(格子窓越しの駅@上州福島駅)
まあダラダラと書き進めておりますが、高崎駅から再び電車に乗って降り立ったのは上州福島駅。自分含めて高崎から下仁田はちょうど一時間かかるんだが、上州福島はその真ん中、高崎から30分くらいの駅。木造駅舎の格子窓から覗く駅の改札口は小ぶりにまとまっていて、初老の駅員が一人で番をしております。
甘楽町の中心にある上州福島駅。向かって右側に簡単な車寄せの付いた入口がある駅舎は、上信電鉄の標準的なスタイルの木造駅舎。街の中心駅と言うには閑散としていて、目立つのは駅の隣にあるマンナンライフの富岡工場くらい。駅前通りに人気はなく、一緒に電車を降りた女子高生は迎えのお母さんのクルマでさっさと家へ帰ってしまった。こちらは別に上州福島駅に何らの意図も持たず降りてしまったので、しばし音のなくなってしまった駅前で呆然とタバコを燻らせてみる。
とりあえず上州福島から線路沿いに甘楽の街を歩きながら、上信線の撮り歩き開始。…とは言え、この辺りは住宅と畑が混在する典型的な北関東の郊外と言う風景しか拡がっておらず、悲しいかなこれと言ったポイントはなさげ。畑と家の間の小道を上信線に沿って歩いていると、踏切が鳴って下仁田方から電車がやって来た。ススキの穂に混じってこの時期ブタクサの黄色が目立ちますが、ともあれ元西武801系のシマウマ編成@群馬サファリパークラッピング。♪ホントにホントにホントにホントにライオンだ~と頭の中で串田アキラが歌い始めてしまうのだが、それは富士サファリパークだって。
甘楽町と富岡市を隔てる鏑川の鉄橋で元西武401系@人権ラッピング編成…分かりにくいのでどうしても元の型番で呼んでしまうのだが、上信電鉄では150形を名乗っております。ちなみにさっきのシマウマ編成も150形。見た目は全然違いますけど。ガワは違ってもモーター他のスペックが同じなので、形式として同一と言う事になっているそうです。
トンガリ屋根の無駄にメルヘンチックな東富岡駅で元西武101系@ララクラッシュ編成。上信では500形を名乗ります。電車なのにクラッシュとはぞっとしない。のだが、商品名なのでしょうがない。一時期コンニャクゼリーが喉に詰まって窒息死する事故が社会問題化して、当時の消費者庁大臣だった野田聖子が「コンニャクゼリーは危ないので製造中止ね」と言い放ったのをご記憶の方も多いのでは。アタクシは「そんな事言うたらマンナンライフ死んでしまうやろ!」と思ったのだが、その対策のために喉に詰まりにくいクラッシュタイプを作ったマンナンライフ。えらいね。コンニャクゼリーを目の敵にするんならよっぽど餅を製造中止にした方がいいんじゃねーのかと思ったもんだが、とりあえず「野田聖子乗車禁止」ってドアステッカーでも貼っといて(笑)。
とりとめのないような風景の中を上州富岡駅まで歩き切り、車を回収して下仁田方面へ流してみる。上信線を撮るにはやっぱり千平から下仁田にかけての風景がよろしかろうと言う事でカーナビを頼りにスポットを探るのだが、細かく線路に寄れる小道を見つけ出せるという点でカーナビって便利だなあ(笑)。「地図を見る力が落ちる!」と言う理由でアンチカーナビを公言していたのだが申し訳ございませんって感じだね。山に続く小道から山間のストレートを行くクハ303+デハ251@人形処かんとうラッピング編成。ラッピングがゴチャゴチャし過ぎて何の広告なのか分かりづらいのが難点(笑)。この編成は異形式がくっついた編成なので、ラッピングは共通ですが高崎側と下仁田側でカオが違うようです。
千平の里をさっき鏑川で会った人権ラッピング編成が走って行きます。お堂の桜の木も少し色付き始めて、トーン暗めの曇りベースがしっとりとした日本の山里っぽく…人権ラッピング編成に限らず、上信の電車はだいたい下仁田側が前パンなので、下仁田行きを撮る場合は編成を全部撮りしなくても構図的にしっくり来るのがいいね。前パンは正義。
千平の里で時刻は午後3時を過ぎ、日中は1時間間隔の電車が夕方からは30分間隔になるチャンスタイム。何だか空も明るくなって来たようなので、光線を求めてウロウロしていたら、神農原付近の田園地帯に出た。西上州も稲刈りは終盤戦、家族総出で刈り取りの中をララクラッシュ編成。ララクラッシュには何種類か味があるのだが、このラッピングはメロン味って事なんかね。
「今日は一日どん曇りですよ」と言われて来たのだが、夕方になって西の空から日射しもこぼれて来た。角度のある秋の夕方の光に、稲穂が黄金に染まる。独特な稜線を見せる妙義の山々をバックに構図を決めてみると、雲間からこぼれる光の中を人権ラッピング編成がやって来た。今日はこの車両によく会いますな(笑)。
予報に反して、すっかり晴れた秋の空。宇藝神社と言う神社に続く参道の鳥居をモチーフに構図を考えていると、自転車に乗った地元のおばちゃんから声を掛けられる。「今日は何か珍しい電車でも来るの??」…このセリフ、どこに行っても尋ねられる王道パターンなのだが、アタクシとしてはどっちかってーとローカル私鉄の日常を拝見しに来ている訳で、普段通りがいいんですよ。地元民からしたら何の変哲もない当たり前のような一日が、こちらにとっては新鮮であり興味深い。立ち位置の違いによる日常と非日常のギャップですね。
ひとしきり話を続けてしまったのだが、ダンナもカメラが趣味でヒマな時は上信電鉄を撮って楽しんでいるそうだ。お気に入りは、去年の秋まで500形に施されていた「銀河鉄道スリーナイン」のラッピング編成だったそうなのだが、ラッピングも終わった今は他の被写体を求めるもあまり遠くに撮りに行けない事をグチっているらしい。「自営で仕事をしてるからね~」って理由らしいのだが、どこの亭主も変わんないのね(笑)。
「じゃ、いい写真撮ってね、ごゆっくり」
参道の踏切をおばちゃんが通り抜けると、踏切の警報機が鳴り始めました。
続く。