映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「あわのまにまに」吉川トリコ

2024年02月16日 | 本(その他)

時を遡り、ルーツへ迫る

 

 

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どれだけの秘密が、この家族には眠っているんだろう――
「好きな人とずっといっしょにいるために」、あのとき、あの人は何をした?
2029年から1979年まで10年刻みでさかのぼりながら明かされる、
ある家族たちをとりまく真実。
生き方、愛、家族をめぐる、「ふつう」が揺らぐ逆クロニクル・サスペンス。

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とある家族の歴史が刻まれる本作。
2029年から1979年まで十年刻みで時を遡りつつ描く、
6つの短編からなっています。


冒頭2029年(!)では、おばあちゃんの死に対面した孫たちの視点から語られています。
祖母・紺の家は孫たちにはあまりなじみがなかったけれど、
天に向かって螺旋を描くようにねじくれたピンクの変な家!! 
祖母の死後、娘二人とその夫、孫たちが集まって片付けを始めます。

10年刻みで時を遡りつつ、娘たち、その夫の物語が語られ、
そして祖母・紺の話へと繋がっていく。

ところが、そんな何気なさの根底に、
大きな秘密が隠されていたことに驚かされることになります。
家族としてはゆがんでいる。
けれども、日々の生活は続いていき、家族は平和に維持されていきます。
それは欺瞞ではなくて、そんなあり方もアリなのかなという風に思えてきます。

夫婦のあり方、同性愛、友情、行き場のない恋心・・・

あらゆる側面を持ち合わせつつ、ここまでたどり着いた家族の歴史。
でも最終局面の2029年は、
ちょっとは昔よりも住みやすい時代なのかもしれませんね。

本作、順当に1979年から描けば凡庸な作品になってしまうところを、
逆にしたところが全くもってナイス!!です。

まるで最後に答え合わせをしているような感じでもあります。

 

<図書館蔵書にて>

「あわのまにまに」吉川トリコ 角川書店

満足度★★★★★

 



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