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青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

おおやしろ、エネルギー満ちる駅。

2023年10月05日 17時00分00秒 | 一畑電車

(いづものおおやしろ@出雲大社)

出雲に来てから、そこら中に神社がありますので、何かあるたびに賽銭を投げ込んでは柏手を打って参りました。このままだと賽銭貧乏になりそうな雰囲気もありますが、一応こちらの方まで来て大本営(?)に参拝しないわけにもいかないでしょうということで出雲大社まで来てみました。一回来たことはあるんですよね、出雲大社。それこそ前回益田競馬に行ったときに立ち寄ったんだっけかな?ちょっと覚えてない。確か玉造温泉のどっかの宿に泊まった記憶があるんだよ。その次の日かな。出雲大社と伊勢神宮って同じくらいの格式を持つ神社ですけれど、いわゆる街場の神社的な社寺建築って感じではないですよね。どちらかと言うと、古代王朝とか邪馬台国的な雰囲気。いわゆるドラゴンクエスト的に言うと「ジパング」って感じだ。

大社の街を走る一畑電車。堀川のトロリとした流れを渡って、終点の出雲大社前駅へ。出雲大社の参道に建つ宇迦橋の大鳥居が迎えてくれます。出雲大社へは、一畑電車と国鉄の大社線が向かっていて、戦後も急行だいせんや大社が大阪や名古屋から直通していましたが、国鉄の大社線は赤字83線に認定されて1990年代初頭に廃止されてしまいました。距離だけで言えば一畑電車より出雲大社に近かったし、大社の駅も出雲大社を模した非常に立派なもの。駅舎だけでも・・・と拝みに行ったのだけど、現在改築工事中のようで、全く見ることはできませんでした。

出雲大社への参道に建つ出雲大社前駅。街並みに溶け込んでいて、駅というよりはパン屋とか薬屋とか、そういう見た目がする。1930年の一畑電車の大社線開通時に同時に開業した駅で、純和風建築の国鉄の大社駅に対し、丸い独特のカーブを形どった屋根が特徴の洋風な仕上がりになっています。国鉄大社駅と同様、こちらも国の重要文化財に指定された建築物です。

駅舎の中は高天井の待合室になっていて、真ん中に以前は出札口であったと見受けられる円柱系のの窓口がある。建物の高い部分に嵌め込まれたステンドグラス。アールのついた屋根や円柱にステンドグラスと言えば、それこそ前日に入浴した薬師湯の新館のそれ。この駅舎が昭和初期の建築で、薬師湯の新館は昭和20年代の作品らしいのだけど、両方に共通する何か、と言われれば同じ島根県の建築物、何かしらの理由はあるのかもしれない。それにしても大社前駅のステンドグラス、思わずアタック25が見たくなってくるデザインである。

出雲大社前駅ホームは、1面2線の頭端式。端っこの側線にデハニ52号が保存されている。デハニ50は53号が雲州平田駅に運転体験用の車両として保存されていますが、出雲大社前のものは静態保存。デハニ52、7000系、2100系と、ちょうど三世代の一畑電車の車両たちがカメラのファインダーに収まりました。デハニを中心とした吊り掛け&木造の旧型車世代、そこを京王5000系からなる大手私鉄からの譲渡車で更新、そして一畑電車の新世代を飾る自社発注車の7000系。鮮やかなデハニ52のオレンジは、伝統の一畑カラーであり、太陽を表す情熱の朱色。双葉のマークは、その太陽の光を受けて、すくすくと成長発展していくことを意味するものだそうです。

出雲大社前駅に併設されているお土産店&カフェ越しに。出雲大社という大観光地を抱え、一番のドル箱区間でもあるのが電鉄出雲市~出雲大社前間。いつもの電車たちも、少し華やかに見える、大社前の駅です。

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八雲立つ 祈りの国の 赤鳥居。 

2023年10月03日 17時00分00秒 | 一畑電車

(祈りの国の赤鳥居@粟津稲生神社)

