつ代わりに写真を撮って行くのだけど、本当ならこの時期はロクヨンの周りにもたくさんの花見客がいたはずなんだよなあ。余生を送るロクヨンに会いに来る人も少なく、今年は寂しい春だったかもしれませんな。

さくら祭りのぼんぼりだけが風に揺れていた、甚六桜公園。
お色直しをしたロクヨンゼロが、来年は満開の桜の下で見られますよう願ってやみません。


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