映画と本の『たんぽぽ館』

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ブラザーフッド

2012年07月19日 | 映画(は行)
反目し合いながらもなお強まる兄弟の絆



                  * * * * * * * * * 

最近チャン・ドンゴン出演作をいくつか見た私は、
もっと色々見てみたくなってしまいました。
まずはやはり、このブラザーフッドですよね。
1950年、朝鮮戦争時。
日本は太平洋戦争に敗れ、それでもどん底から立ち上がって、
好景気へ向かっていく時期ですが、
朝鮮は自国を真っ二つにする戦争のさなかなのでした。



ジンテ(チャン・ドンゴン)は、父なき後、
母を助けよく働き、頭の良い弟ジンソク(ウォンビン)の将来を楽しみにしています。
貧しいけれど信頼しあえる家族。
こんな幸せがいつまでも続けばいいとジンテの妻は言うのですが・・・。
ある時、ジンソクが強制的に徴兵されてしまい、
兄ジンテも弟を守るために入隊します。
ジンテは武勲を立て勲章を貰えば弟を帰してもらえると聞き、
自ら危険な任務を志願し、凄まじい戦闘のまっただ中に踏み込んでいくのです。
そんな姿勢が認められ、ジンテは隊の中でどんどん位をあげて行きます。
ジンテはひたすら弟を思い、守ろうとする。
けれどもその熱い思いはひたすら彼自身の胸の中にあり、言葉で弟に告げることはない。
韓国版「プライベート・ライアン」ともいえる今作ですが、
こういう精神構造はやはり東洋のものですね。
日本人にはとても馴染みのある構図です。



今作でいいのは、もちろんこのジンテのひたすら弟を思う熱き男の生き様なのですが、
一方、弟ジンソクの成長ぶりも、眼を見張るものがあります。
始めは本当にまだ無邪気な子供のようでした。
そしていかにも兄に頼りきっている。
こんな子が戦争に行って大丈夫?と思わせる。
ところが、ジンソクは次第に兄に反感を募らせていくのです。
兄が自分のために武勲を立てようとしているというのは薄々気づきながらも、
あまりにも軍に忠実で人の命を奪うことに鈍感になっている兄に疑問を覚えてしまう。
このあたりがいかにもインテリっぽいジンソクをよく表していると思うのです。
兄の心、弟知らずというところも皮肉。
しかし、この反目していく兄弟の描写が、いかにも深い。
こういう場面を体験し乗り越えていくことで、なお絆が深まっていくし、
ジンソクはぐーんと成長するんですね。



いやそれにしても、凄まじい戦闘シーンでした。
それこそ「プライベート・ライアン」も真っ青。
飛び交う銃弾に兵士は血まみれ泥まみれ、。
思想によって分けられてしまった南北。
今作はその虚しさももちろん伝えています。
どちらにも正義はない。
いわば同じ穴のムジナ。
その思想を分ける恐怖は、戦場だけでなく、
故郷で待つ家族にも降りかかります。
最後にはもうどうでも良くなってしまった破れかぶれのジンテ。
今もまだ分断されたままの半島の歴史を見るにも、とてもいい作品です。
ただし気の弱い方は要注意。

ブラザーフッド スタンダード・エディション [DVD]
カン・ジェギュ,カン・ジェギュ
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「ブラザーフッド」
2004年/韓国/148分
監督・脚本:カン・ジェギュ
出演:チャン・ドンゴン、ウォンビン、イ・ウンジュ、コン・ヒョンジン、チェ・ミンシク


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