祈りの国・出雲の鉄道風景として代表的なものが、この粟津稲生神社の赤鳥居。一畑電車の大社線に沿って立つ稲生神社の参道に並ぶ赤い鳥居の連なり。鳥居の数、いくつくらいあるんだろう。ざっと数えただけでも25本くらいはあるのではないだろうか。いわゆる稲荷神社系の鳥居、こういう風に数を並べて立てることはそう珍しくはないのだけど、線路に沿ってあるのは珍しいですかね。以前は一部の鉄道ファンにだけ有名なスポットだったと思いますけど、一畑電車のパンフレットにも掲載されているくらいですから、一般の観光客にもメジャーな場所になっています。

赤い鳥居と、社の向こうの山並みを見ながら、出雲大社前行きの単行7000系が走って行きます。以前の写真では、鳥居の周辺はきれいな田んぼになっていた記憶があるんですけど、今は・・・夏草が生い茂る草むらになってしまった。田んぼ、やめちゃったのかな。ここ数年、全国どこを旅していても、きれいに整えられていたであろう圃場が休耕田になってしまっているシーンを多く目にします。農家の後継者不足、労働力不足ということなのだろうか。まだここは蔓草系が跋扈していないのでマシな方なのかもしれないけど。

赤鳥居ばかりがクローズアップされる粟津稲生神社ですが、線路を渡ってきちんと本殿にもお参りをしなければなりませぬ。「粟津稲生」の読み方は、「あわづいのう」でも「あわづいなお」でもなくて、これで「あわづいなり」と読むそうで、相当に珍しい。「稲」が「生(な)る」=「稲生(いなり)」ということなのかな。穀物の神様である倉稲魂神(うかのみたまのかみ)・稚彦霊神(わくむすびのかみ)・有気持神(うけもちのかみ)の三神を祀っていて、やはり稲作と農業にかかる信仰に篤い社、ということが出来るかと思われます。

お社様から参道の赤鳥居を眺める。新しめのお狐様が守る粟津稲生神社。参道の踏切は遮断機も警報器もない四種踏切。神様の前でカンカン鳴らされちゃうのも申し訳ないということなのだろうか。遥堪駅方面のすぐ近くに警報機付きの踏切があり、電車の接近を知ることは難しくはないのだけど、くれぐれも踏切を渡る際には左右の安全をご確認のほどを。

参道の真ん中から、赤い鳥居を大きく取り込んで7000系。2016年から投入されている最新型で、まごうかたなき一畑電車の自社発注車ですが、JR四国の7000系をベースに近畿車両が製造し、JR西日本の後藤車両所(米子)に併設された後藤工業で内装を仕上げているので、まったく私鉄の車両という感じがしません。減少する沿線人口と乗客の流動を鑑み、単行運用を基本とした両運転台の設計で、当然ながらVVVFの半導体制御。当初投入を予定していた東急の1000系が他社との競合もあり2編成の確保に留まったため、計画を変更して自社発注に踏み切った車両が7000系。大手私鉄同士でも車両の新造でなく中古車両の受け入れで設備投資を賄う時代ですし、特に東急系のステンレスの手頃なサイズ感の車両は枯渇気味。これからの地方私鉄の設備更新、こういうミニマムなサイズのクルマがスタンダードな時代が来るのかもしれません。

この日の大社線、朝のうちは7000系と2100系の交互運行でした。土休日は出雲大社前~電鉄出雲市・松江しんじ湖温泉の直通が多いのですが、平日は観光需要が減少するため基本的には川跡~大社前の機織り運用が中心。川跡の大社線ホーム、常用されているのは1線しかないので、交換は大社前の駅で実施することになります。スーパーライナー色の2100系を、シンメトリーの構図で。

この参道に踏切を作ることについては、一畑電車から「どうしても参道に線路がかかっちゃうので勘弁して!」ということで神社にお許しを得て作られているのだそうで。そのお礼かどうかは知りませんが、きちんとお社を囲む柱には「一畑電鉄株式會社」の名前が。それなりの浄財が収められているのではないでしょうか。

