青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

皐月遠州緑風記 その1

2014年05月05日 06時38分17秒 | ローカル私鉄

(てんはま×あかでんフリーきっぷ)

今年のGWは日巡りが悪いんで、なかなか旅行の日程などは入れにくく。3日の初日は子供にせがまれてこんなモノを横浜まで見に行ったりしてしまったのだが、電車の到着が近付くにつれてワラワラと集まり出した夥しい数のガキ…もといオコサマテツがデジカメ持ってホームを走り回るわアングルに割り込むわでとてもまともな画像を残せる状態になく(苦笑)。次の検査くらいまではそのままの塗装で走るんだろうからいずれその姿はゆっくりと鑑賞したいとは思いますが、側面だけ見ると「えっ、西武の新車って18m3扉なの?」と思わず言ってしまいそうな電車だなあれはw
閑話休題。そんなGWですが「一日くらいお暇を戴いてもいいんじゃね?」と言う事で昨日は終日フリーに。勢いで言ってしまったのでどこ行くか全然決めてなかったんだけど、最寄りICからとりあえず東名に乗ってしまったんでそういや未履修だった遠州鉄道の単位を取得する事に致しました。信州方面もちょっと考えたんだけど、それは圏央道が6月に高尾山まで繋がってからでもいいでしょう。遠鉄だけじゃ時間を持て余してしまいそうだったので、午前中は天竜浜名湖鉄道、午後は遠州鉄道のプランで回ってみます。

  

遠州森町PAのスマートICを出て到着したのは遠江一宮駅。朝の6時半ですからもちろん人っ子一人いません。無人駅ですが、「百々や(ももや)」と言う蕎麦屋さんが併設されていて駅を守っています。天浜線の得意技である「駅テナント化」ですな。駅のスタイルは天浜線によくある上下のホームが互い違いになっていて、その間を構内通路が繋ぐタイプ。互いの運転台を揃えるタブレット交換時代の名残でしょう。春の霞んだ空気の中、朝日がホームのベンチを染める光景を眺めていると何となく落ち着きますね。駅の時刻表で確かめると、7~8時台は30分間隔程度で列車が走る様子なので、沿線で展開してみましょう。

 

駅から車で線路沿いを走っていると、小高い丘の斜面に茶畑が広がる一角を見つける。♪夏も近付く八十八夜の「八十八夜」ってなあ5月の2日の事らしく、季節はまさに新茶のシーズン。新茶の風景と言えばお隣の大井川鐡道が知られてますけど、どっこい天浜線沿線も掛川茶の産地としてつとに有名。掛川茶の特徴は普通の茶葉より時間をかけてじっくりと蒸した深蒸しなんだそうですが、そんな新茶の絨毯の上を、滑るように天浜線の主力気動車TH2100型が走り抜けて行きます。


遠くで新茶の刈り取り作業が始まっている。農作業も写真も朝早くが勝負だ。今度の列車は天竜二俣行きで、光の加減は半逆光。逆光だとアンダーで撮る事が多いのだけど、朝の光に輝く茶畑の柔らかな新芽の色を活かしたいのであえて絞り開放で。どうせ空も白っちゃけてるから逆手に取ってみようってのもあるんだが…こんな雰囲気を露出オーバーと見るかどうかはお任せ致しますが、何となく春霞のフワッとした感じが出たような気がしないでもなくないっすか?(笑)。

 

朝のダイヤが過ぎると列車本数も落ち着くので、天竜二俣方面へ。天竜二俣駅にほど近い製材工場の脇を行くTH。南アルプスで切り出された材木は、天竜川を筏で流されてここ天竜に集められました。現在は浜松市に編入されてしまったけど、旧天竜市は製材の街。そして、旧国鉄二俣線時代から沿線最大の街であり、機関区が置かれていた鉄道の街。今も現役で残る扇形機関庫(登録有形文化財)は前回見て来ましたので割愛しますが、この日も結構な数の観光客が見学ツアーの申し込みをしてましたなあ。富岡製糸場が世界遺産に登録される事になってからゾロゾロ行くような手合いは好きじゃないけど(笑)、まあ産業遺産的な文化財に注目が集まっているとしたら喜ばしい事です。


二俣本町~西鹿島間の天竜川橋梁を行くTH。橋梁の長さ403mはもちろん線内最長、3連のワーレントラスとプレートガーターで「暴れ天竜」の名を持つ遠州の大河・天竜川を渡る。東海道本線の浜名湖橋梁が艦砲射撃で狙われた際の裏ルートとして命を受けた路線ですから、設備面ではそれなりの投資をもって建設された路線ではあるようです。C58が客貨を引いて走っていた往時から比べれば、大鉄橋に単行気動車はあまりに軽い荷物かもしれません。


そんな天竜川橋梁を俯瞰する鳥羽山と言う山に登ってみる。さっきの写真の後ろに見える山なのだが、徳川家康が1575年に武田方の二俣城を攻めんとする際に築かれた山城だそうです。チョメチョメ。二俣城は鳥羽山のさらに北側にある城山って山にあんだけど、1572年に家康さんは城山で信玄に負けてまして(二俣城の戦い)、鳥羽山城はそのリベンジマッチを挑むために築かれたものらしい。大きな歴史イベントでは三方原の戦いと長篠の戦いの間の2~3年間程度、二つの山城を巡って両軍がやったりやられたりを続けたそうな。そんな山城に登って眺めれば、なるほど鳥羽山は天竜川のほとりにそびえる天然の要塞。霞む三方原を一望の下に収める事が出来ます。

 

眼下に眺める天竜の流れを、トコトコと単行のTHが渡って行く。山城を吹き抜ける風に乗って、トラスを鳴らすジョイント音が聞こえて来る。正直単行では列車はどこにあるでしょうかクイズになってしまうのですが、新緑の眺めは美しいからやむを得ない事と割り切ってシャッターを切ります(笑)。天浜線の天竜川橋梁に並走するのは国道152+362号(重複)の鹿島橋で、これもカンチレバートラスと言う珍しい形のトラス橋。ツノのように見えるのが吊橋で言う所の主塔でして、これがトラスを両側から支える構造となっております。ええ、最近橋マニアですw

先ほどの曇天はウソのように、霞みながらもしっかり晴れた皐月の遠州路。
車内の汗ばむ陽気にクーラーを入れながら、次の撮影地に向かうと致しましょう。
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