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「屍人荘の殺人」今村昌弘

2019年10月26日 | 本(ミステリ)

前代未聞のクローズド・サークル

屍人荘の殺人 (創元推理文庫)
今村 昌弘
東京創元社

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21世紀最高の大型新人による前代未聞のクローズド・サークル

 

神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、
同じ大学に通うもう一人の名探偵、剣崎比留子と共に
曰くつきの映研の夏合宿に参加するため、ペンション紫湛荘を訪れる。
初日の夜、彼らは想像だになかった事態に見舞われ荘内に籠城を余儀なくされるが、
それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。
たった一時間半で世界は一変した。
数々のミステリランキングで1位に輝いた第27回鮎川哲也賞受賞作!

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今村昌弘さんのデビュー作にして5冠達成、映画化もされ、この12月に公開という作品。

文庫化を待って、やっと読むことができました。
えーと、5冠というのは、

第27回鮎川哲也賞、
「このミステリーがすごい!2018」第1位、
「2018 週刊文春ミステリーベスト10」第1位、
「2018 本格ミステリ・ベスト10」第1位、
第18回本格ミステリ大賞、
ついでに第15回本屋大賞第3位。
まさにミステリ界の話題をかっさらった大型新人であります。
今さら、やっと読んだんですか・・・と、言われそうですね(^_^;)

 

舞台設定は、ミステリにはつきものともいえるクローズド・サークル。
つまり、雪の山荘や嵐の孤島。
誰も出ることも入ることもできない隔絶された状況の中で起こる連続殺人事件。
だからその中の誰かが犯人で、探偵役の人物がその犯人を特定してゆくという物語。

しかし本作が特異なのはこの、隔絶された状況なのです。
・・・が、しかし。
そこのところのネタばらしはタブーとなっているみたいなので、
ここでも明かすことはやめておきましょう。
知りたいけれど本を読むのはメンドクサイ、という方は
ぜひ12月公開の映画をご覧ください。
13日の金曜日から上映だそうですよ・・・。
なるほど。

さて、その状況の特異性はともかくとして、
ミステリとしても素晴らしくよくできているのです。
一体誰がどうやって・・・というのは読んでいてもさーっぱり見当もつかないのですが、
探偵役が謎解きを始めれば、なるほど~、すごくわかりやすく納得できます。
それと私が気に入ったのは登場人物の名前。
背が高いのが高木。
おとなしく物静かなのが静原。
別荘の管理人が管野。
・・・という具合です。
登場人物が10人くらいになると、誰が誰やらわからなくなるというのが常。
そこのところ本作は非常に親切で、作中にその連想の仕方までちゃんと記述がある。
実際こういうミステリはもともとリアリティを追求するわけではないので、
こういう登場人物の命名の仕方は大歓迎です。
訳のわからないやたらと読みにくい漢字を当ててみたりするどこかの作家に見習ってほしいです。

そして、本来探偵役のはずの明智恭介が意外にも早々と
表舞台から姿を消してしまうというのにもビックリ!

5冠というのにも大いに納得の本作でした。

 

「屍人荘の殺人」今村昌弘 創元推理文庫

満足度★★★★★



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