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輸送力列車は、地方私鉄の輝き。

2023年10月01日 10時00分00秒 | 一畑電車

(地方発・高規格の無料道路@大田・朝山道路)

泉薬湯で朝湯を使い、荷物をまとめて短かった温泉津の一夜を辞す。本当であれば、温泉津温泉繁栄の礎ともなった石見銀山の観光だったり、それこそ足を延ばして三瓶山や有福温泉なんかにも行ってみたかったのだけど、ひとまずあれこれやろうとすると焦点がボケるので一畑電車の沿線へ戻ることに。行きは国道9号線をのんびりと走って来ましたが、戻りは山陰道の無料区間として開放されている仁摩・温泉津道路と大田・朝山道路を使ってみました。リアス式海岸の入江に続く漁港集落を丹念に回る山陰本線や国道9号線と違い、海岸線から離れた山間部を長大トンネルと高架橋でスイスイと越えて行く地方高規格道路。地方にこんな立派な道が必要なのか・・・という議論はさておき、鉄道側の視点から見ればこれだけのインフラを無料で提供されたらそりゃ鉄道なんか誰も乗らないよね、と恨み節の一つも出そう。この土木技術に投じられた資金の何割かでも鉄道振興に向けられたら・・・と考えてはいけないものでしょうか。鉄道が投資に見合うだけの将来性のないインフラだというなら、そうなのかもしれませんが。

さて、今日は月曜日の平日。地方私鉄を巡るにあたっての鉄則は、「運用数ピークで車庫総ざらえになる平日の朝ラッシュを撮らなきゃ意味ないっすよ!」というのは、このブログをご覧の数少ない皆様においては十分にご認識いただいているところとは存じますが(笑)、そんな一畑電車の平日の朝ラッシュらしい列車を撮りに、美談のストレートへ。一畑電車の線路沿いで、朝方の光線を東側から受け止める撮影地と言えばこの辺りなのかなと。ちょうど順光側に架線柱がないのもポイント高し。まずは小手調べの5000系電鉄出雲市行き、後追いですが。

そして本命は、平日の朝に一本だけ運行される電鉄出雲市発松江しんじ湖温泉行きの「特急スーパーライナー」。電鉄出雲市から大津町・川跡・雲州平田・布崎・一畑口・津ノ森・秋鹿町・松江イングリッシュガーデン前に停車し、松江しんじ湖温泉まで45分。普通電車だと1時間10分くらいかかりますので、「特急」の名を冠するに相応しいスピードがあります。松江口の通勤通学輸送のピークタイムに走る列車なので、5000系の2連×2=4連運行が基本だったのですが・・・綿密に4連サイズの構図を組んで待ち構えたのに、やって来たのは新型電車7000系の2連。あれ?という感じの肩透かし。夏休み期間中は学生が少ないから、編成もスリム化してるということなのかな?いや、7000系の2連もコンパクトでカッコいいですけど、地方私鉄の輸送力列車、4連が撮りたかったなあ・・・後で聞いたら、どうやら前回のダイヤ改正以降スーパーライナーは2両に減車されちゃったんだって。コロナ禍と利用者減と諸々の理由なんだろうけど、地方私鉄の苦悩は続く。

失意のままの場面転換。武志から大津町にかけての田園区間。出雲市内の県道は朝のラッシュの真っただ中で、各々職場に向かう車の列は引きも切らず。一面の青い穂波の向こう、遠く山並みを望むすっきりとしたロケーション。8月のお盆過ぎとはいえ平日の朝、バタデンの沿線でカメラを構えているもの好きなどいない暑い暑い朝だったのだが、今頃は黄金色の絨毯となっているのであろうか。

立久恵の山並みをバックに、電鉄出雲市から折り返してきた5000系。そういえば、一畑電車にも出雲市から南の立久恵峡に向かう立久恵線って路線があったんですよね。昭和39年に出雲豪雨で路盤が流出し敢え無く廃線となってしまったのだけど、 元々は「大社宮島鉄道(出雲大社と安芸の宮島を結ぶ意)」という壮大な陰陽連絡を目論んだという夢のある路線だったそうで。

