恋多き優柔不断の男の物語
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太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが戯曲化し
上演されたものの映画化です。
戦後の復興期、文芸雑誌編集長の田島(大泉洋)には、何人もの愛人がいました。
妻子は戦時中疎開した青森で未だに暮らしているのですが、
田島はそろそろ東京に呼び戻さなければ、と思っています。
しかしそのためには、あまたの愛人たちと縁を切らなければならない。
とはいえ、それぞれの女性たちを愛しく大切にも思っている田島は、
その優しさと優柔不断さが故に、彼女たちに別れを切り出すことができない。
そこで懇意にしている小説家(松重豊)の意見を聞き、
とびきりの美人にニセの妻になってもらい、二人で愛人たちに会いに行く、
という作戦を実行することに。
そのニセの妻というのが、普段粗末な服装で担ぎ屋をしているがさつな女・キヌ子(小池栄子)。
彼女が化粧をしてオシャレな洋服に着替えれば、あっと驚く美女なのでした。
そして何人かの愛人の元を訪ねますが・・・。
例によって、ほとんど予習なしで見た作品。
だから見ているときは太宰治原作とは知りませんでした。
でも、後にそのことを知って、すごく納得がいったのです。
この、田島の人物造形が。
不倫の是非はこの際置いておくことにして、
田島は女性たちの個性がそれぞれに好きなんですね。
だからどれも捨てがたい。
けれどそれに罪悪感がないかと言えばそんなこともなく、
そして又、こちらの都合で一方的に関係を切ることにも又罪悪感を覚えてしまう。
どうすれば良いのやらわからない・・・と、
こんなダメ男は、幾分太宰本人が投影されているのでしょう。
そう思うと、やたらに田島のことが愛おしく思えてきてしまいます。
それで、散々愛人たちと過ごしたはずなのに、
最後にキヌ子とは「純愛」になってしまう、というのがすごくうまくできています。
又、ラストのどんでん返しが楽しい!!
小池栄子さんの、強烈なダミ声がものすごいインパクト。
そしてオシャレな夫人になりすましてもやっぱりダミ声を隠せていないのも、いいですよねー。
素晴らしい配役です。
なかなか掘り出し物の良作だと思います!
<シネマフロンティアにて>
「グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇」
2019年/日本/106分
監督:成島出
原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
脚本:奥寺佐渡子
出演:大泉洋、小池栄子、水上あさみ、橋本愛、木村多江、松重豊、濱田岳
コミカル度★★★★☆
逆転度★★★★☆
満足度★★★★☆
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