孤高の荒馬が翔る
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北海道浦河で誕生した馬、エゴンウレア。
装蹄師、元騎手、獣医、その他馬を愛する多くの地元の人々の期待を背負い、
今、エゴンウレアは出走する。
孤高の荒馬、エゴンウレアに栄光は輝くか・・・?
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馳星周さんによる、北海道浦河の牧場で生まれた馬の物語です。
浦河は馳星周さんの出身地であり、毎年愛犬と共に訪れて夏を過ごす地でもあります。
だからこの物語が書かれたのは、必然。
本作主人公は、馬の装蹄師にして、浦河の牧場主でもある平野敬。
競馬を引退した馬のための養老牧場です。
ただし現在いるのはまだ一頭だけ。
この地で生まれ育った彼は、本当は騎手になりたかったのだけれど、
ある時から急に身長が伸びてしまって断念。
これまで、競馬を引退した馬は、よほど好成績を収めた馬以外は殺処分されてしまっていたのです。
それが昨今、馬が余生をのんびり過ごすための養老牧場の必要性の声が高まってきています。
敬も、将来はこの牧場をもっと大きくしたいと思っているのです。
そんな彼が注目しているのはエゴンウレアという馬。
日に透けるとたてがみが黄金色に輝く、美しい馬です。
しかし、すばらしい素質に恵まれていると思われるのに、なぜか勝てない。
ひどく気性が荒くて、プライドが高く、人間の言うことなんか聞くもんか・・・という感じ。
そんなエゴンウレアと心を合わせて、導いていくのが、
敬の幼馴染みにして親友の亮介であります。
ところが、この亮介というのが問題で・・・。
と、これ以上語るとすべてストーリー説明になってしまいますので、ここまで。
競馬のことはほとんど分からない私ですが、それでもすごく興味を持って読むことができたのは、
何も地元びいきだからというだけではないのです。
馳星周さんらしく、物語はハードボイルド味もまといつつ、どんどん目が離せなくなってきます。
そして、なんとも劇的なタイミングで起こる、大地震。
あの北海道全域がブラックアウトになってしまった地震です。
オマケにラブロマンスもアリ。
そして最後の最後にエゴンウレアの運命のレース!!
さあ、どうなる!!
なんとも心を沸き立たせる物語でした。
ちなみに、エゴンウレアはバスク語。
英語で言えば、ステイゴールド。
黄金のようにいつまでも輝くように・・・という期待をこめた名前ですが、
この馬が中国でのレースに出場したときに付いた中国名が「黄金旅程」なんですね。
う~ん、ステキな名前。
お馬さんを見に行きたくなってしまった・・・。
「黄金旅程」馳星周 集英社
満足度★★★★★
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