「あー、あの山の向こうに一畑電車の支線がまだあったんだよなあ」なんて思いながら、カメラのシャッターを捌く。立久恵線、さすがに写真でも残っているのを見る機会はめったになくて。国鉄から払い下げられた客車に無理やりエンジンをくっつけたような、貧相な気動車での運転だったらしいけど。

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100円あれば大富豪。

2023年09月21日 22時00分00秒 | 一畑電車

(昔懐かし、駅前商店@武志駅)

電鉄出雲市と川跡の間、田園地帯の集落の片隅に、ちんまりと佇む武志(たけし)の駅。大社へ向かう線路が分かれるお隣の川跡の駅に比べると、片面単式のホームに小さな待合室があるだけの何の変哲もない駅だが、駅横の踏切の袂に、いい感じの昭和の雰囲気が満ち満ちた駅前個人商店があった。子供のころ、学校や路地にあった駄菓子屋混じりのこういう感じの店は、私たち子供のカラーバットでやる野球の合間のブレイクタイムであったり、学校帰りに雨宿りをするカラーの日よけであったり、入荷してきた少年ジャンプを誰が最初に読むかを競ったり、コーラの空き瓶を三つ拾っては30円の二つ棒付きのソーダアイスと交換してもらったり・・・そういう地域の子供たちの仲を取り持つ生活のオアシスでもあった。

勇気を出してお店に入り、中の雰囲気を写真に撮らせてもらおうかな・・・?などと逡巡してしまったが、そんな不躾なことを言うのも野暮だなという思いもあり。店内の雰囲気は、思った通りの小学校時代の駄菓子屋のそれで、ビールケースを逆さに重ねた陳列棚に、色とりどりの駄菓子が雑然と置かれていた。その他にも生活雑貨やパンやコーヒー、お酒にジュースにカワキモノ。そりゃあ品ぞろえはセブンやローソンなどのコンビニなんかにゃ負けるのであるが、それでもこの時代にここまで残っているのが奇跡のような駅前商店。地域のインフラを静かに支えているのでありました。

物静かな老店主から駄菓子を買い、外の自販機で缶コーヒーを購入して電車が来るのを待つ。蒲焼きさん太郎とか20年ぶりに食ったぜ。電鉄出雲市行きの急行電車が、武志の駅を通過。店の軒先の鉢植えが、風で揺らめきました。

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いつも、いづもの、神ある暮らし。

2023年09月19日 17時00分00秒 | 一畑電車

(神の国の電車@布崎~雲州平田間)

出雲大社や一畑薬師と、著名な神社仏閣に事欠かない一畑電車の沿線。そもそもが出雲の国、大社信仰に篤いのは言うまでもありません。一般的には、出雲大社は大国主大神様、いわゆる「大黒様」をお祀りする「縁結びの神様」なんて言われてますよね。恋愛成就だとか良縁の話だとか、そっち方面にのお願いごとにご利益があるなんて言われることが多いのですが、出雲大社的には「縁結びっつったって男女の仲だけじゃないのよ。世の中の森羅万象すべてのものは何らかのご縁によって繋がって結ばれているんですよ」というような趣旨のありがたいお話が記されていた。

日々の願い事だったり占いだったり、どうしても我々のような俗人は自分の普段の私的な欲に絡むことばかりに祈りをささげてしまいがち。まあそれも小市民っぽくていいのだけれども、出雲の国を旅すると、そういう部分とは違う生きて行くための緩やかな祈り・・・それこそ、日々の安寧だったり、五穀豊穣だったり、大漁祈願だったり・・・自分たちの生活が一つでも豊かになるために、人の力ではコントロール出来ないことを託すためのよすがとして、信仰が根付いている。神様がそこにいることが当たり前のような暮らし。それが、いつものいづもの姿と思えてならない。

名もなき鳥居の前を、電車は出雲大社へ向かいます。

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