映画と本の『たんぽぽ館』

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チャーチル ノルマンディーの決断

2018年09月23日 | 映画(た行)

また一つの決断

* * * * * * * * * *

先に見た「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」は、
チャーチル首相就任間もない頃、ダンケルクの救出作戦をからめて描いた物語。
本作はそれから4年後、ノルマンディー上陸作戦決行までの96時間を描きます。
実はこのノルマンディー上陸作戦にチャーチルは断固反対の意を表していました。
それというのも、一次大戦中のガリポリの戦いに指揮官として従軍し、
50万人もの死傷者を出したことが、チャーチルの深い心の傷となっていたのです。
ノルマンディー上陸作戦が実行されれば、またとんでもない数の犠牲者が出るだろう・・・、
そのことに彼は耐えられなかった。
そこで、連合国軍最高司令アイゼンハワーとも対立してしまいます。

・・・というか、周りの誰もがこの作戦についてはやむなし、
むしろこの好機を逃してはなるものかと気持ちがはやっています。
そのため周囲の人々は、異を唱えるチャーチルの言動を困りものと捉えているのです・・・。
いかに頑固で強硬姿勢のチャーチルも、この潮流には逆らい難く、
作戦は止めようもないのですが・・・。

私達はその後の歴史を知っているからこの作戦の実行もやむなしだった・・・、と思えるわけですが、
先の見通しのないとき、こういう決断は実に恐ろしいものですね。
でも戦争を進める人ははじめからある程度の犠牲は覚悟の上。
日本人は敗戦後、誰もそのような恐ろしい決断をしたことがないというのは、
幸いなことだとは思います・・・。



先の「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」に、
新任の秘書が、チャーチルにいびられて困ってしまうシーンがありましたが、
ここでも同様の人物が登場します。
チャーチルのパワハラに負けて、秘書が何人も入れ替わったという事実がありそうですね・・・。
ほとんどいじめのような仕打ちにひたすら耐えるここでの秘書、ミス・ギャレットだったのですが、
終盤、彼女の言葉がチャーチルの気持ちを変えるのです。
現実はどうあれ、これから戦場に赴く者やその家族は、
不安を煽る言葉など聞きたくない・・・、ということ。



それでうまくいく場合もありますが、
日本のようにそのためにとどまること知らず自滅の道をたどることだってありますよね・・・。
すべて納得はできない、考えるべきことが山盛りに思える作品でした。


チャーチル氏は、あの体型で、タバコ、アルコール漬けの生活。
さぞかし長生きできないだろうと思えるのに、調べてみたら90歳まで生きていますね。
作中でもいかにも体調はよくなさそうに見えましたが・・・。
メタボ検診の意義が疑われます・・・。


「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」では、
ゲイリー・オールドマンの特殊メイクが話題になりましたが、
こちらはブライアン・コックスが地のママで出演しています。
いや、実際これで十分ですよね。


<シアターキノにて>
「チャーチル ノルマンディーの決断」
2017年/イギリス/105分
監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:ブライアン・コックス、ミランダ・リチャードソン、ジョン・スラッチリー、エラ・パーネル、ジェームズ・ピュアフォイ

歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★☆☆



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