青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

皐月遠州緑風記 その3

2014年05月07日 05時42分05秒 | ローカル私鉄

(今年で創業107年@遠州鉄道社章)

遠州鉄道の前身である濱松鉄道は明治40年に設立され、明治42年には現在の路線とほぼ同じとなる濱松~鹿島間を軽便鉄道の規格で開通させました。現在の私鉄の根拠法となる「私設鉄道法」が公布されたのが明治33年、そして地方の鉄道敷設を促進させるため簡易規格での鉄道建設を認めた「軽便鉄道法」が公布されたのが明治43年ですから、いわゆる「地方私鉄」のくくりに入る路線としては開業が相当に早い。鉄道黎明期からの相当長い歴史を持つ鉄道会社って事なんですねえ。今や交通を中心とした遠州のコングロマリット企業として発展した遠州鉄道グループですが、ある意味「何でもやってやろう」と言う意味の遠州っ子気質である進取気鋭の「やらまいか精神」のスピリットが生み出した鉄道会社なのかもしれません。

  

遠江一宮から約30分、西鹿島駅で下車。構内の地下道を通って天浜線から遠鉄にお乗り換え。西鹿島の駅は遠鉄の管理下にある駅で、天浜線は一番駅舎から離れた遠いホームを間借りするのみの存在ですが、遠鉄側には西鹿島工場と車庫があって、赤い電車が狭い構内に隙間なくぎっちりと留置されております。ほどなくやって来た折り返しの新浜松行きは1000系1005編成。1983年に旧型の従来形式から一新されたデザインでデビューし、現在は遠鉄の主力車両。大きなパノラミックウインドウにデカ目の角型ライト、ライト下のアンチクライマーがなんとゆーか一昔前のロボット風w

  
 
最近はどこの地方私鉄も大手私鉄(東急だの西武だの京王だの)の譲渡車輛を使って体質改善を図るのが常でもありますが、遠州鉄道は現在も一貫して自社発注の車両のみで運行を継続していると言う事は特筆すべきでしょう。車庫に憩う遠鉄中興の祖・30形は、前面の湘南窓と特にサイドビューがいかにもビバ日車標準型って感じでたまらない逸品(笑)。嫌でも長電2000や地鉄10020を思い出します。
現在モハ30形+クハ80形のコンビは3編成残存しており、そのうちの2編成は何と吊り掛け車なんだそーな。ぜひ動くところを見てみたいが、主な出番は平日朝ラッシュの4連運行時のみの様子…加えてモハ27+クハ89に至っては赤が褪色して干からびたサツマイモのよーな色になって車庫の奥に押し込まれておりまして、側面を見ると検切れ。どうやら運用離脱のようです(涙)。それにしてもモハ側とクハ側で何でこんなにカオが違うんでしょうね。端正な湘南窓のクハ側に比べ、モハ側の顔面陥没エセ湘南窓に銀ネズのデカ目玉と言ったら…(笑)。

 

西鹿島の車庫をひとしきり眺めた後、電車に乗って遠州西ヶ崎駅にやって来た。島式ホーム1面2線、ホームの端に改札口を配し、改札口からはスロープで東西に走る踏切通路へ繋がっている。遠鉄の駅ではポピュラーなスタイルで、いかにも郊外電車の駅と言った佇まい。西鹿島は車両基地としての機能を持つ駅ですが、ここ遠州西ヶ崎には乗務員の詰所がありまして、車掌&運転士の交代風景を見る事が出来ます。進入して来た新浜松行き2000形、ほぼ見た目は1000形と変わりませんが、駆動装置がカルダン駆動からVVVFに変わっております。


駅の裏には遠州鉄道が開発したであろう遠鉄西ヶ崎マンション。早朝深夜を除いて西鹿島基準で00・12・24・36・48分発の完全な12分間隔のネットダイヤ、こっから新浜松までは20分弱と浜松までの通勤も楽々。遠鉄不動産で価格を見たら2DKで家賃5万円台だそうで、いかがなもんざんしょ(笑)。なーんてくだらない事を駄弁っておりますが、マンションの下の側線に止まっている青い車両…あれはなんですか?

 

この機関車こそ遠鉄の輝けるオールドスター・ED28型2号機。何と1925年(大正14年)にイギリスのイングリッシュエレクトリック社という所で作られた御年89歳の古典電機。新製当時は現在の飯田線の前身である豊川鉄道の電機として導入されまして、豊川鉄道が国鉄に買収されて飯田線になった後、昭和34年に遠州鉄道に入って来ました。カニの目玉のような尾灯、大きな台枠にちょこんと乗った凸型ボディがかわいらしいこの電機、この手の凸型電機では上信電鉄のデキ1なんかの1年後輩に当たります。今なお現役でお供のホキを引いては夜な夜な保線工事に充当されているそうで、無理だと思うけど動くところを見てみたいもんですなあ。目の覚めるようなライトブルーに塗られたボディは下回りの塗装もきっちり入っていて、大事にされているんだなあと感じます。

 

西ヶ崎から再び電車に乗って新浜松方面へ。車窓は何を言う事もないような、普通の浜松市郊外の住宅地の風景ですが、2両編成の車両は吊り革の8割方が埋まる混雑ぶり。さすがGWなのだが、今日は浜松でお祭りをやるらしく法被姿の乗客も目立つ。上島からは高架線に上がり、いよいよもって地方私鉄とは言えないようなハイスペックな景色になって来た(笑)。これで地方私鉄って言うなら東武野田線(アーバンパークライン)の末端区間とかどうなのよ…曳馬駅を出る新浜松行き、左にそびえる建物は浜松のシンボル・アクトシティ浜松です。

  

西鹿島から真っ直ぐ来れば32分、終点・新浜松に到着。ホームは遠鉄百貨店に隣接したビルの3階、改札口は2階にある。相対式ホームですが普段の乗り降りは手前の1番線のみの利用となっており、2番線は使われていない様子。かように近代化された遠鉄ですが、自動改札は導入されておらずICカードも全国共通のものは未対応。「ナイスパス」という独自の非接触ICを簡易改札で使っている、と言った塩梅。


午前中に見ていた風景が嘘のような、大都会・浜松の光景(笑)。事前には全く知らんかったんだが、GWは「浜松まつり」と言う全国的にも有名な祭りが開催されるようで、駅周辺どころか街中がお祭りムード一色の賑わいを見せている。祭りの賑わいを引き立てるような、鮮烈な赤の車体を午後の日差しに光らせて、遠鉄電車が新浜松の駅に進入して来る。電車が着くたびに吐き出される祭りの見物客が、駅前の賑わいをさらに加速させていくようで…

祭りの日 赤い法被に帯締めて 走る電車は 賑わい運ぶ
コメント
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